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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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023 浜の岩屋

岩屋には魔道具で【遮蔽】がかけられていたが、魔道具を操作して遮蔽を切る。

岩屋の中にはルクアが作った灯りの魔道具も壁に嵌め込んであって【遮蔽】が切られると同時に点くようにされていた。

これは先日、教えた【知らせの陣】を早速組み込んだ魔道具だ。

「ルクアの奴、仕事が早いな」

「あの子は魔道具バカだからね。今夜にはうちの灯りの魔道具がコレに代わっているわ。賭けてもいいわよ」

「何を賭けるんだ?」

「・・・・・私の唇」

「・・・・・どっちが出ても、やる事一緒じゃないか?

それは後だ。きっと後戻りできなくなる。

そしたら、名変えの儀式が出来ない。師匠に怒られる」

「えへへ、そう思ってくれるんだ。嬉しいな」

「そう言う事。ここだな。前の荷車引きが荷物を置いたのは」

岩屋の奥に砂地があって、そこに(むしろ)が引いてあった。

筵をはいで砂をゆっくり退けて行く。

肘の深さほどのところで、それは姿を現した。

「やはりな」

指の大きさほどの青魔石がギッシリ並べられて、4つの同心円と紋様が書かれていた。

ただ違うのは一番外側には紋様が無く、【転送】を表す紋様と一番内側に紋様が有った。

透明な板で覆われている様な【保護の術】がかかった、直径が人の丈二つ分の大きな陣だった。

シューラも、あまりの事に声が出ない。

「シューラ。お父さんを呼んできてくれ。ルクアにはまだ伝えなくて良い。

先に・・・・・師匠に見せておく。コレは大変な発見だ」

「解った。どうしよう? 遮蔽は? かけて出ようか?」

「そうだな。内側から遮蔽をかけておく。着いたら声をかけてくれ。そうしたら開ける」

「サトリの力で呼び掛けるわ。周りから不審がられたら大変だから」

「そうだな。コレだけの青魔石だ。だけど【保護】がかけてあるから大丈夫だろうが万が一が有る。頼んだぞ」

「解ったわ。でも、流石、私の旦那様ね。こんなに特大の『嫁取り石』を見つけるなんて、

お父様もビックリでしょうね」

シューラが出て行って、イバは内側から【遮蔽】の魔道具をかけた。


改めて【陣】を観察する。

青魔石には、僅かだが魔素が溜まっている。

この【陣】の下から【魔素】が湧き出して居るんだろうな。

何かの術で、それが絞られている。

そんなところか。

【収納】から、白石板と普通の墨と筆を使って記録を始めた。

こうして描いた物を父が残した魔道具でなぞると魔道具が記憶してくれていた。

こうして保存した陣は、数千にも上る。

陣の能力や結果も併せて記録するとそれも紐付けされている。

イバは、この魔道具についている青魔石だけは魔素の供給を忘れないでいた。

消えてしまったら、とんでもない事になりそうな気がしている。

やはり、真ん中の紋様は今までの【転送陣】と同じであった。

だが、内側の陣は簡単な記号になっていた。

昔の遺跡から出た数字の様にも見える。

イバの記憶では【379】に見える。

『あなた。私よ。お父様を連れて来たわ』

『もう、あなた呼びか!呆れて物が言えんわ。

ライラも、聖地から帰ったら名変えの儀式をさせると言って聞く耳持たないが、もう解った!好きにしろ』

『開けますよ。師匠』

イバが招き入れると、頭から湯気がで出そうなルースがいた。

「で、どれが・・・・・新発見なんだ・・・・・」

ルースも声を失っていた。


巨大な転送陣。

しかも、青魔石で高位の保護の術がかかっている。

「シューラ!【遮蔽】をしろ。イバ、内側から光が漏れない様にしろ!」

興奮を抑えて、ルースは静かに二人に指示をした。

イバは、言われた通りに術を展開した。

「コレは【転移陣】だな。一番内側に紋様がある。しかし、エラく簡単な紋様だな?」

「師匠。この角度から見ると古代遺跡で見つかった数字の紋様に似ていませんか?」

「確かにな。【37・・・・・9】確かに数字だな。数字の周囲の紋様は調べる必要があるな」

「推測ですが、コレと同じ物が聖地の岩屋にあると思います。

前の荷車引きが、荷物を運び忘れた件がありましたよね?」

「・・・・・そういう事か。なるほどなそれならば筋が通る。

今度、聖地に行く際に確かめてみるか」

「向こうにも魔素が湧き出て居るんでしょうね。

それが転移出来る量に達してここへ荷を送った。

【転送陣】とは違い、受け側も魔素が必要だから、ここの魔素も使われて空になった。そして又、溜まり始めた」

「それで間違い無いだろう。しかし、【転送陣】を見つけて【転移陣】まで見つけるとは、

つくづく『陣』に愛されておるの」

「本当よ。これだけ、あっちこっちで【陣】に取り憑かれている様だと、

陣に連れ去られる様で心配だわ。くれぐれも自分で試さないでね。ルクアに行かせてね」

「コレコレ怖い事を言うでは無い。

さて一度コレは埋め戻しておこうか。その前に黒石板の能力を見せてやる」

ルースは、黒石板を【収納】から取り出した。

「この一枚は記録用の黒石板。これを対象に向けて魔素をかければ・・・・・」

黒石板に転移陣が映し出された。

線での映像も書き加えてあり、古代遺跡の数字で大きさが示されていて傾けると映像も姿を変えた。

数値も変わる。

「念の為に他の場所から記録しておくか・・・・・」

ルースがさまざまな位置から黒石板に記憶させて行った。

全てに数値が書き込まれている。

「私の魔道具に似ていますね」

「そうだろうな。ファルバン家は古代遺跡の上に建てられていてな。

そこから見つかった物だ。お前の魔道具も私の父が譲った物だろう。

ワシが産まれて居なかったら、彼がファルバンの当主になっていたかもしれない」


「ファルバンの屋敷の地下に広がる空間には古代の遺跡と魔素が湧き出る泉もあるのだ。

この黒石板は全部で8枚。

記録用とその内容を保管する黒石板がコレを入れて2枚。

更に記録を保存・呼び出すための黒石板が2枚。

更に3枚の黒石板はいろんな伝承を中に覚えて居る様だが、

まだ魔素量が足らないのか壊れて居るのか1枚しか呼び出せない。

もう1枚は何なのかすらわかっていない。

取り出すのも苦労する。

イバが、成長し跡を継ぐ様になったらコレらは全てお前に渡す。

それでわしの後継者になる。

ルクアではどんなに成長しても1枚が精一杯だろう」

先ずは記録用の黒石板を収納できる様にしろ。

それにな、こいつにはこういうことができる。

ルースがイタズラをする子供の様な顔をして黒石板に魔素を送り込む・・・・・


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