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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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032 罠

「盗賊は捕らえるか場合によっては殺しても構わない。だが、コイツらは盗賊では無い。領主の子飼いだ」

「何ですって!」

「領主様が何で盗賊行為を!」

「しかも、自分の街に入る商人を襲う?意味が解らん」

「だよな? だが、ここのところ襲われた商人がアレの街に逃げ込んで来たか?俺は少なくともこの半年の間は無かったと記憶している」

「確かに!」

「でも、もし領主の街の近くで襲われたら向こうに逃げ込みますよね?」

「でも、そう上手くいくか? 街の近くだと他の奴らの眼がある。盗賊は人目についたらお終いだ。もっとアレの街側。そうだな〜間にかかる橋の前後で仕掛けるな。橋に仲間を置いて挟み撃ちだ。でも、領主の街に向かう商人の荷車なら橋の手前の街道脇に何か隠れる場所があったかな?」

「良い考えだ。地図を出せ」

中央に降りて地図を置く為の机に地図を固定する。

この机は魔道具で専用の杖で地図に触れると、その下から灯りが透けて見える。

「今、話が出た橋がここだ」

ゲーリンが橋を指すと赤く点が照らされる。

「見ての通り確かに、草地でも無い小石だらけの河原の様な場所を突っ切る一本道だ」

ゲーリンは杖を道に沿って端まで動かした。線は青く光った。

「だがな、ここに周囲を見渡せる高台の様な物が出来ている様だ。もしかしたら何らかの魔道具で姿を隠しているかも知れないがな」

ゲーリンは逃げる際に見た、敵の焚き火が見えた位置に赤く印をつけた。

「魔道具!」

「偽装?でも、誰が? 元当主の息子・・・・・」

「可能性は高いな。他にもココとこの辺りかな?」

「隊長どうして知っているんですか?」

「それは、後ほど話す」

「それで、盗賊はそこに隠れているんですよね? ならば囲んでしまえば?」

「そんな魔道具を持った盗賊がいるのか? 領主に売った方が割が良いぞ。反撃喰らって怪我するか死んじまうんだぞ!」

「それは、確かに。」

「それでは何故?」

「敵の目的か? あくまで推測なんだがこちらが討伐に向かったら捨て駒を捕らえさせるか、殺させる。で、その事を『盗賊退治に為の密偵だった。臣下の一人だ!』と難癖がかかる。で、俺の首が飛ぶ算段だろう。で、その手が通じなかったら、この見えない砦がこちらに前進してくる」

「侵攻ですか?」

「可能性の話だ。それにこの盗賊騒動にはもう一つ狙いがある」

「もう一つ?」

「この前な、倉庫街に行ったんだが。空き倉庫や痛んだ倉庫が増えている。中には宿無しが入り込んでいる倉庫も有った」

「確かにトルク副官も巡回を強化する様に言われました。流れの獣人も増えています。悪さしないんで放っているんですが・・・・・それが何か?」

「何で倉庫が空いている?」

「それは、物が入って来ないか・・・・・!」

「分かっただろう? そうだ、この【アレ】の街は街道で隣りの他の領に繋がって居るが向こうの領に蔵の街が有る。【アレ】の先に行きたいがそに先に盗賊が出る。

当然、【アレ】の街は迂回されて領主の街の向こうに出て領主の街に入るか、その先に進む。知り合いの商人の話では結構な量の商品が【蔵の街】に留め置かれて出荷待ちだ。これもカンなんだがな前当主の隠居について行った奴がやり出した商売は?」

「船運だったと聞いています」

「それで、隠居先は?」

「確か、【領主の街】の向こうの港町【ジューア】!」

「話が繋がって来たか? 中々の策士がいる様だ。【合格】です。が口癖のな!」


今日の報告を当主にする際に立ち合わせる副官をトルクにしたのはゲーリンだった。

彼が前当主の息子に繋がる間者だと言うことは知っていた。

もし、彼を外して当主と密会すれば【耳】の魔道具が彼に伝える。

だから、ゲーリンは彼を当主の前で褒めてやりその自尊心をくすぐる。

だから、ある程度の情報を渡す事にした。

どうせ聖地と繋がっている事は知られている。

この冬、修行を口実に聖地に籠れば、否が応でも前当主の息子は領主と協調して策を講じるだろう。

奴は耳の魔道具を見つけた演技で破壊する。

しかも、自尊心でその仕込み方を明かしてくれた。

能力もだ。

聞いてはいたが見た事は無かった。

演技なのかも知れないが。

街に溢れる獣人達は暴動を起こす際の暴漢要員だろう?

そいつらを捕縛させない様に、隊員に巡回強化だけを指示している。

倉庫の中に、その時に使う魔道具や武器が隠されているのだろう。

私兵の顔見知りには悪いが、相手の手駒を減らす為に領主の街に帰ってもらおう。

倉庫からファルバンの屋敷の間に、すれ違った私兵は10人を超える。

疑心暗鬼になって更にその数が増えるだろう。

ここに集めて置いた面々は、ゲーリンが本当に信じられる奴等だった。

当主のサトリの能力を使わせて頂いた。


「領主は【ジューア】の街に館を移すつもりでいる。この街と今の領主の街はファルバン一門を経済と力で追い出す気だろう。当主様や一門の術師がいても数の力、特に獣人が街人を人質に取ったら街を出て行かざるを得なくなる。慎重に行動しろ。トルクの一味は(おだて)てあげておけばいい。以上!」


ゲーリンは自室に入り、白魔石の魔道具で聞いていたメトルに連絡をする。

館の中でしか使えないが、地下の遺跡で見つかった魔道具だ。


「これでよろしいですか?主人様。」

「そうだな。トルクはニヤニヤして出て行った。代わりに来た隊員に説教してな」

「聖地から出て猫の獣人が見えない砦を探って居ます。定期的に見てもらいますから位置を記録しておきます」

「よろしくな」

「さて、知恵比べだな。【不合格です】って言ってやらないとな」





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