043 悲鳴
2026/01/01 エピソード タイトル 修正しました。
一部文章修正しました。
「これが、移動用の馬車か!デッカいな〜」
「家族で3台使うのよ!お兄様二人と、私とお母様、そしてお父様とルース」
「何日かかるの?」
「海沿いにサイス、浜の村、聖地だったら5日だけど、この馬車が重いので草原に出来た道をゆっくり行く事になる。少し遠回りするから7日かな。馬なら3日か4日なんだけどね」
長兄が説明する。
「結構、遠いのね」
「まぁ、仕方ないさ」
「開拓が進んだら、サイス側に大きな道を考えているわ。
それを使えば、聖地にも浜の村にも3日で着けるわ」
「なるほど、聖地の岩屋まで真っ直ぐ行く様にして、そこで分かれ道を作るのか。良い考えだ」
「でしょう。途中の湿地帯を上手く開拓すれば、新しい穀物が植えれるわ」
「それは楽しみだね」
「蔵のお肉屋さんが教えてくれたの、湿地帯に育つ『米』っていう穀物が収量が多くって肉に合うらしいわ」
「母様は本当に、開拓が好きなのね」
「そうね、食べる事に不安無く学ぶ事ができれば、子供達は幸せになれるわ。
私が出来なかった事を、今からでもやりたいの」
【アレ】の街には、文字と算数を教える学校をメルルが開いていた。
孤児達も本人の希望聞き、適性を調べて【アレ】と【聖地】で預かっていた。
働く父母の為の『乳児院』を前の当主の屋敷を改装して作り、他にも子供の為の施設を作る。
これも有って、昔、存在した倉庫街のスラムは姿を消し、子供の違法就労を無くしていった。
その為、早くも【住むならアレ】の言葉が流行りつつあった。
先頭を聖地から迎えに出た獣人の巡回兵、アレの護衛、一門の術者、長兄と次兄、メトルとルース、メルルとサーシャ、アレの護衛の態勢で進む。
周囲には猫獣人達もいた。
道から外れた広場に、一行は泊まり続けていた。
メトルとルースのワゴンでは、メトルが鬼気迫る表情でルースの頭を掴んでいる。
床に押し付けられるメトルの額。
二人の間には、火花さえ見えそうだった。
『サトリの術による記憶の伝授』
それが、この草原に入って繰り返されているので有る。
夕食後には、母メルルも同じ事をルースに行っていた。
実際には4日も有れば着くので有るが、人目を避けれるこの旅行をスパルタ教育に当てたのだった。
今日も倒れ込むルース。
だが、父はそれを許さない。
収容量を増やす為の魔道具を、ルースの【収納】に押し込み拡張させる。
魔素の放出を抑えないと苦しくて仕方ない。
広がろうとする【収納】の口を、必死の思いで閉じようとするルース。
それに、あがらって再び拡張を開始する魔道具。
これの繰り返しだった。
此処にワゴンを停めて4日後、ルースはグッタリした身体をメルルに労ってもらっていた。
スーシャも呼ばれて、グッタリした弟に【治癒の術】を展開する。
「大丈夫? ルース?」
「ありがとう。姉様」
「良く頑張ったな。ルース。最後の試練だ。解るな?」
「黒石板ですね?」
息も絶え絶えになりながらも、ルースは胸を広げた。
彼の収納には、多くの魔道具や食糧までもが入っている。
そこに、大容量の黒魔石を入れるのだ。
無茶も甚だしい。
「お父様。もうやめて!ルースが苦しがっている」
「解っている。だが、これが決まり事なのだ。
これ以上待たせるとルースの心が折れてしまう。
黙って見ているんだ」
「大丈夫だよ。姉様。後で、治癒をかけてね」
「・・・・・解ったわ。ルース!頑張って!」
「よく言った!ルース!」
ねじ込まれる【黒石板】
あまりの苦痛に、周囲まで悲鳴が響く。
兄達は、ワゴンの傍らで片膝を突き、両手を握りしめて弟を励ます。
『頑張れルース!』
術者達も兵も護衛も獣人達も、光が迸るワゴンを見つめた。
光がおさまる。
悲鳴も消えた。
静寂が訪れる。
虫の鳴く音すら無くなった。
風が吹き抜ける、中ワゴンから癒しの光が溢れた。
その光を背にして、ワゴンの扉を開けてメトルが出てきて一同を見回した。
「皆、心配をかけた。ルースは試練を乗り切った。
ここに宣言する。
次代のファルバン一門の当主は『ルース・ファルバン』! 皆、支えてくれ」
湧き上がる歓声。
誰もが、喜びを溢れさせた。
ワゴンの中では、姉に抱かれて眠るルースの姿があった。
一行は気付いて居なかった。
繰り返される魔素の放出で、彼等の【感知の力】が阻害されている間。
ワゴンから漏れ出る光を、遠く星の中から見ている者達の眼を。
「あの箱。馬車だっけ? 随分長い事アソコに止まっているよね?」
「しかも、なんだか解らないが、光が放たれる馬車を中心に祈っている様な素振りしているな? 宗教的な儀式?」
「ファルトンでも宗教有ったけど、最後には居なくなったね」
「そりゃ、金だけ集めてお偉いさん達は移民団の1号だぜ。
信じて居たやつは、裏切られた気持ちで信心どころじゃ無いだろう」
「コロニー艦の名前や移民団の詳細が伏せられて、衛星軌道上に旗艦が現れて初めて解ったんだものな。
その時には、一斉に出発して居たから信者達は置いてけぼり、神は何処に逃げて行ったんだ?」
「まぁ良いや。明日の朝にドローン落とそう。
ここは例の無人攻撃機出したあたりだよな。気になるから調べて置くか」
「ユニット放出予約終わりっと!これ楽だね。
衛星軌道に浮かべておけば、自動で落っこちて行ってくれるから」
「さて、次のポイントに行くか!」
『銀色の筒』が放出され、設定した位置に来たら大気圏突入を開始する。
【黒鳥】が帰って来た。
浜の岩屋→聖地の岩屋に修正しました。2023/07/16




