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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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042 悲鳴

「これが、移動用の馬車か!デッカいな〜」

「家族で3台使うのよ!お兄様二人と、私とお母様、そしてお父様とルース」

「何日かかるの?」

「海沿いにサイス、浜の村、聖地だったら5日だけど、この馬車が重いので草原に出来た道をゆっくり行く事になる。少し遠回りするから7日かな。馬なら3日か4日なんだけどね」

長兄が説明する。

「結構、遠いのね」

「まぁ、仕方ないさ」

「開拓が進んだら、サイス側に大きな道を考えているわ。それを使えば聖地にも浜の村にも3日で着けるわ」

「なるほど、聖地の岩屋まで真っ直ぐ行く様にしてそこで分かれ道を作るのか。良い考えだ」

「でしょう。途中の湿地帯を上手く開拓すれば、新しい穀物が植えれるわ」

「それは楽しみだね」

「蔵のお肉屋さんが教えてくれたの、湿地帯に育つ『米』っていう穀物が収量が多くって肉に合うらしいわ」

「母様は本当に、開拓が好きなのね」

「そうね、食べ物と学ぶ事ができれば子供達は幸せになれるわ。私が出来なかった事を今からでもやりたいの」

【アレ】の街には、文字と算数を教える簡単な学校をメルルが開いていた。

孤児達も本人の希望聞き適性を調べて【アレ】と【聖地】で預かっていた。

働く父母の為の『乳児院』を前の当主の屋敷を改装して作り、他にも子供の為の施設を作る。

これも有って昔、存在した倉庫街のスラムは姿を消し、子供の違法就労を無くしていった。

その為、早くも【住むならアレ】の言葉が流行りつつあった。


道から外れた広場に、一行は泊まり続けていた。

先頭を聖地から迎えに出た獣人の巡回兵、アレの護衛、一門の術者、長兄と次兄、メトルとルース、メルルとサーシャ、アレの護衛。

周囲には猫獣人達もいた。

メトルとルースのワゴンでは、メトルが鬼気迫る表情でルースの頭を掴んでいる。

押し付けられるメトルの額。

二人の間には火花さえ見えそうだった。

『サトリの術による記憶の伝授』それが、この草原に入って繰り返されているので有る。

夕食後には母メルルも同じ事を彼に行っていた。

実際には4日も有れば着くので有るが、人目を避けれるこの旅行をスパルタ教育に当てたのだった。

今日も倒れ込むルース。

だが、父はそれを許さない。

収容量を増やす為の魔道具をルースの【収納】に押し込み拡張させる。

魔素の放出を抑えないと苦しくて仕方ない。

必死に広がる【収納】の口を閉じるルース。

再び拡張を開始する魔道具。

これの繰り返しだった。

此処にワゴンを停めて4日後、ルースはグッタリした身体をメルルに労ってもらっていた。

スーシャも呼ばれてグッタリした弟に【治癒の術】を展開する。

「大丈夫? ルース?」

「ありがとう。姉様」

「良く頑張ったな。ルース。最後の試練だ。解るな?」

「黒石板ですね?」

息も絶え絶えになりながらも、ルースは胸を広げた。

彼の収納には多くの魔道具や食糧までもが入っている。

そこに、大容量の黒魔石を入れるのだ。

無茶も甚だしい。

「お父様。もうやめて!ルースが苦しがっている」

「解っている。だが、これが決まり事なのだ。これ以上待たせるとルースの心が折れてしまう。黙って見ているんだ」

「大丈夫だよ。姉様。後で、治癒をかけてね」

「・・・・・解ったわ。ルース!頑張って!」

「よく言った!ルース!」

ねじ込まれる【黒石板】

あまりの苦痛に周囲まで悲鳴が響く。

兄達は片膝を突き両手を握りしめて弟を励ます。

『頑張れルース!』

術者達も兵も護衛も獣人達も、光が迸るワゴンを見つめた。

光がおさまる。

悲鳴も消えた。

静寂が訪れる。

虫の鳴く音すら無くなった。

風が吹き抜ける中ワゴンから癒しの光が溢れた。

ワゴンの扉を開けてメトルが出てきて一同を見回した。

「皆、心配をかけた。ルースは試練を乗り切った。ここに宣言する。次代のファルバン一門の当主は『ルース・ファルバン』! 皆、支えてくれ」

湧き上がる歓声。

誰もが喜びを溢れさせた。


ワゴンの中では、姉に抱かれて眠るルースの姿があった。


一行は気付いて居なかった。

繰り返される魔素の放出で、彼等の【感知の力】が阻害されている間。

ワゴンから漏れ出る光を、遠く星の中から見ている者達の眼を。


「あの箱。馬車だっけ? 随分長い事アソコに止まっているよね?」

「しかも、なんだか解らないが光が放たれる馬車を中心に祈っている様な素振りしているな? 宗教的な儀式?」

「ファルトンでも宗教有ったけど、最後には居なくなったね」

「そりゃ、金だけ集めてお偉いさん達は移民団の1号だぜ。信じて居たやつは裏切られた気持ちで信心どころじゃ無いだろう」

「コロニー艦の名前や移民団の詳細が伏せられて衛星軌道上に旗艦が現れて初めて解ったんだものな。その時には一斉に出発して居たから信者達は置いてけぼり、神は何処に逃げて行ったんだ?」

「まぁ良いや。明日の朝にドローン落とそう。ここは例の無人攻撃機出したあたりだよな。気になるから調べて置くか」

「ユニット放出予約終わりっと!これ楽だね。衛星軌道に浮かべておけば自動で落っこちて行ってくれるから」

「さて、次のポイントに行くか!」

『銀色の筒』が放出され設定した位置に来たら大気圏突入を開始する。

【黒鳥】が帰って来た。

浜の岩屋→聖地の岩屋に修正しました。2023/07/16

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