538 何でも屋 2-15 ネグリジェ
一週間後。
【流】で修行を終えて真弓が学校の寮に帰っていった。
短い間の修行だったが、見ただけで分かる。
又、差がついた。
今日は、帰るだけと誘われて温泉宿でお風呂と食事を済ます事にした。
術師としても成長した様で、迎えに行った際に渡した月夜石のネックレスは、身につけると黒百合の色に染まりその中央に白い輝く蝶の模様が浮き上がった。
「コレが、私の月夜石」
「なんだ、私と同じ色になったか?」
亜美が、真弓の裸の胸に下がるネックレスを見ていた。
亜美達は、青魔石のネックレスを下げていて、その裏に月夜石を配している。
源蔵さんが作り替えた物で、身体の中に陰陽師としての核みたいなものが何処かに出来るらしい。
それを月夜石が、感知してその特性に合わせて色が変わり中に浮かび上がる紋様も変わる。
朱雀達が管理している巨大な勾玉を調べた結果。
紋様の働きで術が強化される。
香織の月夜石は、未だ透明なまま。
青魔石は、未だ付けられていない。
初夜の時に、彼が加工してくれる。
義母になる尚美が、教えてくれた。
「案じることは無い。
未だ方向性が決まっていない。
静香を見たら分かる。
あの濃紺は雅樹の色。
彼に尽くし抜くと決めている。
中に光があるだけで、未だ紋様にはなっていない。
香織さんも洋樹に逢えば、その月夜石は直ぐに染まるだろう」
その言葉を信じて自宅に帰る。
「「お帰り〜」」
日程の変更を受けて、スインとマインはやって来た。
体型や教育到達レベルそして塾での、日本での生活能力を加味して四月から京優学園の高等部に進ませる。
そのためのトレーニングと、今までの功績のご褒美で、二週間ほど西郷家で過ごす。
マインはやはり医療行為に興味がある為、診察室で患者さんの許可が出たら見学をしている。
中に入ってマインを見た少年が、悩み抜くのは面白かった。
必死に腹を引っ込めようとする。
スインは、スキューバダイビングに直ぐに参加した。
泳ぎはあまり得意では無いが、潜って進むには息継ぎが必要ない分上手く移動できる。
七緒が子供を抱いて様子を観にくる。
流石に一才では無理なのだが早く海に入りたそうで大変であった。
マインは小魚の骨抜きを上手にできる様になると箸使いを習い、
スインのピーマン嫌いは聖地でもう克服して来た。
「東郷さんのお陰です。
カレーに、ピーマンが合うんですよ。
それからかな、食べれる様になったし、鹿児島もピーマン生産量多いですからね」
やはりメニュー次第だということか?
でも、この二人が苦手なのは砂風呂。
毛穴の状態や皮膚、体毛は人と変わらないが、やはり尻尾が汗まみれになるのはダメだそうだ。
魔道具を外して眠れる環境での二人の寝相が面白い。
ロッジを借りて眠る二人は、尻尾の動きがリンクしている。
離れていても横にいても、食事の時もそうであると観た時は思わず吹き出した。
でもどうして日程が変わったかを訝しんでいたら、岩屋神社から呼び出しを受けた、
『急では有るが、明後日から二泊三日でアーバインに行って貰う。
颯 真弓も一緒だ』
洋樹さんに逢える。
彼から送られたペンダントを握りしめて、颯 真弓に電話をした。
「あぁ、私のところにも室の方から連絡を貰った。
何か、大変らしい」
「そう、内容は聞いていないのね」
不安が、巻き上がる。
「ミサさんにも逢うのよね。
でも、あの事は私達から言ってはいけないし、洋樹さんにも私達が知っている事を告げてはいけないそうだ。
あくまで、彼女が彼を求めるようにする。
「気をつけないとね」
「あぁ、正直会いたく無い」
「私も、でも、会わずに洋樹さんにだけあって帰ったら彼女が訝しむ。
まずは友達になろう作戦か?」
「お土産を、持っていく?」
「私たちより三つ上だしな。19歳になるんだっけ?」
「えぇ、ワインが好きだそうよ」
「良く知っているな」
「彼から手紙に書いてあるわ。彼も意識し出している」
「良かったら、読ませてくれないか?」
香織は手紙を思い返した。好きだ、愛している、寂しい、は描かれているけど見せたら恥ずかしい内容は無い。
いいわよ。先入りするんでしょ」
「そう!聞いてくれ!自家用飛行機に乗せてくれるんだ。
しかも、搭乗する空港が厚木基地!
横田は友好祭で入ったけど、厚木入った事なくってね〜楽しみなんだ」
「パイロットは誰かな?」
「女性だと聞いている。
良いなぁ 憧れる。
帆船も良いけど、やっぱりジェット航空機は憧れだよ、
しかも、コース設定がまた良かった!
どうやったら、あのコース許可が出るんだい!
まず、離陸してだなぁ〜」
「ちょっと!ストップ!会ってから教えて。
お土産。考えてきてね」
‘あーっ!済まんすまん。
ところで、香織」
「何?」
「ネグリジェは、何色だ?」
「ば、バカ!」
「万が一に備えて勝負下着も! 私は今から買いに行く!
この時の為の貯金だ!
銀座の高級店で、香水も買おうかな?」
「あ〜彼、香水嫌いよ。素材の邪魔になるって!」
「あ〜そうかありがとう。貴重な情報だ」
「香も、ダメかの?」
「よく考えたら、どっちが私たちの相手なの? 私、おじさん嫌よ!」
「人の睦ごとに、目をやってもつまらんわ」
「前も言った通り、あなた達がエッチな事をしていても、私達は別の感覚で繋がっています。
だからいっぱい頑張ってくれれば、その分だけ私達も長い間気持ち良いんです」
「香織 だってさ。大丈夫か?」
「だから、三人でやっても問題ないわよ、むしろそれが嬉しいわ」
「私も、帰蝶様と一緒に触れ合っていられれば幸せですから三人でも良いです」
「香織!悪い切るぞ、頭痛くなってきた!」
「そうね、私も、お風呂に入ろう」
「ネグリジェ! やはり今日行かないとな」
「いってらっしゃい、私は手持ちのパジャマにするわ。おやすみ」
「あぁ、明日夕方な」
「待っているわ」
三人でする?
でも、ミサさんも混ざるわよね。
思うだけで赤面してしまった。
そうか、サランさん達が一緒に眠る時ってそんなこともあるんだ。
東京でも、銀座に出た真弓が同じことを考えて赤くなりながらネグリジェを探す。
無い、無い、無い。
あったが、なんだこの悪趣味。
結局、白の大人しめなネグリジェでキレてしまい。
真弓が、ゲーセンで注目を集めて、帰って行った。
お土産忘れた。
ワインは未成年だと売ってくれないし、仕方ないジュピターで飯食って帰ろう。
結果、これが正解。
ジュピターのママが、高身長者向けの下着屋を教えてくれて、ワインまで明日渡しで準備してくれる。
車での迎えだから問題ない。
「しかし、真弓ちゃんが、洋樹の運命の人だったとはね」
「私は、二番目よ」
「あぁ、木場先生から聞いている。
西郷さんの娘か!木場先生にとっては孫娘みたいな存在だな」
「羨ましいよ。私には、そんな存在がいないから」
「でも、洋樹と一緒になったら、みんな繋がってくる。
俺だって、旦那の師匠だぜ」
「そうか〜」
「真弓さん。すみませんけど明日、これ持っていってくれませんか?」
デッカい熊の、ぬいぐるみ。
「私は未だ【収納】が使えないけど香織が持っていってくれる。
良いお兄だな〜」
「嫌だな〜」
「俺、妻帯者ですよ。娘です。娘にお土産ですよ。
誕生日の、プレゼントです。
本当は帰るつもりでしたけどなんだか、ルベルが動くらしくって運用制限かかりました。
部屋に置いていたら汚れそうな気がして」
「あぁわかった」
([ルベル]が動く。確か、衛星軌道上の宇宙戦艦だよな。それが動く?まさか、それぐらい危険が迫っているのか?
だから、もしかしたら、最後になると・・・・・・)
『いやじゃ、殿に会って直ぐに引き離されるのはいやじゃ!
私は、殿のそばに残る!』
『帰蝶・・・・・』




