表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
268/928

268 オーストラリア

長野での観測では、やはり艦隊は発見出来ずに終わった。

だが成果はあった。

解像度は落ちるが【遠見・天測の陣】を書き込んだ魔石板を発動できた。

今は、【遠見の陣】を五層にして【天測の陣】を重ねている。

【天測の陣】は【遠見の陣】と違い、重ねても解像度は上がらなかった。

やはり、どちらも術師が術を発動した結果には敵わない。

今も、全天に向かって昼夜構わず観測を続けさせている。


アーバインで使った天体望遠鏡と、この【遠見・天測の陣】だけを持っていけば、それなりに効果はでるのであろうが、予定通り昴と恋歌もオーストラリアに同行させる事にした。


羽田が、オーストラリアへの渡航の手続きを済ませていた。

オーストラリアに行くなら、と藤田夫妻が真奈美と一緒に行く事になる。

恋歌の保護者として同伴も必要だし、なんと言っても彼らは写真家としてオーストラリアでの活動の経験が豊富だ。

天体望遠鏡や機材は、源蔵が【収納】に収めて持参する。

送るより安全だ。


一行は友嗣、沙羅、青木忍、青木シューラ、館林源蔵、木場昴、ミレイ、藤田一家 それに羽田と九鬼から門人が付いた。

沙羅は子供達の様子を見に来たのと、彼女も岩屋神社で居住を開始する為にやってきた。


門人の彼らは、交渉役と医療スタッフを兼ねていて、特に砂漠地帯の現地での活動を気にしていた。

羽田が、藤田夫妻の意見を入れて砂漠と言っても、近くに街がある場所で治安が良いエリアにベースキャンプを張る事にした。

空港のレンタカー会社と交渉しキャンピングカーを、発電機と合わせて5台レンタルして、ジープも一台借り出した。

これらに分乗して、藤田夫妻が薦めた観測地に向かう。


遠くに、街の明かり見えている砂漠の台地。

台地の下には自然に抉れた(ひさし)が出ていて、夏でも涼しい風が吹く最高のロケーションだった。

藤田夫婦の写真家としての名をあげた作品の舞台だ。

ここには、二人の娘も連れて来たいと思っていた。

友嗣が【探索】をかけるが、小動物がいくらか居るだけで安全が確保できそうな場所だ。

周囲に【遮蔽】を展開して、姿を隠し準備にかかる。

観測準備を済ませて、サラン達が待つ岩場の下に戻る。

これから、夕食を済ませて初日の観測だ。


「せっかくオーストラリアに来たのに、コアラもグレートバリアリーフも無しなの?」

「仕方無いさ。青木さんも聖地に来て貰っても、聖地と浜とウルマだけだよ」

「彼は良いわよ。星が見れれば良いしシューラもお嫁さんに出来て幸せよ。JAXAの部下が泣いていたじゃない」

「でも、私も新婚旅行が星と睨めっこで、昼は寝てるコウモリ生活になると思っていませんでした!」

シューラが出発前に空港で『新婚旅行とは?』とパンフレットで調べて忍に食い付いた!


「望遠鏡の設置終わりました。電力オーストラリアって電圧240Vですよね。変換器積んできました?」

トランシーバーで、昴が連絡を入れて来る。

「それは、源蔵に聞いてくれ!」

友嗣が笑いを堪えて、トランシーバーに向かって返事をした。

発電機を、それぞれのキャンピングカーに接続した門人達が不安な顔をした。

(えっ、自動追尾装置やパソコンの電源は・・・・・)

「あぁ、魔石での発電に成功したんだ。

【青魔石】の魔素を【白魔石】に移すように回路を組んだら出力が安定したんだ。

【白魔石】からだけでは上手くいかなかったのにね。不思議だよ」

源蔵が、小さな鞄程の発電ユニットを【収納】から取り出して昴を手伝っているミレイに渡す。

日本用のコンセントが付いていた。


次第に周囲に集まって来ている工作員の目を、この発電装置から逸らす為に発電機を借りてきてキャンピングカーに電力を供給している。

「エアコンが無いと眠れないからね」

季節は二月、南半球は夏だ。

しかも、砂漠。

日陰で夜は寒い程だが、昼間寝る生活だ。

エアコン無しではキツすぎる。l


だが、このキャンピングカー中の温度管理も赤魔石を使った魔道具で済ませている。


上空を何度かプロペラ機や、ヘリコプターが行き来したが遮蔽で囲まれた内部は見えず。

赤外線の事を知っている友嗣が、対策を忘れる事はない。

その遥か上空の監視衛星の存在も検討した上で、この場所にしたのだ軌道修正をした場合も考えて有る。

貴重な監視衛星の燃料を、軌道変更の為に使うかは各国の思惑が決める事だ。

キャンプ地の周囲を、友嗣と源蔵の透明な【式】が周回している。

やはり、工作員がうろついている。

暑い中、岩陰に蛸壺を掘って少しでも日差しを避けようとしている様だ。

ここまで運ばれた航空機でも、指紋や髪の毛を採取しようとしていた。

友嗣は木場から『特に聖地出身者の情報は渡すな』と言われていたので、特に髪の毛の類は回収しておいた。

排泄物も【転送】で海に放り出しておく。

キャンピングカーの中でも、その手の類は丸ごと廃棄する。

徹底したやり方に、サランが呆れていた。

「でも、DNAなんかは調べて差が無い事は解ったのでしょう?」

「今、解っていないだけかも知れないさ。

ここに居るアーバイン出身者は、特に術師として高位の部類だ。

秘密は守り通したい。

話してはいなかったが私達が関わっている場所は、全て【式】で監視しているんだよ。

【室】がね。しっかりしている。お風呂から上がったら徹底的には清掃してくれているよ」

「機密情報満載の身体なのね」

「まぁ、どんなにやったところで、いずれは入手するだろうけど妨害はし続けるさ」

「だから、ホテルやロッジでは無くキャンピングカーなのね」

「そういう事」

実際、食糧の調達も友嗣と源蔵が【転移】で行なっている。

だから、この近くの街には土地勘も出来ていた。

だが、認識障害をかけていても、多くの工作員がスーパーに配置されている。

企業や財閥系から依頼されたフリーもいたが、アッサリとプロに追い出されていた。

無理も無い、砂漠のど真ん中だ。

見かけない顔は、怪しまれる。


こうして、観測を続けて

遂に、南十字星の一番明るい星。

一等星のαの光の影の中に、小さな点の数々を見つけ出した。

どれくらい離れているかは、解らないが【観測対象】を遂に見つけ出した。

大きく息を吸い込む【青木 忍】の姿を見て、オーストリア観光が出来るとホッとしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ