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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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037 領主

5日後。

先発で確認作業に入った、ゲーリン達の先導で【領主の街】に入る。


ことごとく砕かれて、焼かれた街。

中央には、人の身の高さで10人以上の穴が開いていて金属が散らばっていた。

穴の斜面には、まだ煙が上がる。

とても穴の中に入れる状況では無かった。

中に降りるのは危険としばらく放置する事にして、見当がつく場所を歩いて見る。

領主館は本当に跡形もなく砕き尽くされていて、基礎の位置でなんとかあたりがついたが墓所までもが吹き飛んでいた。

ゲーリンによれば、焼死体すら残って無いそうだ。

そこまでの高温で長時間焼き尽くされたのか?

今日も、上空で黒鳥が周回しているが近寄ってはこない。

こちらが、瓦礫の上を歩き回るのを見ているだけだった。

気のせいか会話を聞かれている気がする。

ゲーリンは口を押さえて、黙って捜索する様に指示をした。

街の外に張った天幕で夜を過ごした。


翌朝

中央に空いた穴に刺さっている金属片を回収したいのだが、それをやると危険な気がしてメトルは穴の縁から隊員を遠ざけさせた。

すると【黒鳥】が穴の中に入って金属片を回収する。

慌てて隊員が近づこうとするが【黒鳥】が前を塞ぐ。

赤い光が、隊員の身体を照らす。

メトルは、危険を察知して隊員を下がらせる。


3交代で回収した物を何処かに運んでいっては、又戻って来る。

一つは必ず残っていて、時折接近した隊員に赤い光を飛ばしてくる。

【黒石版】を出したかったが、メトルはやはり嫌な予感でやめておいた。

術を使える隊員もいたが、使うなと指示をしておく。

【黒鳥】が、隊員を追い払う行動が激しくなる。

誰かれ関係なく近い者に、あの赤い光線を浴びせて来る。

これ以上ここにいては危険だと、壁の外まで下がらせた。

一斉に黒鳥達が回収作業を始める。

埋まっている位置が分かっているのか、泥を跳ね上げて掘り出しては飛んで行く。

夕闇が迫りメトルは距離を更に取らせて野営の準備をさせた。

夜には【黒鳥】もいなくなったが、ところどころに怪しさを感じて中に入る事を禁じた。。

朝が来た。

周囲に黒鳥がいない。

メトルは今ならばと【黒石版】を取り出して街の映像を記憶する。

すると、ところどころに赤い点がついた場所が有るのに気付いた。

彼が嫌な感じを受けた場所だった。

メトルはゲーリンに指示をして赤い印が表示された岩に矢を当てさせた。

吹き飛ぶ岩。

『夜に罠を撒かれた』

そう気づいて、赤い点を数えてみると50を超えた。

もう迂闊には入れない。

音を聞きつけたのか黒鳥が3つ飛んできて、2つが周囲を回り出した。

もう一つは吹き飛んだ岩の周囲をゆっくりと飛び回っている。

考える事ができて居るのか?

先日の光の星はこちらに居ないから、操っている者がどこかに居るのか?

昼になると更に黒鳥が増えてきた。

全部で15、6は居るだろう。

更にとんでもない光景が見られた。

穴の中に居た【黒鳥】が一斉に外に飛び出して来た。

そして、上空にいた黒鳥から小さな球が落とされた。

「ポン」と音がして土煙が上がり金属片が現れた。

それを持ち去る【黒鳥】

重かったのか2匹で持っていく。

罠に使って居るのは、あの小さな球に似た物に違いない。

指先より少し大きい位だ。

瓦礫の下に潜り込まれたら・・・・・もう、手は出せない。

メトルはそう判断し全員【アレ】の街に帰還する事にした。

ゲーリンは近くに隠れていた猫獣人に、時折様子を見て報告してくれる様に頼んでおいた。

ただし、決して街に中には入るなと言い含める事は忘れなかった。

冬が来る頃にはもう、探し尽くしたのか【黒鳥】が来なくなったとの報告を受けた。


あの【領主の街】が壊滅した事は直ぐに広まり、【アレ】の周辺に隠れていた獣人達は姿を消した。

聖地はファルバン家と緊密な仲であることは知られており、彼らが逃げてくることは無かった。

【ジューア】の街で船を使って荷を迂回させて【アレ】の街と領主の街を潰そうとした息子は大きな負債を抱えて逐電していた。

前当主が亡くなってからの兄弟の暴走だった。

彼の船は【蔵の街】の代官が全て差押え、その中の一隻は聖地の術師が氷の魔道具で作った【肉用の石室】を備えた肉屋の船になる。

彼は満面の笑みを浮かべたそうだ。


【アレ】のファルバン家は妻の出自も有り、近隣の領主の推薦を受けて領主家となる。

こうして、聖地への移動は延期された。

【アレ】の街から聖地の周辺の丘の村、【浜の村】そして【サイス】が領地になる。

聖地はファルバン家の庇護を受ける、言わば治外法権の地となった。

【蔵の街】の代官が肉屋や他の商人を連れて挨拶に来た。

【蔵の街】としてはサイスの良質な塩と聖地の魔石、そして丘の村の羊の肉この三つの品はどうしても取引したい。

こうして3つもの特産を産み出す産地を抱えた【アレ】は発展が見込まれた。

更にメルルが領主の妨害で継続出来なかった開拓を再開し、丘だけではなくサイスに流れ込む川の両岸を牧草地を広げ牛や馬の牧場に変えて行く。

開拓に使われる土人形と傀儡の魔道具を作る術師の一団を指揮する聖地の長は楽しげだ。

聖地の氷室は丘の村で作られた羊の肉の保管場となり肉屋が訪れて【浜の村】から船で他の領に行く。

彼は次第に元丘の女と実根になったが、教育が受けられる子供の事を考えて彼が【蔵の街】で暮らそうと言う誘いを断って聖地で暮らした。

コムは家族が無事に領主の街から脱出して【銀の鳥】からの攻撃から逃れる事が出来た事を喜んでいた。

「いや〜あの時、ゲーリン兄貴の話が無かったらと思うとゾッとする。本当に命の恩人だよ」

と商売のたびに女房を連れて訪れて礼を言われる。

「だけど、残念だったな。ルナと息子の事は。ありきたりかも知れないが元気を出してくれよ兄貴」

彼の息子は聖地で一緒になった犬獣人の娘と【蔵の街】で商売を始めた。

「お前に似て手が早いな」

「おいおい、あんまりバラさないでくれよ。怖いんだから・・・・・」

「怖がられる事するからだよ。でも、本当にありがとう。ゲーリン」

こうして、聖地とアレそしてそれに関わる街は発展していく。

【領主の街の惨劇】を忘れて。



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