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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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472 開拓団2-29 フライドチキン

「まだまだ、だな」

医師は、定時に送ってくる三人の婦人体温計のデータを見ていた。

『この星の、原住民の女性の子宮を使って保存中の【人工受精卵】で妊娠させる』

代理母を強要する。同意も無い。

遺伝子的には、問題ない。

最初は、実験用の受精卵で実験だ。

出産まで行けたら、またその子供が使える。

男だったら、労働力になってくれるだろう。


数を稼ぐ為にも、春の遠征で健康な女性。

それも出産経験が、ある女性を捕らえてくれれば良い。

つくづく馬鹿次男の遊びで、何人かの女性を走り回る的にしたのが痛い。

画面に映るデータを見ながら医師は、テーブルに置いた赤や黄色の石ころを弄んでいた。

丸い筒に、埋め込まれて居たのを外した物だ。

筒には何か紋様があったが、子供達に聞いても首を横に振るだけだった。

だが、綺麗な石だ。

娘達に、くれてやるか。

欲しそうな反応をしていた。

時間だ。

「入れてくれ」

三人の少女の中でも、一番交戦的な目をした娘だ。

色々と問診と触診をする。

この間でも、娘の目が石に行く。

「欲しいか?」

頷く娘。

「どれかひとつ、取れば良い。やるよ」

娘は、躊躇なく青い石を選んで頭を下げた。

こんな、嬉しそうな顔をするんだ。

「じゃあ、部屋に戻って他の子に来る様に伝えてくれ」

娘が出て行く。

いつもの不貞腐れた態度でなく嬉しそうで頭まで下げた。

「こんなもんで喜ぶんだね〜」

医師は、赤い石を指で弾いた。


まさか、青魔石がもらえるなんて!

これで、ここの連中を操れる。

娘は足速に、宿舎に戻る。

そして、交代の娘に赤を入手させる。

最後の娘には、もう一個の青を!

そして、少年たちにも赤を渡してもらう。

術を覚えさせる。

私が操る!

トク、キイ、アワ、ジジ 四人の男の子。

女の子は、アイズ、サイオ 

サトリの娘【オルエ】は夜に全ての石を回収し、僅かではあるが、漂う魔素を愛おしく魔石に籠めて、翌朝に返すのを繰り返した。

最初に娘達に炎を出す為の術を記憶の底に刻み込み、男の子にも身体強化を教え込む。

チョーカーの存在が気になるが、自分の物は医師が箱を操作して外す手順を見て覚えた。

若い医師は、首が苦しいフリをしながら胸を突き出してやると、慌ててチョーカーを外してくれる。

少しずつ精神を、考えを支配する。

『・・・・・・オルエ!危険よ!やってはいけない! 助け出す!待っていて!』

あー五月蝿い!

誰も来ないじゃ無い!

私が、あんな恥ずかしい思いをしているのに!

オルエは、自分の考えを推し進めるために、今夜も魔素を魔石に注ぎ込む。

この時ばかりは、あの五月蝿い女の声は聞こえない。


「不味いわね。

人の心を掌握できる【サトリ】か〜。

今考えると【シャンタ】もこのタイプだったかもね」

オルエに、繋ぎを付けようとしたサランが天を仰いだ。

「でも、サトリじゃなかったけどな〜」

ミーフォーが、指を唇に当てて思い返す。

仕草が可愛い。

「いずれにしろ厄介だわ。まさか、【魔石】を手に入れるなんて!

術も知っているのは、術師が獣人の子供たち相手に指導をしていたのを記憶していたのかしら?」

「軍でも綺麗な石として、調べもせずに医師に押し付けた様ですね。

娘達なら、これが何か知っているんじゃないかと渡した様です」

美沙緒が、今まで見ていた事から推測した。

「それか、オルエが引き寄せたか・・・・・・」

「医師の、深層心理に入り込んだ?」

「そうかもしれない。

いずれにしろ、この医師達が考えている事は危険だわ。

オルエが、相手の考えを見抜くのがまだ上手く無いから何も起こら無いけど、考えを知ったら一挙に暴走しかねない。

愛してもいないのに、誰の子かわからない受精卵を使っての妊娠。

体ができてなくて、幸いだけど時間はないわ。

亮太!この子達のダミーは準備できて?」

「はぁ〜七人分か〜 聖地の創芸師の手を借りるよ」

「良いわよ。【スパイプロジェクト】の名前を出して」

「なんだい?その怪しげな名称は? 【サラン】の名前だけで十分だ。

亮太が【遠見の部屋】に隣接した会議室を出て行った。


イバと卓也は、あれ以来帰って来ない。


先ず彼らの基本的な術士としての能力を見る。

身体強化の掛け方、炎の術、土の術、遮蔽、障壁(盾)、自己治癒基本的な術は、バラツキは有るが教えてもらっていた様だ。

「腕の良い術師だったんだな」

少し上だが、同じ歳の頃だった筈の術師。

イバは、彼に感謝した。

こうした個人の特性に合わせて、ペンダントに加工した魔石を与え補助用の魔石も与えて置いた。

卓也のブートキャンプで、誰もが【収納】を使える様になって来ていた。

ただ大きさが、そこまで育っていない。

剣や銃程度までだ。

だが、それが丁度良い。

必要な物は、今はそいつだ!


スインとマインには、左手の手首に【収納】を意識して付けさせる。

二人とも右利きだから、その位置に治療用の道具を入れる。

マインは、やはり白鳥のペンダントで青魔石と赤魔石を組み込んである。

これは、サトリの基本的な紋章。

この子達には、訓練が必要だ。


卓也は、子供達だけではなくってアレンにも他のメンバーにも剣を教えている。

子供達が持つ剣は【陣】が描かれていて、【障壁】を張れるし襲ってくる電撃をアースさせる。


ファビオとダンテ。

ドームの壁を背にして幅広い【遮蔽】を前面に広げたファビオ。

ダンテが頭上に【障壁】の盾を展開している。

ファビオが弾き飛ばしているのは、見よう見まねで、卓也が打ち出す鎌鼬(かまいたち)と石礫。

ダンテが盾で押し返そうとしているのはイバの【盾】だ。

ダンテのクビが太くなり、ファビオの胸と腕そして脚が膨れ上がる。

「そら、あと二分!無人攻撃機は、ここから1段あげて押して来るぞ!」


「俺たちの、息子の本気ってなんなんだ?」

ジャガーが、目を見張っている。

ダルトンも、息子のダンカンと『手四つ』で組み合っているが、びくともしない。

いつもは、キッチンで野菜の盛り付けを担当するほど大人しいのだが、本気モードになるとこの様だ。

「くっそ! 早くからこうして鍛え合っていたら、俺も元に戻れそうなんだがな〜」

ダルトンの、肩の筋肉が膨れ上がる。

他の子供たちは、アレンの指導で射撃態勢を取って引き金を引く際の呼吸について教えてもらっていた。

子供達にとって、本気が出せる父や卓也。

聖地では、獣人の姿になる事を忌み嫌われた。

だから、こうして本気モードになれるのは嬉しい。

コンナの子供シャーブが、獣人の姿を解いて甘えている。

シャーブは長時間の変化が苦手だ。

彼は記憶師の素質があって、コンナが持ち込んだ医学書を読む方が好きだ。

今は、イバに言われて魔石板にコンナが持ち込んだデータを読み込ませている。

ここに置かれている読み込み用の機器にはチョーカーと同じ様に起爆ユニットが組み込まれている。

チョーカーよりも大きい。

チョーカーでさえ、大穴を開けたんだ。

オーバーキル仕様なのだろう。

コイツは利用することにした。

お父さん! お腹すいたね?

そうだな。さっき昼飯食ったばかりなのにこの匂いがいけない!

今キッチンで準備されているのはチキンの山。

イバとバッフィムの会話の後どうして身食べたくなった。

仕方ない。

お取り寄せだとばかりに、火山島で大量のチキンを受け取った。

それに、タレも。

その時はフライドチキンで送って貰ったが、今夜は照り焼きチキンだ。

何気に料理上手のイバが居るので、送って貰ったチキンに火を入れておいて最後にタレを塗って焦げ目を軽くつける。

骨の部分にアルミホイルを被せていたが仕舞いには、指を舐めて食べてしまう。

今日は、新しく開発された魔女のローストチキン用のタレらしい。

味見をしているジェシカとジェーンが、大騒ぎをしてもう一本いく?

などと言っている声がする。

お〜い!腹減ったぞ〜

コンナは我慢できずに声を出す。

じゃあ、早めにおやつにしようか?

揚げておいた多量のドーナツが食堂に用意される。

おやつだよ!

ジェシカの明るい声を聞いて、頑張りすぎて擦り傷を作った子供の治療をしていたスインが大慌てで治療を終わらせた。

コラ!スイン!手を抜いちゃダメでしょう!

マインが怒る。

今日は少し治癒も使えるスインをマインが指導していた。

でもでも!

ドームからあがって来る足音がする。

治療を受けていた男の子も一緒だ。

まぁ良いか!

やはりお腹が空いたマインも一緒に手を洗って、食堂にかけて行った。


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