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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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470 開拓団2-27 ニワトリ

内容が複雑そうだったので、実際にイバが【転移】して話を聞く事になった。

「随分と、慌ただしい様だな」

「あぁ、全て『ボーズの劣化』が引き金だ。

軍部は、コロニー艦を捨ててでも『ルベル』だけは残したいだろうな。

コロニー艦は、探知能力は高いが、もう攻撃能力はない。

その肝心な探知能力も、ボーズの消耗を遅らせる為に働いていない。

だから、中型艦がいなくなれば【ルベル】の探知機能だけだが、ルベルは設計コンセプトでコロニー艦頼みになっていた。

地表の観察・監視ぐらいは出来るだろうが、それでも解像度は落ちる。

積んでいた『小型探査艦』は使い尽くした。

いや、言い換えよう。

『軍務違反』としてCS中だった軍人ごと破壊した。

噂では、爵位を与えると言う口約束に命懸けで、この惑星の調査に送り込んだのを全員殺した!」

ワグルから聞いた軍内部での話をバッフィムは、吐き捨てるように話した。


「その中に【ブラド】という軍人は居なかったか?」


「聞いた事がある名だな? ダルトン、ジャガー、悪いが来てくれ!」

奥で子供達に、空気銃の扱いを教えていた二人を呼び寄せた。

「【ブラド】という軍人を知っているか?

なんでも、探査艦に乗って、この星を調べに来ていたらしい」

「【暴走ブラド】ですよ。『トリガーハッピー』な奴で、一度攻撃し出したら弾倉だけでは無く、持っている弾を全て相手に撃ち込む。

国境で、ワービルとの諍いを一番起こしたのもコイツだ。

探査艦に乗ってこの星を調査をした後に、惑星の衛星にいた所を潰されましたね。

『多くの現地人を殺して、奴隷にする数を減らした』というのが理由でした。

済まんなイバ。嫌な言い回しをして」

ダルトンが、謝って来た。

「いや、その言い方じゃないと真実が伝わって来ない。

助かるよ。

彼が、私の妻の父【ルース】の家族や門人を殺したんだ」

「あの、馬車の集団に『無人攻撃機』を仕掛けた時か!」

「あぁ、そうだ。

義父の母親が優れた【サトリ】でな。

攻撃機を操作している奴に『名を名乗れ』と命じたそうだ。

そして、奴が答えた。

『俺は、ブラド!ルベルのブラド』とな。

それを、ルースは聴いたが母親が術をかけていて、その名を忘れさせた。

『復讐心』だけに染まった人生を歩かせない為にな。

ルースは、妻ライラの力を借りて思い出したのは随分後だ。

もう、その時にはルースは、聖地と浜の村をドローンの目から隠し通し多くの人々を生き延びさせた。

ルベルの本隊が接近して来て、アーバインの外惑星の衛星上に有ったブラドが眠って居た探査船を本隊が破壊するのを見ていたんだ。

近いからな。

その時、ルースはブラドの死を確信した。

『可哀想に』と思ったそうだ。

信じて命懸けで任務を果たしたのに、何も報われる事なく仲間に殺されたブラド達。

だから余計に、この作戦を指揮する者を許せないと言っていらっしゃる」

「それには、私たちも同意する。

軍の発表は、簡単な物だ。

ここまで来る間、特に、この銀河に入って艦隊を指揮しつけて来た宰相も死亡が発表されている。

実績をあげた宰相が目障りと感じたんだろう。

死亡した場所や死因は発表されて居ない。

それどころか、宰相が最愛の妻との間に保管した受精卵を実験に使って廃棄している。

もう倫理観も何も有った物じゃ無いんだ」

いつもは寡黙なダルトンが饒舌だ。


「そうか、子孫か。大きな問題だな」

「食糧問題を解決する為にも、家畜を降ろしてくる。そこで、質問だ」

「なんだい?」

「【卵】って有るのか?」

「卵?」

「あっ、言い方が悪かった。

鳥で空を飛べずに人に飼われて、ほぼ毎日の様に殻に包まれた卵を産ませ、その肉を食用にする」

「あぁ、鶏の事か」

「あぁ、ニワトリと言うのか?」

「これだろう?」

イバが、鶏の映像を魔石板に映し出した。

「あぁ、これだ」

「それが、俺たちでも養鶏が、うまく行って居ないんだ」

「何だ!そうなんだ」

「日本では、うまく行って居て、多くの卵や肉の供給元になっている。

だが、アーバインのニワトリは人が飼い出すと、途端に卵を産む量が減る。

卵を産まないから、肉の供給源にすらならない。

出来れば、アーバインでも生育させたいからな」

「やはりそうか。他所の開拓団で飛ばない鳥を捕まえたんだが、上手く育たないらしい」

「聖地でも、ウルマでもそうだ」

「ルベルでも鳥の類は、幹細胞から細胞を増やそうとしているがうまくいかない。

鳥の受精卵は、冷凍保存に弱かったらしい。

だから事前のデータで、ニワトリらしき鳥類が居るこの平原は入植地に選ばれたんだが、

北東の山に接した移民団が、飛べない鳥を捕まえて柵で囲ってトウモロコシを与えてみたが想像以上に食べない」


イバも確かに、ニワトリの事を聞いて居た。

地球で言うところの【チャボ】の様だが数が少ない。

もしかしたら、もっと違うところに『ニワトリ』として適した鳥がいるかもしれない。


『入植時の他の地域でも、ドローンが調べたデータを見れないか?』と確認すると、確かに飛べない鳥の分布が南の他の大陸にある。

ただ、入植地に向かない密林地帯だった。

「これは、遠いいなぁ」

だが、その大きさや集団生活をする点がニワトリに近い気がして来た。

「無いとなると、余計に食べたくなるもんだ。

最初に食べさせてくれた【プリン】

あれは【卵】が使われているよな。

なんとかしたい」


聖地とウルマでも、卵は日本に依存している。

『日本から連れて来るか』という話も出たが、憂慮しているのが【鳥インフルエンザ】

今のところ、アーバインでインフルエンザが流行した事は無い

免疫は、付いて居ないだろう。

だから地球で暮らす転移者には【予防接種】を積極的に受けさせて、【抗体】についての検査を義務付けている。

地球の人類並に、抗体を持つ様になった。

それでも毎年、何人かは、なんらかの【流行性感染症】にかかって苦しむのだが・・・・・。

聖地は、鳥の類が入って来る事は少なく、青木 忍も不思議に思っている。

『アーバインは、鳥類が少ない』

それが、この地域だけなのか調べておくか。

だがそれよりも目の前の友人が気になる。


「コンナを、呼んでくれ」


「抗体についてはドローンによる血液採取で、この辺りの病気については対策が打たれて覚醒時に、血液中に点滴で入れてあります。

ただ、そのニワトリ候補の地域の抗体が、加えられているかは調べてみないといけません」

コンナが、やはり免疫の事を知っていた。

「いずれにしろ【情報】をもらおう」

「カーマスか?」

「あぁ、ワグルにも声をかけておこう。

東に進軍するんじゃ、その内、大陸中央を突っ切って、南に向かう事になるんじゃ無いか?」

「そうだな。ニワトリの話をしたら飛びついて来そうだな」

「データにも残っているんだ。ワグルが進言しても怪しまれないだろう」

「それこそ、【諜報部】向きじゃ無いのか? 『ジャングルに隠れている鳥を発見する!』ってな」

「違いない」

だが、イバが全員が恐れていた事を言い出す。

「卓也だな」

「血液採取させて抗体の有無や、君らの事をもう少し詳しく調べよう」

翌日、卓也が採血キットを持って現れた。

そして告げる。


『明日、亮太が【チョーカー】の件でやってくる」


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