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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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496 それから 3-11 鬼三匹?

『そうじゃな! 卓也と剣吾アーバインの者と剣をあわせて洋樹の実力を知っておきたい』

『だそうよ。卓也!』


「あぁ、良いだろう!

丁度、私も『御堂の(えにし)』か何かは知らんが、娘を連れて行く男は一度叩き潰しておきたいと思っていたのだ」

「久しいな!卓也! 娘の後をつけるとは! 聴きしに勝る親バカを極めておるな? それに息子もそうか?

それで、誰と立ち会う? 洋樹で立ち会うのか?」

「私は、どちらでも良いですよ!」

「ワシが、手を貸しては相手にならん」

「ですが、信長様は『剣術』は余り、お得意では無かったのでは無いですか?」

「剣術はな! だが、人斬りは得意じゃぞ?」

「一対一は、苦手でも相手が複数の方が戦いやすいですか?」

「まぁ、そうじゃな!」


「それでは、道場に参りましょう。

真吾も、そこで待っているようです」

「ほう!三匹の鬼が相手か!」


『洋樹よ。妻となる女の親兄弟に、認めさせるには最高の舞台じゃの!』

『はぁ〜 伊東先生から【示現】の使い手は厄介だと聞いて居るのに、それに、この三人って伊東さんの教えも受けているんでしょ?』

『大丈夫じゃろう。アイツらは、他流試合を避けておる。

ならば、付け入る隙は充分にあるじゃろう?』

『・・・・・・良いんですか? 使って?』

『良い!ワシも久しぶりに、お主の成長を感じてみたい!』


「それでは、誰からじゃ?」

「私が、相手です」

「剣吾さんですか!」

「どうする? 竹刀でも良いぞ」

「竹刀でも、木刀でも一緒でしょ?

竹刀の方が手加減無しで来られるから、胴を抜かれたら内臓に来ちゃいますよ」

「知っていたか!」


こうして剣吾と立ち会う洋樹。

香織も、話を聞いて駆けつける。

「兄さん!」

「あぁ、殺しはしない。腕の一本折って、アーバインには荷物運びで帰って来てもらう。

その方が、お前は嬉しいだろう?」

そんな訳がない。

ここに、どれだけの治癒師がいると思っているのだ!

「おやおや、審判をしてやろうと思ったら誠め!

一番良い席を取りおって!」

「ひとみ先生。ここは譲れません。私も彼には思うところがあります」

「洋樹の事。聞いたな?」

頷く誠。

「では良いかな? 始め!」

その声に、弾かれるように洋樹が前に出る。

剣吾が、受ける!受ける!。そして、かわし、流す。

「やはり!伊東先生の『凌ぎの剣』ですね!」

だが、剣吾の腰が一段低く構えられた。

気付いて距離を取ろうとした洋樹の脚へ【鎌鼬】が襲い掛かる。

手に持った木刀で、その前面を薙ぐように切る。

雅樹が、やって見せた返し技だ。

「兄さんが、【鎌鼬】を使うだなんて!」

香織も、見た事もなかった。

「初見で、これをかわすか!」

「ひゃー! 思わずやって見たら出来ましたね。

マグレでも、命拾いですよ!

腕を折るって言ったんじゃなかったですか?

大地君と雅樹の試合を、見ていなかったら喰らっていましたね」

「馬鹿じゃないようだな!それじゃ、今度は受けてもらおうか!」

剣吾が、一気に前に出て来る。

これを、今度は洋樹が木刀を合わせて捌く。

だが、その内に

「くっ!」

攻めているはずの、剣吾が顔を顰める。


「どうして?」

香織は、攻めているはずの剣吾が、押されているように見えた。

「打ち込みに合わせて、剣吾の剣の芯を外している。

自分は芯で受けているから痺れ無いが、剣吾の方はかなりのダメージを蓄積して行く。

【後の先】

成程、馬鹿では無い。剣捌きに優れているから出来る技じゃな」

朝香ひとみが、横に立った香織に説明する。

確かに、音が鈍い。

兄との立ち合いでは、互いに芯を外さないようにしている。

それを逆手に取っている。

「嫌らしい真似をするな!」

「木刀の欠点を、ついているだけですよ」

「それを知って、敢えて木刀での立ち会いを受けたか!」

洋樹が、大きく払い退けて剣先を喉元に突きつけた。

「それまで!」

誠が、声を発して試合を止めた。

「ありがとうございました。

でも、まだ【隠し球】。持っていますよね?」

「あぁ、そいつは親父に任せた。

君とは純粋に、【剣】でやり合って見たかったからな!」

「鎌鼬は、剣道では使いませんよ!」

「まぁ、怒るな! まぁ、良いだろう。

今まで、見て来た男の中では一番マシだ。

その時には、味方になってやる」

「ありがとうございます!」


「さて、次は、真吾かな?」

「私は、信長様とやって見たいんですが?」

「・・・・・今回は、やめておきたいそうです。

まだ、僕の体に馴染んでいないそうですが・・・・・、アララ、・・・・・ふふ、良い目つきをしておる。

聴けば随分と、女を泣かせて来たようだ。

ワシの大事な友を泣かさぬ為にも、その身に覚えておいてもらおうか?」

「良いんですか? まだ、彼の身体には慣れていないのでは?」

「あぁ、こやつの身体の動きは子供の頃から知っておる。

それに、伊達に【御堂】に長い事いた訳じゃ無い。

お主にも御堂に来る様にと誘っておったのに、顔を出さぬからこうして、この場で剣を交わす事になった。

お互い初見じゃが、何、剣吾と師匠が同じなら剣筋も窺い知れるわ!

洋樹! しばし身体を借りるぞ!」

雰囲気が変わる。

どちらかと言うと、洋樹の軽い表情から切長の眼になり、構えが少しばかり剣先を下げた正眼の構えになった。

「どうした? 来ないのか?」

雰囲気が変わったのは、顔の表情だけでは無い。

剣先から伝わる気迫が鋭くなって来ている。

真吾が動く。

二、三度、木刀を弾きあって、一旦飛び下がると同時に真吾が消えた。

【転移】を使って、洋樹の背後に出る。

だが、木刀が先回りして真吾の目の前に突き出される。

直ぐに【転移】して左手に出る。

真吾は、信長の剣の腕前が伝聞とは違う事に気づいた。

強い。

「消えたから、後ろに顔面の高さに突き出してみたら、やはりそう来たか?」

「出任せを言うな!

こっちが、移動する位置を知ってて剣を突き出したんだろう?

しかも、その突きの速さ。伊東さんの突きより速い!」

「御堂では、暇じゃったからな。龍馬に相手して貰えて良かったよ」

「北辰一刀流!」

「いや、北辰でも無いぞ!アヤツも、沖田の突きを見て随分と鍛錬したらしいからな。

ワシに『突き』ばっかりやらせおった。

だから、洋樹の剣にはこうして北辰一刀流の技も、龍馬オリジナルの技も活かされている」

「『他流試合をしていないから、そこを突く』とは、そう言う意味か!

・・・・・・これ以上、やっても勝てる気がしない。俺は三人の中で最弱だからな」

「又、相手になってやる。いつでも言ってこい。

お前は、阿国が認めた男だ。

泣かせるなよ!」

「嫌な奴だな!」


「さて、大トリは卓也か? 久しいな」

「まさか、よりによって、友人の息子と私の娘に、お二方が転生されるとは・・・・・」

「御堂の意志は、『これが引き離された隣人を繋ぐ、最後の機会だ』と言っているようだ。がだ!

そんな事は、どうでも良い。

ワシは、『この世での、再縁を誓った者達と会って事をなす』それだけじゃ。

さて、やろうか?」


「お待ちください!」

香織が立ち上がり、洋樹の前で膝をつく。

「今ほど、仰られた通りですか?

洋樹さんが、北辰一刀流を使えるとは?」

「そうじゃが?」

「であれば、私と洋樹さんの手合わせを、お願いしたい!」

キッと見上げて来るその視線には、有無をも言わせない意思が見てとれた。

「・・・・・ 良かろう」



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