036 朝日
機体コード 2311022
状況 自律飛行不能
捕獲された模様。ブレードによる切断失敗。
布製で袋状の物に収納されている。
綿と思われる。
強度は綿とは思えない。
熱による切断も不能。
ヒーターブレードも効かない。
四足歩行の動物による移動をしている。
ポイント349-448-989から349-448-688へ移動している。
バッテリーセーブの為に追跡用パルス発信。
通信終了
衛星軌道上の探査船に載せられたアンドロイドは、初めての知的生命体による探査ドローンの捕獲について対処していた。
アンドロイドの人工知能にドローンからの映像が再生される。
男性体と見られる人型生命体から投げられた、捕獲用と見られる格子状に編まれた繊維物がドローンに向かって投げつけられている。
墜落するドローン。
ブレードを使って繊維を切断しようとするが、その前に綿の袋状の物に収納された。
カメラがとらえた映像からは植物の繊維が見れるが、ヒーターブレードに切り換えても切断できないでいた。
植物なら燃える温度だが、袋の表面が可視光以外の光を放っている。
これ以上はバッテリーに負担がかかって位置情報用のパルス信号すら発信できなくなる。
そう判断してドローンが自律的に機能制限をした。
349-448-688
機体コード2311020が飛行不能となってパルス信号もロストした地点と近い。
調査の必要有りと判断してドローンを7機探索に当たらせる。
鹵獲を確認したら機密保全の為に、周辺を無人攻撃機で焦土攻撃する。
有視界飛行でこちらから制御出来る様に衛星を移動させる。
入植最適地の選定作業が4日遅れてしまう。
ボーズの節約の為にも余計な動きは制限しなければならないが、今回は合理性でこの行動を選択する事にした。
『やはり、朝になるな』
閉じられた門の前で荷馬車を止めた。
『日の出前には門が開く。それまではゆっくりしよう』と門の前に座り込んだ。
護衛で付き添ってきた獣人達も壁に寄りかかって寝ている奴もいる。
『まぁ、仕方ないな』
うつらうつらしていると肩を叩かれた。
雇い主の御当主様だ。
「ご苦労だった。もうじき門が開く。ワシが居るから検問は受けずに済む。ワシの馬について来い。領主様のお目通りを得よう。おぉ、トルク達も間に合ったか。この度は良くやってくれた。お前の部下が上手く投網を投げてくれたから捕まえることができた。投網は切られた様だがワシがかけた【保護の術】がかかった袋からは逃げられまい。
こう考えるとワシも功労者だな。
だが賞金はお前たちで分けるがいい。そうだな、後で5枚金貨をそれぞれに授けよう。楽しみにすれば良い。 おお門が開くぞ。ワシの後に続け。獣人達も中で休んで行くが良い。飯と酒を出させよう」
歓声をあげる獣人達。
彼らは喜び勇んで領主館に向かう。
上空には7機のドローンが映像を探査船に送っていた。
探査船からカプセルが投下された。
【アレ】の街では日の出前だがメトルとメルルそしてルースまでが、起きて来ていて明ゆく空を見上げていた。
地平線から光の点が接近する。
当主が屋上に出たと聞いてゲーリンとメイルが着替えもそこそこに上がって来た。
光の点を指し示すルース。
メトルは黒石版を持って光の点を追いかけていた。
3人には解っていた。
あの光が今起こっている事の元凶で、更に今から何かが起こると。
光の点が止まった。
目を細めていると、赤く光りながらあの筒が落ちてくる。
だが、すぐに白い傘が3つ開いて白い筒は、ゆらゆらと揺れ出した。
朝日に照らされて誰もが目で追える様になった時に、その筒が又二つに分かれてその中から銀色の筒が落ちて来て羽を広げた。
その【銀の鳥】はすぐに空の星へ向けて上がって行ったが、螺旋を描きながら降りて来て真っ直ぐに【領主の街】へ向かって行った。
早朝であったが、領主は待ち焦がれていた様で、すぐに会う事を告げる。
前の様な事があってはならないから、またしても焼け跡が石畳に残る石蔵だった。
領主に会うなどという初めての事に緊張する男たち。
箱の蓋に手をかけて、今か今かと領主の入室を待つ当主。
そして領主が入って来てそれぞれの労を労う。
領主からも、それぞれに金貨5枚の追加を申し受けた。
有頂天になる面々。
『【合格】だ。良い領主になれる』
トルクは口には出さなかったが、心の中でそう思った。
箱から出され袋から【黒鳥】が見えた。
「これで忌々しいメトルとメルルを葬りされる。メトルが領主に相応しいなど言いやがった奴も一緒に始末してやる」
「私は遂にファルバン家の当主の座に戻れる」
(一度もその座に居たこともなかったのだが・・・・・)
「若い妻をもらうか、ルナは勿体なかったな」
それぞれの欲望が口をつく。
それに呼応する様に黒鳥の中央に赤い光が灯り、丁度、昇った朝日が室内を照らした。
炎が荒れ狂う。
一瞬にして【黒鳥】をターゲットにして無人攻撃機から打ち出されたミサイルが石蔵を粉砕し炎を噴き上げる。
無人攻撃機は上昇し四方の門の内側に焼夷弾を投下し、街全体にも焼夷弾を投下する。
更に残っていた3本のミサイルが多くの人が飛び出して来た兵の宿舎、商店街、そして治療院を吹き飛ばす。
旋回して戦果を確認する無人攻撃機。
どうせ、衛星軌道上には戻せないから、まだ焼けずにいた街の人口集中地点に超音速で真っ直ぐ降下させて周囲を瓦礫の山にした。
ドローンが周回して更に確認作業を続ける。
生命反応無し
ドローンーは太陽光発電用のパネルが展開された草原へ向かって行った。




