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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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039 コン・グラン

ゲーリンとメイルが2年前の計画に従って聖地への移動を進めていく。

やはり、半年後の麦の収穫後を移動日とする。

南の谷にどれ位前の物かは解らないが、見つけておいた地下遺跡に街の住民用の『避難所』を整備する。

聖地の土の術師が大勢動員されて壁面や天井部分に【遮蔽】、【保護】をかけて強化していく。

ファルバン家の子供達も寝る前に兄達は光魔石、ルースは黄魔石、スーシャは白魔石に魔素を自宅の泉で注ぎ込んで倒れ込む様にして床に着く毎日を過ごしていた。

サキアは何処かに『魔素の泉』が地下遺跡に有ると確信し土の術師と共に毎日遅くまで遺跡に籠る。

その、功が成就して泉を見つけ出した。

これで、術師が二人いや三人もいれば日常生活には問題ない。

街の人間を収容しても半年くらいは暮らせるだろう。


「それでは泉の口を広げよう」

メトルが息子達を泉の前に立たせた。

サキアが魔素止めの魔道具を持ち、土の術師がその両側に控える。

準備が整った事を確認して子供達に促す。

「持った魔石を泉の口に押し当てて、溢れ出る魔素を魔石に注ぎ込め」

父が収納から取り出したのは今までに持った事のない『青魔石』の大きな球。

震える手で受け取る長兄、

「私が支えては意味が無い、メイル! 手を支えてやってくれ」

「はっ!」

「『身体強化』をかけよ!踏ん張れよ!【ア・グラン!】(開口)」

「ウッ!」

兄が踏ん張る。

メイルがそれを支える。

岩と魔石の間を土と小石、そして何やらドロリとした何かが溢れ出す。

だが、青魔石が少し色が濃くなった。

魔素が流れているのは間違いない。

額に汗が噴き出す。

「【レ・グラン!】(遮口)もう良いぞ」

息も絶え絶えにして長兄は魔石を次兄に渡す。

「次は、俺だな!」

次兄が青魔石を受け取ると「はぁ〜すげ〜!本物の青魔石だ」と撫で回す。

「これくらいの物を【蔵の街】のお嬢様に用意されますか?」ゲーリンが聞く。

「デッカいのは良いけどやはり身につけれないだろう。そういう物を入手するよ!」

「おやおや、もう隠しもしなくなったわね。」姫聖女【スーシャ】が揶揄う。

彼は【蔵の街】の高官の娘との婚姻の話が進んでいる。


「じゃあ、『身体強化!」ゲーリンが後ろに着く。

「【ア・グラン!】」

先程より土砂の量は減ったが、ドロリとした物が増えている。

噴き出す汗! ゲーリンにも力が入る。

だが、そのオリの様な物も次第に量が減っていく。

「【レ・グラン!】」

魔石の青さは更に濃くなった。

「ヨッシャ〜!」青魔石を差し上げる次兄。

「さて次だが、サキア。ルースを手伝ってくれ。」

「かしこまりました。ルース。君も『身体強化』をかけるんだぞ」

「準備は良いか? 【ア・グラン!】」

ドロリとしたオリが最初噴き出したが、次第に何も吹き出さなくなって来た。

「【レ・グラン!】兄二人の頑張りが効いたな。魔素だまりとの間が綺麗になった。サキア 【コン・グラン】の魔道具を取り付けてくれ」

「解りました」

サキアは術師に預けていた魔道具を手にして魔素の出口に押し付けた。

土の術師と目を交わす。


「「「【固定】! 」」」

三人の術師が言葉を合わせ、筒になった魔道具を押し込む。

魔道具と岩の隙間に透明な糊が練り込まれる様に盛り上がり、魔道具の片方が岩に固定された。

魔道具の背中にはキザギザが切って有る。

「それでは開けるぞ。【ア・グラン!】」

魔道具まで魔素が流れて来たのだろう。

魔道具が青く光る。

「スーシャ。おいで。スーシャも青魔石に魔素を注ぎ込む時の感覚を覚えてほしい。ほら、片手で支えていつものように魔石に魔素を注ぎ込む事を考えてご覧。そして、この魔道具の上の部分を根元からゆっくりと指を添わせて【コン・グラン】と唱えるんだ。終わったら又、【コン・グラン】と唱えながら根元に指を動かせば。魔素が止まる」

スーシャは面白かった様で何度もやっていた。

他の兄弟も術師もやってみる。

「この魔道具は屋敷の地下の遺跡か聖地で見つかった古い物だ。こういった制御を伴う魔道具や術には古代の言葉を使う事で起動する。魔素の使用量を変えられる。スーシャの治癒もそうだな。スーシャは古代語を使って怪我の状態に合わせた魔素量を使っている。聖地で術師について学ぶと良い」


後の事を聖地から来た術師とファルバン一門の術師に任せて一同は屋敷に帰る。

屋敷に帰るとサキアがメトルに話がしたいと執務室に入って行った。


兄弟は食事を済ませて、夜の空を見に屋上に上がる。

今、この屋上には『遠見の陣』を青魔石で象った白石板に『保護の術』をかけた物が置いてある。

兄弟は、この陣に魔素を流し込んで陣を起動して、何かが接近している方向を見る事を日課にしていた。

今夜も又、近付いている気がする。

母が居ればその船の形が見れるのだが兄弟は達だけでは、夜空の星とは違う色の光の点が見えるだけだった。

「嫌な感じだね。」ルースが言えば、

「うん。何かいやらしい事を考えているオジサンに見られている様な気がする」

「イヤらしいって・・・・、まあ、解らないでもないな」次兄が納得する。

「領主の街が襲われたのも奪われた【黒鳥】を街ごと壊滅させる事が目的だったって報告されている。自分達の秘密を守るためだったら多くの人間ごと徹底的に焼き尽くす連中だ。人間の事を蟻程にも思っていないのは間違いない」

長兄が自分も参加した会議で報告された内容を伝えていた。

彼は【蔵の街】や【聖地】そして【丘の村】へ護衛を連れて巡回をし、領地経営も学び始めていた。

次兄は領地全体を守る部隊を結成する為の準備に参加している。

もしも、何も起こらねければ領主の跡を長兄、治安部門を次兄、術師の一門をルースが長となる筈だった。

スーシャはまだ結婚は考えたくないと、母が開く子供達の学校の手伝いをしていた。

旅立ちまで後4ヶ月。

暑さが増して来た頃だった。


聖地への移動まで3ヶ月。

魔素が入手出来る事で更に地下施設に氷室が壁に造られ、他の一時的な食糧や日用品が運び込まれた。

周辺の領主は準備を揃えてもいない。

ファルバン家が、その様な避難所を作るのを見てその真意を正した。

ほど近い【領主の街】が滅ぼされたので、街から離れた場所に『避難所』を設ける必要性を感じて建設している事を伝えた。

各領主の対応が分かれる。

ここのところ【黒鳥】が現れたと言う情報は無かった。

船舶を使った運送が発展し他の大陸へも交易が始まり、そこでも【黒鳥】の目撃はされていない。 

【蔵の街】だけがやはり山間部に地下遺跡を発見し、【アレ】の街からファルバンの術師を招いて工事を進めていた。

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