403 間話 近況2
主なメンバーの7〜8年後の状況です。
朱雀、恋歌達は個別の間話を準備しています。
五十嵐貴子の出産を機に、次々に産まれてくる脩の仲間の子供達。
長い闘いには、彼らの力が必然となる。
運命を強いられた子供達。
貴子は【真吾】の出産の後、少し体調を崩したが三年後に女子【律子】を出産した。
夫の五十嵐亮太は、バイクショップを開くと同時に、大学在学時に親しくなった面々と『岩屋 脩』と共にレーシングチームを立ち上げた。
それでも、ナンバーワンの座は脩には譲らない。
そんな、アグレッシブなレースを世界に見せつける。
鹿児島の岩屋神社の宮司を務める友嗣を支え、【禰宜】を務める若い脩は、母親の沙羅と共に旅番組に出演していた事もあり、妻の桜と共に岩屋神社の顔になっていた。
シーズン前になれば、神前での結婚式を希望する婚約者に引き摺られて渋々訪れた新郎も、桜と雪に茶を出されれば熱心に神事について質問をして、神楽殿での巫女による舞を眺めて帰る事が多くなった。
亮太のチームにはスポット参加にはなるが、マン島レースだけは出る様にしている。
ビッグチームには流石に敵わない。
健闘を讃えられて転籍を打診されるが『趣味なんだ』と言うと呆れられていた。
脩と桜の間には【麗子】が産まれた。
この、萩月神社を守る為に五十嵐亮太と共に、鹿児島に居を構える西郷卓也は『地域医療センター』で外科の勤務医として勤務し始めていた。
美玖も、同じ職場で子供を育てながら勤務を続けていたが退職。
料理に興味が出て、鹿児島でも郷土料理の研究家と知られていた立花裕樹の母親に気に入られていた。
この頃、自宅で郷土料理を立花裕樹の母から学んでいる。
美玖は、貴子が産んだ真吾に続いて翌年に【剣吾】を産んでいた。
二人目は女児で、【香織】と名付けた。
岩屋神社の麓の村は、岩屋学園が置かれた事で人口が増えて町になった。
『温泉と神秘の町、学生の街』
そんなキャッチコピーが、町の入り口に掲げられた。
学生が遊ぶ様な場所は無いが、学ぶ事には事欠かない。
そんな環境に惹かれて全国から学生が来る。
時折、講師として元JAXAの所長【梓】やレポーターを務めた岩屋沙羅が訪れる。
時には、抜き打ちで前フランス大統領エルベの訪問も有り学生達の度肝を抜く。
学食も美味いし安い。
調理人も、長谷山が経営するホテルに入る前の修行の場として忙しく働くから味も良い。
そんな、岩屋学園には【源三郎】、【立浪 月】が通う。
週末には岩屋神社を訪れて、陰陽師としての修行に励む。
アルバイトとして、共に岩屋神社で働いている。
京都では
京優学園の、代表理事を務めている若菜。
海外からの入学希望者も多く『特別コース=留学子女枠』になっていた。
アーバインからの新入生が、篤と慎一の教育水準が高く、彼等に対しての特別コースを設ける必要が無くなった事が大きい。
京都だけでは、捌ききれなくなって来ていたが、他の理事から出された京都以外への移転計画は、OGから強烈に反対された。
そこで、これ以上の拡大はせずに相模原の科学系大学、両角の専門学校、そして札幌の女子校、女子大と統合して大学部門を分けた。
海外も、フランスとイギリスに姉妹校を選定し、エリファーナとエルベ・エレンの協力で留学制度が設けられた。
友嗣と若菜の長女 【美沙緒】、長男 【真】
美沙緒は、エリファーナの誘いを受けて英国へ中学卒業から渡英。
同じく真も、来年には英国へ渡英の見込みだ
ルナは、娘のメルカが英国に居住。
長男のイリスは、パリへ古池美佳と渡っていた。
二人とも、大学に通うわけでは無く自由に暮らす。
実際には、日本からやって来る面々とエルベ達との調整役と、巷に漏れて来る萩月の情報源を探す事。
今でも時折、出どころ不明の噂が流れてくる。
噂は、そのままにしておくと、とんでもない事態を齎す事がある。
それを、未然に刈り取る事が二人の役目・・・・・
の筈なんだが、脩には遊んでいるにしか見えない。
ルナは、多くの時間をルースの聖地で暮らす。
天文台と監視施設である【遠見の部屋】については、青木が育てた聖地とウルマの術師がタルクと一緒に引き継いでいたが、合唱隊や医療施設を回る事は続けている。
それでも、日本に帰って来ては、しばらく岩屋神社で過ごした後に、京優学園で声楽の講師として真奈美を手助けしていた。
美耶は、普段はアトリエに居る。
一条の事件の際に被害を受けた女性達の、その後のケアを左右田(旧姓西郷)亜里沙と続けている。
左右田は、木場圭一の後輩で精神科医。
何故か、親友であるカイ(五十嵐香澄)に良く似た『お転婆娘』を産んではしゃいでいる。
その五十嵐香澄も、仕事一辺倒だったが九鬼友恵の従兄弟の攻勢に陥落。
大きくなった、お腹を抱えながらも店に立っていたが、悪阻で店を休む事になった。
今まで体調不良になった事もなく、用事以外で休んだ事のない彼女にとって、毎日長い一日を過ごす苦痛を味わっている。
美耶の悩みは、【ルイ】が芸能界にデビューしたこと。
どうしても、ゴシップ狙いで日常の姿を狙われる。
娘の【ユリ】と、一緒に大人しくしているしか無く、基本、萩月のマンションかアトリエで過ごしている。
だが、定期的に姿を消してユリと共に【杖】に跨り、各地の『自衛隊訪問』でストレス解消だ!
【杖】については、巴も頭を捻る。
【付喪神】の一種なのだろうが、アーバインで敵を殴りやすいし【飛行】、【飛翔】を発動した際に、何も無いより『腹這い』になりやすいと使い出した杖。
『どうやって手に入れた?』と言われても、ゲイリンから貰った様な気もするが、とんと思い出せないでいた。
そんな杖が【付喪神】になってしまった。
巴様にも、デュラン、サンゲでも解らないそうだ。
だが、それでも【念話】で有る程度の意志が伝わるのは楽だ。
今日は、遠出で気分を変えて沖縄に飛んで来た。
ユリに、杖への『指示』を任せてある。
スクランブルに、反応してあがってくる空自の面々。
単機で、しかも全く視認出来ない対象。
レーダーだけは捉えている。
米軍も最初は出たが空自の連中の圧に負けて、この対象にはあがってこない。
『コイツは、俺たち【全空自】の獲物だ!手を出すな!』と言われては引くしか無い。
今回は、大陸から領海侵入してきた不審機の直前をユリが横切る。
不審機のパイロットは、後に続く空自に睨みつけられて逃げていった。
『邪魔すんな! 出て行け!』
そう、気迫のこもった言葉を投げかけれては、引き下がるしか無い。
「怖かった・・・・・いきなり『レーダーに反応!』っと思ったら、見えない何かが横切って行った。そしたら、そしたら・・・・・空自の奴らが無線で怒鳴って来た。日本語でなんて喋っているのか解ん無かったけど・・・・・怖かった」
木場 昴とミレイ
昴の子供が欲しくって仕方が無かったミレイは、大学を卒業後、法科に進む。
そこで、初めて女の子をもうけた。
アーバインの獣人としては、かなり遅い出産になったが、それでも嬉しくて仕方が無い。
無茶苦茶に可愛がる。
学業が疎かになっているが、子供を抱いて眠る姿が可愛くて昴も怒る気になれない。
自宅では魔道具を外しているので、耳がピクピク動いて可愛い。
もうしばらくしたら、もう一人欲しいな。
ついつい、ミレイの耳の後ろをかいてやる。
どんなに忙しくても、甘えてくるミレイと一緒にいれば幸せだ。
館林純一と名を変えて、亜美と一緒に金沢で暮らす彼らにも子供が授かった。
長女、【瞳】
亜美の影響で、無手の格闘家を目指す。
【流】とデカデカと掲げられた道場の看板。
それを背にして腕を組んでポーズを取る。
なかなかに太々しい態度。
長男、【海斗】
姉とは違い、純一に似た【記憶師】で有り、様々な事に興味を持つ。
東京の国分寺に、工場を建てた星里家の長男 求と同じ歳ということもあり仲が良い。
魔石板を使って写真や資料の交換をしている。
純一が、ルースの聖地に持ち込んだもの。
『回転寿司』
ホールで、お披露目した時には行列が出来た。
ルースが、日本に来た時に非常に面白がっていたのだ。
テーブル席には【転送】で送る。
ウルマに開いた店では【ハン】が常連になっていて、純一に礼をしようとしたら猫をお願いされた。
亜美が萩月神社から引き取って来た保護猫も居るが、青山家に入り浸って青山家に居着いてしまった。
ハンは、『まだ、妊娠していないが、子供が産まれたら選びに来てくれ』と約束を交わした。
東京では、立浪家に婿養子に入ったフィンが、日本名を【立浪 翼】とかえていたが、【フィン】と呼ばれることが多かった。
晶は、国語教員として羽田の学園に務めていたが出産後、退職。
都内の大学院に通い上を目指している。
息子の【エルト=健康】は日本名は【立浪 健】
産まれた時に体が弱く心配された。
女児しか産まれない立浪の家系。
その、縛が解けたのだろうか?
星里光一と碧は、予定通り阿部が所有していた工場跡地にJAXAを取引相手に加工品を納める会社を設立。
古城光学との共同制作が多い。
長男 【求】は学者肌でフィンに憧れているが、母、碧の影響から工場で物作りがされているのを見るのが好きだ。
館林純一の子供 海斗と同じ歳で、彼の母、亜美が国分寺に尚美を訪ねて来る際には海斗は工場に預けられる。
亜美と瞳は、尚美相手に腕を磨く
そして、娘の【恵那】 尚美の道場に通う少女で東條家の次男【雅樹】に首ったけだ。
星里家の、工場兼事務所に近い住宅街に『東條和也』が開いたレストラン。
以前は、この場所に地元の方が愛するファミリーレストランが有ったが引退。
ここを和也が買い取って欧州家庭料理の店を開いた。
あの『東條和也』が開いた店という事で、色々と取材陣が押し寄せて来たが、地域の方を優先して予約を入れて取材や撮影は断っている。
個人の記念の為の撮影は許可しているが、それを、公にしたら即座に『入店お断り』になる。
どんなに、迂回してマスコミに渡しても、その関係者は全て入店出来なくなる。
それを知った家族からは、非難の目が注がれる。
それが知られたら『赤っ恥』をかく。
そんな店になっていた。
子供は二人。
長男【洋樹】は何故か、萩月とは関係ない小中高一貫教育の都内の学校に入学して、初等部一年から親元を離れて生活していた。
剣術は、子供の頃から仕込まれている。
都内の大会に出ては、上位者に上手く誤魔化して負けている。
準優勝か三位。
ここがベストポジションと決めていた。
次男【雅樹】は三歳年下。
こちらも、恵那と一緒に道場に通っている。
こちらは、このまま地元の羽田の学園に通う。
和也の血を受けたのは雅樹の方。
恵那が早々に『結婚しても、台所に立つことは無い』と宣言している。
青木は、JAXAに帰り人工衛星関連の責任者になっていた。
妻、シューラは、その恵まれた身体能力を活かして、フィットネスジムを開設。
自ら指導者として顧客の指導をする。
『アリス』との提携で、会員の体型維持や出産前後のケアも努めている。
両角美容学園からの卒業生には『ステップアップの就職先』と評価が高く、アーバインからの移住者が地方に行く際の研修場所にもなっている。
娘のスピカは『京優学園に』入り、その利発で可愛い容姿。
アイドル的な存在になっていた。
九鬼修造のひとり娘 九鬼友恵は両角寿美が経営する商社に入社。
すぐに優秀なバイヤーとして頭角を表す。
現在は北米担当で、自ら九鬼運輸からリースした小型ジェットを操縦して直接顧客を周る。
夫は両角の社員で資材調達部。
表向きは資材調達部だが実情は、取引先の経営状態やスキャンダルを調べる調査部の責任者。
彼の調査能力で、エルベや英国王室が救われた。
子供は女の子と男の子。
順に京優学園に入れるつもり。
現在、ニューヨークで暮らしている。
釧路に農場を開き高校時代の友人達と農業に関連した会社組織を立ち上げた春日大輝。
特に、飼料の高騰、暖房費の高騰に頭を悩める農場の為に、九州からサトウキビのカスや芋の蔓などを調達して船舶を利用して運び込んでいた。
船は九鬼が探し出した輸送船を改造。
積み込んだ原料を元に、飼料加工をしながら北海道に入る。
その際に出る廃棄物を発酵させてメタノールにして燃料に混ぜる。
まだ、採算は取れていないが、この船舶の機構やメタノール発酵の設備は星里製作所と亮太が開発中だ。
資金は羽田が出している。
更に日本全国に広がりつつ有る『耕作放棄地』を再度、農地に戻す。
これを、アーバインから移住した者が、会社組織で各地の自治体と契約して回っている。
獣害を防ぐ為に、置かれた黒い箱。
亮太の【傀儡】
匂いもせずにひっそりと、畑や田んぼの畦の影にいる。
山から降りて来た猿や猪、そして熊。
それらの獣が近付くと、すかさず移動して、その後脚に触れる。
獣にとって、これほどの恐怖はない。
大慌てで山に戻る。
そして、また用心をしながら近づいてくる。
見抜けない、匂いもない。
また触られる。
こうして、寄り付かなくなる。
社員は麓の村に立ち寄って、年寄り達の家の具合を見て修理もする。
過疎化が進む集落の見回りも彼らの仕事だ。
老人達の中には、彼らが来る日を楽しみにしている者も出てきた。
今は、九州、四国だけだが、徐々に依頼が増えている。
この際に回収される農業廃棄物も、北海道に送る為に船に乗せる。
アーバインからの獣人を主にした面々。
軽トラを操って山々を周る。
九鬼修造が、面接をした。
最優先は村を守る事。
【髭面山賊】のペイントがされた軽トラが、全国を回る日は近い。
大輝は農場経営を、涼子は獣医師として芦屋と一緒に地域を周る。
立花裕樹 郁江 加奈子が勤める観光農園との業務提携も順調で、長谷山のホテルグループ、和也の国分寺のレストランで使われる食材も納めている。
涼子は在学中に長女 【渚】長男 【慧一】を産んだので、大学を八年かかって卒業した。
子供の世話をする為に札幌のマンションで、巫女のひとりだった【吹雪】が北海道に引っ越してきた。
時折、子供を抱いて買い物に出る若く美しい女性。
子供は、彼女の姉の子だと知られていた。
吹雪に声をかけようと、若い男がマンション周辺に出没。
【ストーカー】
こうなると我慢ができない【朝霧ひとみ】が、彷徨いていた若者に一瞥を加える。
優しげな老婆が、外に出て来た吹雪と赤ん坊に寄り添う。
ひとみの視線を受けて、若者は凍るしか無かった。
朝霞ひとみの孫娘達も京優学園に進んで、今二人とも寄宿舎に住む。
暇さえあればアトリエに通う。
青山秋子と蒼に薙刀を習う。
抜刀に関しては、祖母のひとみが呆れるほどに筋が良かった。
釧路に開いた学園。
羽田家が保育園から次第に広げて『京優学園』や札幌の女子校、女子大との協力関係が大きい。
小中高一貫校に農業科を地元の高校を吸収して、大学も同様に合併させた。
立花裕樹の子供達
大地、太陽、穂花
京優学園では無く岩屋学園で、寮生活をしだした。
もちろん、獣医師を目指す事もあるが、寒いのは苦手で休みの時には祖父母に会いに行って海に潜る。
裕樹らは、逆に暑いのが苦手になってしまっていた。
御室美咲の子供達も、釜 琴音の子も無理矢理に岩屋学園に放り込まれた。
美咲の子供 航は穂花が居るので幸せみたいなのだが・・・・・
釧路の学園には、多くのアーバインからの転移者が集まった。
人口の減少に悩む、この都市にとっては嬉しい事だった。
治安も良くなって道民の中でも、釧路への転居を考える者達が出てきた。
北極星も、予約サイトは常に満員。
だが、オーナーは規模拡大はしない。
アーバインからやってくる、少年、少女を順にアルバイトとして受け入れてくれる。
家庭的な【おもてなし】を目指しているからと相変わらずだ。
大輝達の農園と契約して、牛乳や乳製品そしてハムやソーセージ、卵、野菜まで高品質の物を常に準備して宿泊客やランチを予約した客に提供する。
友嗣達は、オーナーの家族には自分達の素性を告げてある。
「そんな気がしていたんだ。
友嗣さんと若菜さんが泊まった日から、あぁ、特別な日が始まるってね。
理由は、ないけどね」
今日も、数組のお客様相手に星空を見せてる。
今使っているのは、古城光学の工場長 八木の渾身の逸品だ。
これが、八木が手掛けた最後の反射望遠鏡だ。
八木は妻と共に、アーバインに移り住み子供達に星の話をしている。
ウルマでも、技術指導でまだまだ元気だ。
奥様は、華道と茶の湯を広めて花壇の世話に忙しい。
準備は進む。
後は、ルベルとの戦いに備えるだけだ。




