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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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246 リーファの出産

聖地でも陰陽師の中でも、物体をそのまま移動させる、回転させる等物体に働きかける動作は【転送】、【転移】以外には使える者が少ない。

物体を直接動かす事が出来ないのだ。

だから、若菜が少しの距離なら出来る【引き寄せ】の術を、友嗣がなんとか習得しようとしているが、箸一本も出来ていないのが実情だ。

「友嗣さんなら、すぐに出来ると思ったのになあ〜」

そう言いながら、クッキーを引き寄せる若菜を、呆れて見ながら、それを空中で取り上げるルナがいた。

「サラン姉さんも、止めなきゃダメでしょう?」

最も、クッキーのカゴを、サランが抱き抱える様にして食べているのが問題なのだが。


三人で、ひとつのベッドに寝る事にしたのだ。

もちろん、こう言う時には居ないイバとミオラが槍玉に上がる。

魔石板に移してもらった、黒石板の映像を見て聖地とウルマが見舞われた災難を見せてもらう。

イバ(≡友嗣)の両親サキアとマウアを改めて見ると、ふたりとも、やはりため息が出るほど美しかった。

「綺麗だよね〜」

「そうね。髪の一本一本が輝いて見えるわ」

「そうじゃのう!我が見た中でも」ここまで美しい女性は中々見たことが無い」

「もう巴さん、コッソリ【転移】して来て」

「私も子供の頃にイバに会った時にお母様を会ったけど、子供ができたら、お母さんに似てほしいなと思っていたのにね〜」

「見事に、二人とも、サラン姉さんに似ているわよね?」

「ルナだって、そうじゃない!」

「でも、ミーフォーの子供ルイはイバそっくりよね。」

「ですよね。リルさんのところで預かって貰っているけど、産まれてすぐに、イバを思い出す顔になったわ」

「・・・・・今、友嗣さん。美耶さんと一緒ですよね」

「一条の事が片付くまで、子供は作らないって言っていたけど、私たちと同じで女の子を産みたいって言っていたわね

お母さんに、瓜二つの娘が産まれたら大変よ。イバは、その娘にぞっこんになるかもしれないわ」

「ただでも、娘には甘いのに・・・・・」

「そうなんですか?」

「男の子には厳しいわよ」

「最もシュンは、父親以上の『転移能力』の持ち主って言われているしね、自分で父親を越えようとしているわ」


「その点、イリスは、どちらかと言うと何でもこなすというか飽きやすいのよね」

「『飽き安の好き安』という奴じゃな?』

「そんな言葉が、あるんですか? でもわかる気がします。

人ができる術を見たら、兎に角やってみる。

で、出来たらそこでお仕舞い。長続きしないわ」

「でも、フィギュア作りは熱心よね」

「そうね、桜が送ってくれた子ども用の美術教具の中では、『紙粘土』が一番気に入っていて彩色をして、戦隊モノを揃えて見たり、少女物の物も姉達や聖地の中の子供に頼まれて作っている。カイやリョウの様に【術】を使うのではなく、あくまで手作業で作品を作り上げていく。

リョウが戯れに【傀儡】として動かした時には、真剣に怒るほどだった。

『動かさなくても、動いている様に見えるポーズを取らせているんだ!』

そう言って怒ったわ」


彼は、孤児達から人気が高い。

中には親と、死に別れた子がいる。

そういった子の記憶を見せてもらい、両親と兄弟とが揃った姿を作ってあげるのだ。

中には乳飲み子だった子もいる。

その子でも、何となく見えて来る両親の顔と姿。

何人か、それで作ってやり、知人だった女が驚いた程に両親に似ていた。

私にもと言う者もやはりいるが、こちらは手を抜いて仕舞う。

頼まれた仕事には、興味が出ないのだ。

イリスはそんな子供だった。


リーファの出産が無事に済んで、男女一人づつの双子が誕生した。

男女だと言う事はエコーで解っていたが、リーファは源蔵にも伝えていなかった。

早速、贈られる絹で作られた【産衣】

この頃、綿も新村で勝手に自生してきた中に、白では無く淡いピンクやレモン、そしてブルーの綿花が見つかってこれを分けて栽培している。

綿花の花は蜜としては役に立たないが、それでも受粉は蜂の働きだ。

受粉の為の蜂は、熊獣人達が管理していた。

蜂の巣箱は熱を発するので、外部から熱を検知できない様に【魔絹布】をかけたら蜂が帰巣に手こずったが、今では分蜂しても、ちゃんと自分の巣箱に帰ってくれる様になり熊獣人達は喜んでいる。

もう、冬で移動が出来ない聖地の暮らし。

蜂達も越冬に入らせる。


話が逸れたが、材木の搬出を終えた伊東達、長谷山の門人に続いてサーファとライラも岩屋神社に転移した。

そのまま、館林の屋敷へ転移して車で母親と弟と妹、ついでに父が居る病院に向かう。

リーファが身体を休めているフロアは、萩月の門人達で固められている。

「名前は、何にするの?」

産まれたばかりの、子供達の顔を覗き込みながら話しかけて来るサーファ。

「男の子は、お父さんの名前ルクアを継ぐわ。

女の子はラーファ。お婆ちゃんのライラから頂いたわ。

だから

ルクア・ファルバン

ラーファ・ファルバンよ。

でも、お父さんはファルバン家から離れるから、ファルバンの名前はみんな変わるわ。

まだまだ先だし、その頃にはサーファは、お嫁に行っちゃうからサーファでもなくなるかな?」

「私、サーファの名前は変えたくない」

「そうね、名前はその人の宝物の一つだからね。

でも、新しい名前を好きな人からつけて貰って、新しく家庭を作る事を選ぶ人もいるから、ふたりでお話しして決めるのよ。

好きな人はできた?」

「ううん! まだ、【青魔石】は受け取らない。

地球の事も、よく知って決める。

お母さん。私も日本で勉強したい」

「そうね。

それも良いかしら。でも、いっぱい勉強するのよ。

日本に来たくても来れない人の為にも。

そして、ルクアとラーファの為にもね」

「うん! ルクア、ラーファ。おねーちゃん!頑張るよ」


僅か4歳になろうとしている時に、地球行きを宣言する娘。

この子の、可能性だ。

アーバインを変える為にも、それは良い事だろう。

ライラはサーファの頭を撫でながら、孫の行く末の無事を祈った。



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