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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
308/928

308 間話 龍眼

数編、間話が続きます。

時系列が、行き来しますがご了承下さい。

朱雀の父が【龍眼】でない理由。

この世に存在する【龍眼】は二人まで。

三人目が出来たら、一番弱い【サトリの能力】の持ち主は【人】となる。

復活は無い。


祖父 【崇】、そして朱雀を棄てた男【魁星】

魁星が、妻を娶り朱雀を身籠るまでは、この二人が【龍眼】を持っていた。

萩月一門の持ち回りで、妻となる娘が選ばれ魁星と婚姻が結ばれた。

子を成す為だけの結婚。


朱雀の兄は【龍眼】では無かった。

それゆえ、次の子供をと迫られる。

父、【崇】が存命なうちに、己を越える龍眼の継承者さえ産まれれば己は【人】になれる。

魁星は、嫌がる妻に妊娠を強要し朱雀を孕らさせる。

やがて大きくなる妻の腹部。

『解る。この腹の子は龍だ!【龍眼】持ちだ!』

この時から魁星は【真力】を、その身に蓄え身を守る為に、崇が回して来る【大勾玉】を手にする事無く、妻のベッドの下に置いた。

【龍眼】持ちは、【真力】を吸収する。

魁星は妻に宿った赤児が、【大勾玉】から【真力】を吸う事に狂喜した。

己は【真力】への飢えを堪え、朱雀の力が己を上回る事を願う。

その成果か、朱雀が産まれる前には、魁星の眼は人の眼になり【サトリ】の力も失せて行った。


消えていく。

【サトリ】の力が消えていく。

夜でも目を隠す為に、サングラスを外さぬ夫。

ここに嫁してからは、外に出る事も許されない。

人に会う事も、ままならない。

己の身の不幸を呪う妻。

そんな妻の声が、聞こえなくなっていく。

世話をする従者の不平、忌避の声。

それも消えていく。

やっと解放された。

常に魁星の頭の中を、駆け巡る他人の思考と嫌悪の声。

それが消えていく。

こうして魁星は【龍人】では無く【人】となった。

朱雀の誕生後、すぐさま朱雀は崇に渡された。


【龍眼】持ちで無くなった魁星に【大勾玉】が回ってくる事は無くなった。

だが、幽閉は続く。

魁星に、男としての能力がある限り【崇】、【朱雀】の万が一に備えて【籠】に封じる。

勢い、長男も籠の中だ。

ある日、朱雀が風呂に一人で入っていると兄がやって来た。

滅多に会う事もない兄。

朱雀は、嬉しかった。

だが、入浴中の朱雀の頭を、兄は湯に押し付けた。

それは、明らかに殺意を持った行動、狂気の果て。

だが、朱雀は苦しむ事もなく生きていた。

遂に諦めて手を離す兄。

『なんで死なないんだよ!この化け物!』

それ以来、朱雀は兄とは目も合わせない。


もし、朱雀が死ぬ様な事が有れば『幽閉生活』は、更に続いただろうに・・・・・

だが、ある日出入りしていた萩月常義が、【真力】と【月夜石】の復活を奏上しに来た。

魁星は、この頃では父崇は元より息子の朱雀にすら逢いに来た事は無かった。

従者を通して、その事を知った。

【真力】と【月夜石】の復活。

この事は、陰陽師の復活と共に【龍眼持ち】が保護される必要が無くなった事を表していた。

陰陽師を取りまとめる一族となり、自らの身は陰陽師と自らの力で守れる。

萩月と手の者として使っていた【室】の一族を使い、京都御所へ移り朱雀と二人で東京を離れる事を進める崇。


家族は、祖父【崇】と我が子【朱雀】との縁を切った。

英国に渡り、新たな姓を名乗る。

彼らの素性を隠す為の、新しい戸籍と数世代は働かなくても良い程の資産を渡されている。

二度と日本には帰らない事。

萩月との縁を切る事。

そして何より、その出自を他言せず【絶縁】する事。

崇の妻も、魁星の妻も、陰陽師である事を辞める。

月夜石の勾玉を返す様に告げる【殿守:卜部(うらべ)】に女達は【勾玉】を投げ返して来た。

こうして、家族は別れた。


京都御所全体にかける壮大な【陣】を【天上書庫】で見つけ出し、常義と友嗣を始めとする萩月一門で検証して更に強化する。

月夜石よりも、防御力が高い【魔石】を使い、新たな【陣】を作り上げた。

これで、上羽家が使う【奥】には、許された者しか入れない。

あの【呪糸蟲】持ちの様に、この世に在らざる者、悪意を抱く者は、【サトリ】の力で選別され、誘い込まれて始末され、その後【転送】で排除される。

出入り口は、館林と岩屋神社の陣。

寄宿舎の陣は、崇と朱雀と恋歌しか使えない。


崇の祖父も父も籠の鳥であった事に苦しんで、自ら命を絶とうとした事もある。

崇の首にも【躊躇い傷】が残っていた。

『死ねないんだよ。

すぐに傷が塞がる、刃物で突いても途中で止まってしまう。

心臓を突いた事もあるが、折れてしまう。心臓を潰しても【龍】は死なんよ。

アシになってしまった我らにはその様な力は無かったが、生命力は強い。

でなけでば、我が身の中に子宮ではない部分から成長を始める子供を宿せる訳がない。

ミオラが治癒師で刀捌きの熟練者だったから、ダイアの手術は出来たのじゃ。

他の者では鱗の一枚も傷付けられなかったじゃろうて』

と、ポアーザの二人からも言われた。


『龍は血管自体が筋肉の様に動き、心臓を必要とせずに血液を全身に送れる。

血液は酸素を運ぶのでは無く【真力】、【魔素】を体に循環させる。

肺はブレスを吐く為の物じゃった。

呼吸は、その名残じゃ。

試しに息を止めてみよ。

苦しくはならない。

呼吸はブレスを吐く準備を、常にするだけの運動じゃ。

息を止めても、胸がむず痒くなるだけじゃ』


崇は、それで合点が入った。

事実その事には覚えがある。

もちろん、声には出さなかったが朱雀にも覚えがあった。

恋歌が手を離し、背後から抱きしめてくれた。

正面に回ったらキスをしてしまう。


崇と朱雀の健康診断。

朱雀は最初、針が刺さらなかった。

これを見た崇が、朱雀に言い聞かせる。

『針を刺される瞬間に、受け入れるように自分に言い聞かせなさい』

何度か試した後に、朱雀の手を恋歌が取り歌を歌う。

子守唄。

朱雀が、好きな子守唄。

歌わずとも、恋歌と手を繋いでいると恋歌から、この歌が聴こえてくる。

恋歌が、一人寝の寂しさを紛らわすために自作した子守唄。

あの、岩屋神社で二人で眠っていた時は、この歌を思い浮かべて朱雀と眠っていたのだ。

『大丈夫。痛く無いよ』

と言う恋歌の声が、朱雀の身体から力を抜いた。

採血の針が血管に通り、痛みも無く採血が終わった。

確かに痛く無かった。

針を抜いた痕も消えている。


「僕、本当に人間なのかな?」

「朱雀は朱雀。

お祖父様だって、子供が作れて朱雀に繋がっているんだもの大丈夫よ」

恋歌と繋いだ手が、朱雀の不安と孤独を吹き飛ばしてくれた。


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