035 焼肉
聖地で、丘の村の女に金を渡して
「これまでのお礼だ、隣の村に羊を預けてくれていて助かった」
と礼を言いい、聖地の長にも礼を言って3人の世話をお願いし金と肉を渡した。
新鮮な肉は滅多に食べれない。
聖地の長は深く礼を返して3人の世話を引き受けた。
それから、【浜の村】に送って貰って、丘の村から頼まれた届け物と肉を渡した。
馬はサイスの村に、今後の為にと預かってもらった。
そこで船でサイスの村に送ってもらい今ここに居た。
肉屋の持つ【収納】は容量は大きいが、時間の停止に難がある。
それで、こうして羊肉を処分する事にしたのだった。
話を聞いたゲーリンは怒る。
「そこまでやりやがったか!」
ゲーリンは肉屋に自分とメイルの経歴を告げる。
メイルにはどの村の事かわかったので余計に怒りがおさまらない様子だった。
肉屋はゲーリンと聖地の長そして、ファルバン家の関係を聞き、今後も聖地と【アレ】の街との商売は続ける事を約束してくれた。
ファルバンの名を出せばサイスの高級塩も手に入りやすくなると教えて、土産として羊肉をファルバン家と警備隊に預かった。
「これで、収納はスッからです。損を覚悟でしたが儲けも出ました。それよりも、皆様との繋がりが出来たのが大きな収益です。又、お会いしましょう」
こう言って別れて来たので有る。
急ぎファルバン家へ帰り、当主へお目通りを願うゲーリン。
日は沈み、夜の闇が街を囲む。
だが、当主が詰所に入ってきた。
「聞いたか!」
「はい。調べましたところ、トルクの手下と術師が首斬りの櫓の上から投網を投げて捕まえた様です。
前当主の屋敷も彼らに与する術師も、更にこちら側と言っていた術師も領主の街に向かった様です。トルクは家族を置いて逃げています」
「襲撃が有るな」
「はい、周辺を探ってみましたら橋の手前の辺りで姿は見えませんが、馬のいななきが聞こえたそうです。又、焚き火の匂いもしています。
聖地の猫獣人達が、先程、奴らが潜んでいる場所を教えて来れました。地図上の青い点です」
「裏門側も調べてくれたか!ありがたい。やはり取り囲まれているな。
敵ながら素早いな。それで人数は?」
「それが思ったほどではないのです。全部で200人居ませんね。」
「術師が籠る街に200人。まぁ寝返った術師の腕を考えてもやはり少ないな。
何か策がある様だな」
「【合格】が居ますからね。それなりの策はあるでしょう。それから気になる噂があります」
「それは?」
「【領主の街】で今回とは別の【黒鳥】が落ちていて、それを領主の屋敷に持ち込んだそうです。
その後、領主館から光が放たれて、今までに嗅いだことのない煙が流れてきた事。
その場に例の息子と領主、術師が何人がいた事です。
更に中に入って掃除をさせられた奴隷が焼け焦げた死体と金属の臭い塊を見たらしいです。彼らは死体を運び出し流れ者の墓地に埋めたそうです。
黙っていろと言われたそうですが、身体に染み付いた嫌な臭いを説明する為に話したそうです。
更に、例の息子がファルバン家には【雷】が落ちると言っていたそうです」
「間違い無いな。
メルルが感じた【黒鳥】が機械だという事。
【黒石板】に伝承が残っているんだ。雷で機械が動くとね」
「それでは、奴らは【黒鳥】から『雷の魔道具』を取り出しファルバン家に使おうとしている。
そういう事ですか」
「まぁ、間違い無いだろう。『雷の魔道具』は今まで見つかっていないからな。
どんな威力になるのかわからない。だが仕掛けて来るとしても明後日以降だろう」
「そうですね。
今、馬を使って走らせても領主の街に着くのは明日の日の出前、それから魔道具を組んでも昼にできるかどうか。それから又こちらに来ても明後日の早朝が良いところでしょう。橋のところで迎え撃ちますか?」
「それをやると街が危険だ。民衆に被害が出てしまう」
「それならば明日、周囲にいる獣人を捕らえて、奴らが好きな倉庫に閉じ込めておきましょう。街にいる獣人も適当に罪状与えて捕まえます。領主の攻撃があるから保護すると言えば良いでしょう」
「そうだな・・・・・うん? 又行ったな」
「どうされました?」
「【黒鳥】が夕刻から【領主の街】に向かっている。今ので5つ目だな」
「探しているのですかね?」
「恐らくな。それにメルルが、【遠見の陣】を重ねがけして見てくれた」
「メルル様・・・・・」
「許してやれ。彼女も不安なのだ。そこで、遥か星の中に小さく光る船がこちらに近づいて来ているらしい。そして中に人の影の様な人形が動いていると言って倒れた。
何かが起こりそうだ。話は以上だが、ゲーリン、旨そうな物を喰ってきたのか?
匂いがするぞ、腹が減ってきた」
「そうですね。今日、いかがですか?無礼講の日にしませんか?外の鍛錬場で羊の肉を焼きましょう。野菜も用意させますよ。奥様も準備ができましたら起こしてください。
【蔵の街】の肉屋から、お礼代わりに当主様に頂いた物です。肉を食いながら訳を話します。
隊員も参加させますね。参加できない奴には残しておきます。香辛料が旨いんですよ。
当主様は良いですが、隊員にはエール1杯の制限かけます。
私は2杯呑みますけどね」
「それは、ずるいな!」
「きっと周りから明日聞かれますよ。香辛料の事」
その夜。
外の修練場は、次から次に焼かれる羊肉を楽しむファルバン家と警備隊の歓声に包まれた。
メルルを始め子供達も女官達も、初めてこうした食事を取って楽しんだ。
この光景がルースの1番楽しいファルバン家の思い出になって【黒石板】に残っていた。




