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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
329/929

329 崩壊 10

ある日、男達はおかしな事に気がついた。

朝になれば、否応なしに襲って来る感覚。

性衝動による現象。

だが、聖地に篭る様になって、その【衝動】が無い気がする。

まぁ、異常な環境で死にそうな目にあったんだ。

無くなっても、おかしくは無い。

それに、こうして刺激を与えれば・・・・・ おかしい?

そんな、歳でも無い。

だけど、誰が言えよう。

・・・・・機能しない。

馬鹿にされるに決まっている。

だがとうとう、一人の男が仲間に打ち明けた。

相手も思い当たる事があり、兵士にも聞いてみた。

これで、全ての男が機能不全に陥っている事が解った。

後は原因だが、真っ先に疑われたのは【トルア】

アニマが、食事にその手の薬草を混ぜた事も考えたが、それ以上に自分達に厳しい。

兵士に、頼んで聞いてもらった。


「あぁ、今、その行動は危険だからな」

「ここから出て行く時には、皆んな元に戻してやる」

「なんで、そんな事を・・・・・」

「解っているだろう。誰が相手をするんだ?

関係が無い女達と、場合によっては子供達だ。

それは、どの男にも言える事だから、私も含めて全ての男に術をかけた。

第一、そんな行動をしてみろ、一気にこの生活が壊れるぞ。

【魔素】があって妊娠しにくいのかも知れないが、暴力で従わせたりしたら死者が出るぞ。

女を傷つけるな! 子供もそうだ!

今は、協力して生き抜く事を考えろ!」

「しかし何も、私達まで・・・・・」

「私達もだ! 

これでお前達だけ【男】であってみろ!何をされるかわからないだろうが!

安心しろ! 

時が経てば、皆元に戻る。

ただ言っておくが、俺を殺すとどうなるかわからんぞ!」

皆の前で、宣言した。


人間の3大欲求『食欲』、『睡眠欲』そして『性欲』。

その一つを封じられた。

酒を入れれば、それも食欲、睡眠欲にも繋がるかもしれないが・・・・・

これを封じられた。


「女達は、どうなんだ!」

「誰が、あんた達の相手なんかしたいと、思うわけがないだろう!」

彼方此方から、大きな声が上がる。

「妊娠しないんだぞ!」

「しない訳じゃ無いんだ!しにくいと言うだけだ!」

「お前の子供なんて出来たら自殺してやる!死んだ方がマシだ!」

「何を!」

男と女の間で、言い合いになった。

「いい加減にしろ!

どっちにしろ!どっちも、そういった欲求は殺してある」

女達も、そう言われて初めて気付いた。

そう言えば・・・・・


アニマは、ほくそ笑んだ。

この前、話しておいて正解だった。

睨みつけて来るフルク。

ざまあみろ!


兵士の一人が、呆れ返って近寄って来た。

「いつかは、誰かが女を押し倒すんじゃ無いかと心配してたんですよ。 

私も、おかしいな?とは思っていたんですがね。

もし、妻が生きていたら潔白を堂々と示せます。

私は、他の女に手を出さないと約束して【名変え】を受け入れてもらいましたからね」

「・・・・・ 嫌なんだよ。

女が、男に怯える姿を見るのは・・・・・

母も、囲われものだったが無理矢理だった。

私の妻になった女も、男に狙われて私が匿った。

私の事を愛してはくれていたとは思うが、逃げる為だったかも、と思う事がある」

「それはいけませんよ。

あなたが愛してあげなかったら、奥様は誰も愛せなくなります」

「そうだな、今頃こっちを見下ろして怒っているだろうな」


こうして女達と子供達の身を守り、いい手だと思っていたがやはり恨みを買っていた。

一人の男が、トルアを睨みつけていた。

囚人として鉱山で働いて来て、女に触れる事が無かった。

それが、目の前に若い女しかも、ここまで逃げてこれたのだ。

健康で引き締まった体をしている。

それなのに、愚別した目で見やがって!

娑婆にいた頃には、そんな女を狙うのが好きだった!

屈服させておいて、何度も何度も・・・・・

それなのに、不能(インポ)だと!

ふざけるな!

俺は許さね〜

そして、男が狙ったのは、いつもあのトルアにくっついているユージった。

絶対、アイツを苦しめてやる。

そんな事をすれば、命がいくつあっても足り無いと言うのに男は機会を伺った。


ガキン! 

男がハンマーで、鉄杭を力を入れて叩く。

前から声に出して

『通路に出っ張った岩を削る』と言い張って何本もの鉄の杭を打ち込んで岩を削り落とそうとしていた。

確かに、囚人達の寝床の邪魔で兵士達が、囚人を監視する時に目を遮っていた。

鉱山でも真面目でこういった作業が上手い事を知っていたので、足枷をつけた上で許可をした。


ユージがアニと一緒に、水で溶いた小麦粉を焼いて板にした物に楓の樹液を塗って巻いてもらった[おやつ]を片手に外に出ようとしている。

今だ! 筒に入ったままの鉄杭を二人に向かってぶっ叩く!

鉱山で何度もやった遊びだ。

途中で筒から鉄杭が飛び出して、人の身体程の範囲に広がって藁に刺さる。

藁がガキに変わっただけだ。

当たりゃめっけものどうせ、アイツの仲間のガキ二人だ、

アニの方に当たれば、仲違いするだろうしユージの方なら大当たりだ! 

『ガキン!』

エッ!まとめてぶっ叩いだ六本の杭が、二人から弾き飛ばされて天上に当たって落ちて来た。

頭に血が昇っていた男は、もう一つ鉄杭が入った筒を岩に置き狙う!

ハンマーを持ち上げようとした時に男は気付いた。

【俺は死ぬ】


ユージとアニの、目と指がコッチを向いている。

振り上げたハンマーを持ち換えて下に向ける。

訝しむ周りの男達。

少女達には、アニマとフルクが駆け寄って来る。

あぁ、彼らが【遮蔽】で弾いたのか。

怪我をせずに良かったと、胸を撫で下ろす兵士。

「どうした?」

兵士が聞きながら近寄ろうとすると、突然大声をあげてハンマーを振り上げ、そして自分の頭を殴る。

余りの事に誰もが手を出さないでいた。

自分を、自分が振り上げたハンマーで殴る。 

あり得ない行動に誰もが固まってしまう。

崩れ落ちる男。

誰が見ても、もう助からない。

【治癒】が使える女が居たが、顔を横に振って『もう手遅れだ』と言った。


外から、トルアが入って来た。

「アンタがやったのか?」

フルクが聞いてきた。

「いや、誰がやったわけでも無い。

【人形の術】でも、これ程の事は命令できない。

死に至る行動は指示できても、自分を痛めつけろと言う命令は効かないんだ」

「それじゃ〜」

「【狂った】としか言えんな」

「奴の罪状は解るか?」

兵士に聞いてみると婦女暴行と殺人、強盗が複数回。

「なぜ、それで生きている? 死刑では無いのか?」

「奴は、金持ちの息子だったよ。

本当だったら、今頃、島から出されてイーグス辺りで、次の女探していたろうさ」

「でも間に合って良かった。アニマの【遮蔽】が届いたんだな」

「えぇ、咄嗟だったから届いたのよきっと・・・・・」

(そんな訳が、ある訳ない!私が気付いて時には、もう、天井に杭が当たって落ちて来る時だったもの)


呆然としている二人を抱きしめると、二人とも体温が高い。

まさか、この子達が・・・・・

魔素を多く使う術を使った場合。

体が熱くなる場合がある。

更に過剰に使いすぎると、逆に体温が下がり意識を無くす。

術を使った様だが何の術使ったのか、思い当たるのは【遮蔽】か、その上の【盾】と言われる【防御の術】

それならば、この杭を弾き飛ばす事ができる。

まさか、【人形使い】を使ったのか?

トルアを見ると、汗をかいている。

やはり、トルアもそう思っている。



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