表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
401/929

401 接近02 捨て石

今回は、ここまでです。

次は、又次世代の話題になります。

【ワービル艦橋指令本部】

「アイツら、先に降下させただけで、何もやらないぞ」

「アンドロイドが、色んなの種子を蒔いて、生育させていますがそれだけです」

「下に降りた連中はどうしている?」

「どうも、遊んでいるとしか、思えないんですが・・・・・」

「オイ、うちのコロニー艦でも、同じような奴らが出たな?」

「はい、CSを拒否した連中ですね。もう、全員死に絶えました」

「アイツら、同じ様な人間を使って、ワービルの安全性を最終確認してやがる」

「それは?」

「事前探索で解るのは、大気や人間や動物の血液や感染データ。

鉱物の分布や放射性物質の有無だ。

水中、地中の安全性は、降りてみなくては解らん」

「人体実験ですか?」

「あぁ、だから軍部は防護スーツと手袋は外さない。

しかも、畑地には近付かない。これは、未だ数年かかるな」

彼の読みはあたっていた。

走り回れる様になって暖かくなった時には、用水路や川で泳ぎ、実をつけていた果実を口にしていた。

だが、三年後。

それは突然始まった。

船が降りてきて明らかに医療関係者とおもわれる連中が、ストレッチャーの様な物を押してきた。

医師団は防護服に着替えて、周囲の居住スペースからストレッチャーに乗せて患者らしき住人を、中央の管理棟に次々に搬入していく。


この光景は聖地でも観測されていた。

木場 直、木場 昴を始めとした医療チームが居る。

「発熱していた様だが、防護服は簡易型に変わった」

「川の中を、調べていますね?」

「ルースさん。何か思い当たる事有りますか?」

「いや。ワシには無い。ゲーリンどうじゃ?」

「川、川、そして発熱ですか? 昔、聞いたことある様な気がします」


思い出したのは、看護師の美玖。

「【日本住血吸虫!】 川や池、田んぼの中にいる巻貝に寄生して、人や動物の身体に侵入し血管内で繁殖するわ。

赤血球を栄養源にして、栄養失調や下痢、下血、発熱で命を落とすわ」

「対策は?」

「宿主となる巻貝を駆除するしか無い。護岸工事をして川の中に素足で入らない。

コンクリート製のU字菅が、ミヤイリガイの撲滅に有効だったという報告もあったわ」


「日本では、山梨県で発生していたから、武田信玄達が苦しんだ。

最終的には、溜池を一旦埋めたりもして、土壌を干上がらせた上で耕して宿主を潰した。

木酢酢を多量に撒いて貝を殺して、更に鋤きかえしをして干した稲藁を上で焼いてすき込んだり、

石灰を撒いてアルカリ性に土壌を変えたわ」

「うちでも、調べておくか?」

「それが良いわ。

幸い、豊富な地下水を使っているから大丈夫だと思うけど、ウルマでは雪解け水を溜めた池もある。

寒冷地だから可能性は低くなるけど、他の病原体もあるわ。

専門家が、又必要ね」


植物については日本とアメリカから人材が訪れて、研究を続けてくれている。

いくつか、地球と違う植物が見つかっていた。

中には大麻の様な成分を持つ植物が有り、やはり使用された事がある。

だが、幸い聖地の農作地やウルマの居住地周辺では見つかっていない。


重機が、アンドロイドと共に、フロール平原へ向かって移動を開始した。

キャタピラーを使っている。

それほど移動速度は高く無い。

先頭を行く重機が、整地をしながら進むのだ。

時速1キロにも満たない。

「いよいよ、フロールに向かうようだな」

三つのポアーザが、その映像を見ている。

ペータとシータも眺めていた。

亜美もシータと並んで、大きなお腹を抱えてソファーで見ている。

亜美の出産は、今までの経験で少し早産になる事は分かっていたが、シータの出産は手探りだ。


翌朝、皆が朝食を取って、又、映像を見ていた時にそれは起こった。

患者達、住民達は、全て中央の施設に集められていた。

そこから、次々に出てくる軍人らしき者達と医師団。

ストレッチャーは、置き去りだった。

移送艦に乗り込み、急速に上昇して行った。

「おい!まさか見殺しにするつもりか!」

脩が、叫んだ!

その時、サトリの者が感じた強烈な不安。

上空から放射された熱線が、中央のドームを囲む様にして照射されて、耕作されていた畑地を、水路を焼き尽くす。

立ち昇る炎と水蒸気。

10分ほど続いただろうか?

「奴ら、見殺しにしやがった。それどころか、熱消毒でもする様にして焼き尽くしやがった」

「同胞じゃなかったのか?」

更に、驚く事が起きる。

今、熱線を照射した船が、軌道を離れて南へ移動して行く。

しかも、高度が落ちてきている。


後から来てくれる本隊に回収されて、CSから覚醒させて貰う。

約束された貴族の座。

この新しい星に立ち、支配者の階層に入り、新たな家を起こす。

そんな夢を、抱いて眠っていた青年軍人達。

だが、彼らは回収されること無く、炎をあげて大気中で散って行った。

「アレには、二十人くらい眠っていたんじゃなかったけ?」

沙羅が、脩の問いかけに答える。

「そうね、それくらい居たはずよ」

「事故か? それとも不要とされた?」


落ちていく火の玉を見ながらルースは思った。

ブラドも、同じ様に始末されたのかもしれんな。

そんな気がした。


ブラド達が、乗った探査船は外部からの信号で、張り付いていた衛星で機能停止していた。

ブラドは、二度と目覚めぬ眠りについていた。


「レーザーを短時間放射しただけで、【ボーズ】が切れてしまうとは運が無かったな。

機関部にエネルギーが供給されなくなるとは、ここからでは何も出来ない。

CSの最中だった事が、せめてものの慰みだ。

勇敢な、彼らの冥福を祈ろう。

残して行った物が有れば、墓碑には二階級特進でその勇姿を刻んでくれ。

と言っても入植してからの話だ。

そう言えば、プラドの船からの信号はまだ掴まらないのか?」


部下達は、薄々気付いていた。

彼らは、【踏み石】にされた。

貴族なんかになったら、誰かの敵になりかねない。

消せる時に消してしまう。

口約束に、乗らずに良かった。

欲を掻くと、利用されて始末される。


皇帝にも、手を出してもおかしく無い。


だが、宰相は皇帝の座など望んでいない。

アイツらが【ボーズ】や金、そして、その他の資産をコロニー艦に隠しているのは解っている。

それを、どうにか出来る見通しがつかない限り従順な宰相を勤めてやるさ。



フロール平原に移動した重機は、広大な平原を開拓して石や岩、そして自生している木々を撤去して行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ