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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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024 黒石板

ルースが何も無い黒石板に魔素を送り込む。

浮き上がる古代数字の列。

「ここからだな」

ルースが指で数字の列を押して行き、最後に黒石板の手前の部分を押すと・・・・・

現れて来たのはルースの若い頃の映像で膝をついていた。

「見た事がある部屋ですね」

「間違えたな。まぁ良い。これは聖地にある父が修行をした当時に過ごしていた部屋だ。

ほら、真ん中の通路の奥だ」

「でも、あの辺りの住居跡は【遮蔽】がかかっていて開けられませんよ」

「そうだったな。この部屋も父の【遮蔽】がかかっていたがこうして私は入れたのさ。

父がそういった設定にしていたのだろう。

聖地で住んでいた頃は修行の後には、この部屋で過ごした。

解ってくれ。12歳まで街で過ごしたのだ。・・・・・合わなくてな。

聖地の生活や子供たちの中で孤立していた。

だから15歳になった時にゲーリンに頼んで外に出るために荷車引きにして貰った。

直ぐだったよ。ライラと一緒になって村長を将来引き受ける様に言われたのは。

だが、先日の義母の話では最初っから知っていたのだな」

「お父様。友達居なかったのね。イバと一緒」

「・・・・・じゃが、それなりに仲間はいた。

街との行商人になったり商家の嫁になったりしていたよ。だが、【アレ】の街で死んだ」

「【アレ】の街はどうなんですか? 私は聖地から出た事なくってわからないんですが」

「街は一度目は領主の街が焼かれた時に少し被害を受けた。

・・・・・ここで話すと長くなるし皆にも知ってもらおう。家に帰るぞ。だがその前に」

ルースが、指で別の数字を押す。

現れたのは産まれたばかりのシューラの姿だった。


『他の映像を見たい』と駄々をこねるシューラを宥めて、

土の術で砂を【転移陣】にかけて筵を戻して、更に遮蔽の術をイバにしか開けられない様にして岩屋を後にする。


宴会を開いた部屋に、再び前の村長夫妻と家族そして明日、先に聖地に向けて出立するゲーリンとメイルを呼び寄せ夕食後に【黒石板】で数々の映像を見せた。

ルースは、映像を記録する際には白石板に見せていたので映像を撮られる方は気にせずに行動していた。

子供たちの赤ん坊の映像や、ライラが『名変えの儀式』で緊張して居る姿。

それを見守る夫婦。

沖の岩場が海の底にあった時と、次第に大きく成長させた映像。

造船所の建築途中で、屋根の上で一休みする男たち。

1隻目の船を海上に送り出して喜ぶ村人。

嵐でも、小さく揺れるだけの入江の波。

加工場の建設風景に、初めての干し魚の集荷。

浜に訪れたゲーリンやメイル。

浜を駆け回る子供たち。

中にはルクアやミクマと思われる子供の姿が有った。

浜の村に、荷馬車が入る。

荷馬車から飛び降りて、駆け寄って来たタルムに抱きつき頬を重ねる少女。

空を飛ぶヨルムと裸にされるタルム。

そして、【銀の鳥】に襲われた馬車と亡くなった少女。

(本当に綺麗な顔で亡くなったんだな)

「すまない。間違った」

「良いのよルイス。起こった事には間違いないわ」

ライラが、涙を流しながら呟く。

上空を通過する【黒い鳥】と【銀の鳥】の影。

(偽装の術で半透明だからな。いや、砂の色を濃くしたんだな)

成長する子供たち。

去って行く前の村長夫妻。

夫妻が手を握り合う。

養魚場の網入れ、色んな場面が続く。


そして、荷車の後ろを押してくるイバの姿。

いくつもの姿が残っていた。

彼を見つめる母と娘。

娘の頬は心なしか赤い。

「いつの間に記録していたの!」

「驚くわね」

その後も多くのイバと子供達の姿を見ることができた。

最後に現れたのは巨大な【転移陣】

食い入る様に見つめるルクア。

「ルクア。後で実際に見せてやるし、今回の聖地への旅の最中に見る事にもなる。

皆には黙っている様に。約束してくれ」

「・・・・・もちろんです。こんなの・・・話せる訳が無い。」

他にも多くの映像が有るが、いくつかは見せる前に飛ばして行く。

一瞬、少女と女の姿が有ったが、ライラと目を交わしたルースが先へ進む。


「さて、今後の為にも私とゲーリン、メイルそして私の両親の事を話しておこう。

いくつかは、このゲーリンとメイルにも話してもらう」



父『メトル・ファルバン』は元は『メトル・ルクル』という名で、ファルバン家の縁戚の出であった。

幼い頃よりファルバン家の門人となり、先代の当主に可愛がられて成長し、先代の当主は元より門人の中でも卓越した存在になっていた。

先代は実直な性格で実子の子らに、その才能がない事と人心も集められる性格で無い事を憂い、

『メトル・ファルバン』と名前を変えさせ、彼の後継として当主の証の【黒石板】を彼に託した。

その際に異議を唱えた実子達には【収納】へ収納する様に試練を与えてみたが、皆、一枚の【黒石板】も収納することができなかった。

こうして先代は隠居して【アレ】の街を去り、他の街へ住まいを移した。

彼に従った門人と息子の一人は前当主に帯同した。


母、『メルル・ファルバン』は、領主の長女で正妻の娘であった。

正妻には他に子がおらず、妾に男児が二人いた。

そうこうするうちに、領主が病に臥せ、後継の問題が勃発する。


正妻の子で優れた『サトリ』のメルル。

彼女は聡明で農業も商業にも知見が広く、領民から多くの相談を受けて対処していた。

妾の子の二人の男児は粗暴で、『紅蓮隊』を率いては領内で悪さをする。

こうなると領民や家臣はメルルを推すが、やはり男児継承と言う伝統を振りかざす家臣もいた。

妾の一族の暗躍も有り暗殺されたとの疑いもあるが、メルルの母が亡くなる。

メルルは、明日をも知れない苦境に立つが、サトリの能力を使って危機を乗り越えていた。

この時、彼女の傍らで彼女を守ったのが、領主館の警護主任のゲーリンと入隊したてのメイルだった。

それでも命の危険は迫る。

そこに手を差し伸べたのがメトル・ファルバンであった。

彼は領主の座を狙う長男に面会し、メルルを降嫁させてファルバン家に嫁がせれば、

世間の醜聞も抑えられて住まう街も違うから見比べられる事もなくなる。

そちらの都合が良かろうと交渉を持ちかけた。

実際に、この時領主は昏睡状態と発表されており、メルルを何とかしなければ領主の目が無くなりかねなかった。

長兄はメルルを降嫁させ、彼女を奉じる家臣を分断して【アレ】の街に放逐した。


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