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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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040 師匠

ファルバン家の門に、ゲーリンとメイルが簡易旅装で馬の横に立って居た。

「もうすぐに此処ともしばらくお別れですね。隊長」

「そうだな。長い事過ごしてきたからな」

若くして領主の警備隊に入ったゲーリンは、その頃には離れへと追いやられた正妻とメルルを守る隊へ入れられた。

若僧との事で軽んじられた。

だが、彼はめきめきと頭角を表し班長が退く際には後任に選ばれた。

実際は領主の手下が族に扮して押し入って来た時に、形だけの抵抗をする際の的を身に付けさせる為だった。

族は真っ先に彼を切り刻み他の者は形だけの抵抗をして見せる。

筋書きは出来ていた。

ゲーリンは、その事を知っていた。

だから、整地からメイルを呼び寄せ入隊させた。

一人では守り切れない。

怪しい動きはあったが、族が攻め込んで来る事はなかった。

ゲーリンとメイルが牽制し、相手が二の足を踏んだ事もある。


それから、ファルバン家への降嫁に付き添ってファルバン家へ移り此処にいる。

「いつまでも、可愛らしい」

「ダメですよ。ルナさんが怒りますよ」

思わず口にした言葉をメイルに聴かれて諭されてしまった。

「いや・・・・・そうだな。だが、ルナも解ってくれるだろう」

二人で過ごした離れの一画を見ながらゲーリンは言葉を返した。

此処は当主が(めかけ)を住まわせておく部屋になっていたが、メトルは周囲の勧めや紹介を全て断りメルルだけと過ごして来た。

そして妾の部屋にはゲーリンとルナを住まわせる。

これも有り得ない事だった。

正妻の住まう館の一画に配下の夫婦が住む。

だが、メルルは周囲の雑音を聞き入れなかった。

「型破りのお嬢様だ」

そのお嬢様の頼みで、出立の時を待っていた。


サキアとマウアが並んで立っている。

マウアはメルルの腕の中で泣いていた。

今日、彼らはファルバン家を出て行くのだった。

マウアの青魔石が付いたネックレスの翼の紋章はひとつの翼を折られていた。

サキアの杖は返されたがメトルが受け取り、そのまま抱きつくフリをしてサキアの収納に押し込んだ。

目を見開くサキア。

『餞別だ。受け取っておけ』耳元で囁くメトル。

彼らは共に聖地に入る事を拒みマウアの里で有るサイスの街で子供を成す事を選んだ。

その為にファルバンの元を離れる事になる。

【破門】を言い渡された。

メトルとメルルにとっては苦渋の決断だ。

だが、周囲の眼も有る。

二人共、ファルバン家に重用され過ぎた。

ファルバン家と共に有るべきだと言い出した術師がいる。

だが、メトルは二人が子を成し聖地へ入れば破門を解く事にしている。

その事は二人にも告げて有った。


サイスには大人の足で1日も有れば行き来出来る。

メトルはゲーリンとメイルを彼らと同行させ、サイスでの家や今後の事を村長と交渉する為に同行させた。

彼らはそのまま浜の村へ向かい食糧の状況を確認し聖地でファルバン家一行を待つ事にした。


破門なので門での見送りは出来ない。

この部屋で別れればそれが最後だ。

「ルース様。短い間ですが、アナタの師になれた事嬉しく思います。まだまだ教えておきたい事は数々有りますが、聖地の長や高位の術者の指導を受けると共に、お父様、お母様からの指導を受けられて更に上位の術者を目指して下さい。私も子供を連れて聖地に入ります。その日を楽しみにお待ちします」

「ありがとうございます。師匠」

「・・・・初めてですね。師匠。もっと早く呼んで貰える用にすればよかった」

「又、呼んであげますよ。師匠」


それぞれに別れを交わして、門で待つゲーリンとメイルの元へ行く。

二人並んで屋敷に向かって礼をする二人。

窓の中からファルバン一家が見送っていた。


馬に乗れないメルルの為に小型の馬車を2頭の馬に引かせる。

この2頭の馬と馬車はメルルからの餞別だった。


「行っちゃったね。」

「あぁ、行っちゃった。でも、又会えるよね。そうさ、逢えるさ」

「でも、何年後かな? 私にも赤ちゃんがいるかも知れないね」

「スーシャはお転婆だからお相手が大変だ」

「そんな事ないわ。私、お婿さんには優しくするもん」

はしゃぎ回る子供達。

だが、そんな毎日は終わりを告げる。



ゲーリンとメイルは、その日の夕方にはサイスの村に入った。

先触れを入れていた事も、あり村長が迎えに出ていた。

このサイスの出身でファルバン家の奥方付きになった娘が破門になって帰ってくる。

飛んだ醜態だと思っていたが、ゲーリンの説明を聞きほっとした様子だった。

マウアの両親は、病弱で共に亡くなっていた。

塩田の脇に有るその家はまだ残っていたがマウアが拒否した。

口には出さなかったが、塩田の塩が巻き上がって身体に良くないとメルルから聞いていた。

その為、塩田から離れた村外れの一軒家に決めた。

ここは高台にあり小さな小川が流れていて、なんと言っても井戸が有りその底から魔素が上がっていた。

ここなら魔石を漬けて置くだけで、日々の生活に使う魔素は賄える。

魔石で吸わせる事で妊娠には支障が無かった。

浜の村からの馬車が目の前を通る。

行商人が休憩を兼ねて立ち寄りやすい場所だった。

ゲーリンは住む家の修理や奉公人の手配をして、メトルから預かった金と魔石を押し付けてメイルと浜の村に向かった。

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