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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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239 食事指導

「いらっしゃい。若菜!」

「サラン姉さん! ルナ姉さん!」

流石にもう駆け出して抱きつこうとはしなかったが、それでも飛びかかりそうな勢いで若菜は声をあげた。

「あらためていらっしゃい。若菜。順調の様ね」

二人の姉に甘える事ができて若菜は幸せだった。


「ルース またしばらく厄介になる」

「あぁ、大変だったからな。そのうち、まだこちらに来ていない面々も随時来れば良い。

雑事を忘れて休むのも良いだろう。

木場さんも、色々とこちらの事を案じてくれて、ありがたく思っている。

晴美さんも、いらっしゃい。

食事指導は、まだまだだが、色んな調味料のお陰で食事が豊かになった。

指導のほど頼みます」

「えぇ、食事は生きていくための基本ですからね」


今回は、送られて来る聖地のジャンクフードに偏りがちな若菜の監視も兼ねて木場晴美が同行している。

助産婦や看護師もやがて到着するが、彼女達には多くの妊婦の診断、指導が待っている。

木場の手が、引かれて犬獣人の看護担当と話をしだした。

「悪いが急患だ。診療室に行っているから後を頼む」

「はい!」

あと数分で、残りの人員が転移して来る。

それでも待てないほどの事。

改めて【陣】が輝き出した。

今日が、アトリエから最後の人の移動運用になる。

続いて産科医のグループだ。

「仁科先生。早速ですが、急患だそうで木場は診療室に行っています」

「解りました。それでは挨拶は後で! 早乙女さん!行きましょう」

ダイアが瞬間移動で、先に待ち構えて彼らを誘導する。

「済まないな。来てもらって早々慌ただしくて」

「いえ、大事がなければ良いのです」


急患だった熊獣人の女性は、三つ子の胎児が早産しそうになって危険な状態であったが、熟練の産科医達の働きで事なきを得た。

頭を下げて感謝し続ける人族の夫。

初めての妊娠で、不安で仕方無かったのだろう。

食事も取れなかった様で、しばらくは同じ病室で過ごしてもらう。


「やはり、専門家がいると安心だな」

「そうでも無いさ、胎児の大きさや成長具合、何より母体の状況の違いが掴めていない」

「早急に、診断機材の設置を頼もうか!」

「あぁ、今開梱している。技師と研究員、それに蒼がやって来る」

今回、持ち込んだ機材の中に蒼と阿部が中心となって取り組んだ秘密兵器がある。

その為、技師の中に阿部夫婦もいる。


【真力/電力 変換装置】 

現在聖地では、魔素から電力を得るには熱や光に変換して、それを使ってタービンを回すか太陽光発電パネルで光から発電させていたが、設備が大規模になったり発電効率が悪かった。

そんな中で『一条 譲』に放たれた柳の【豪雷】

【陰陽】で集めた【呪怨】のエネルギーを、雷に変換し『一条 譲』に直撃させて物理的なダメージを与えた。

あの、金の杖!

頭を下げて見せて貰った。

快く、その【呪符】の紋様を見せて貰うことが出来た。

柳や黄達も、元は支配者から一族を守る為に編み出した術だったので、伝聞程度しか残っておらず、その研究は疎かになっていた。

今の時代、下手に術を使うと新たな災いを招く。

しかし、萩月が新たに取り入れている陰陽道は印を結ばず、真言を唱えず、今までに無い術を展開する。

我々はどうするべきか・・・・・

黄と二人で話す事が増えた。

そう言えば、友というものが居なかった・・・・・

書き写した【豪雷】の紋様を、食い入る様に見つめて意見を交わしあう蒼と阿部の姿。

師弟関係と言っていたが、やはり彼等も友なのであろう。

「柳よ、ワシにもその杖見せてもらえぬか?」

「あぁ、良いとも」

「その後には、【陰陽】と【麒麟】の違いを確かめてみないか?」

「そうだな、使うばかりで、その違いを知ろうとはしなかった」

「なんですか? 私も混ぜてくださいな」

こうして、蒼と阿部が語り合う横で、同じ祖先を持つ引き裂かれた者が語り合いを始めた。


そして、 【真力】を使って新たな電力発生の装置が造られた。

魔石でも試してみたが、今回編み出した【陣】では制御がしやすい【月夜石の真力】を使って一般家庭の数戸分を発電出来来た。

発電効率はそう良くは無いが、これからの改良次第だろう。

診察室と病室用に2台、遠見の部屋の隣りに新たに設けた【天文台】に設置した。

「不自由な生活かと思っていたんですが、そうでも無いですね」

「そうだな、何せ一年が、まだ何日か一日が何時間かの計測を始めたばかりだからな。だが、時間の概念は、文化的な生活の基礎となるが、人を追い立てるからなぁ〜」

「何ですか? 会社員時代の事を思い出して居るのですか? 貴方は会社に出て行ったきり帰るのを忘れていたくらいですからね?」

「それは、酷いな〜 ここではちゃんと決められた時間で仕事やめますからね!」

「あぁ〜解ったから、そう二人で責めるな。源蔵くんがいない分ワシに皺寄せがくる!さぁ、配線を確認しよう」


一日の作業を終えて、風呂からあがりアーバインの 【アレ】で食べれれていた郷土料理を頂く。

木場晴美は塩分過多の傾向があると思ったが、初日は口を出さない様にしていた。

【転送陣】を使う前の生活では、人は徒歩か馬での移動で有ったし汗をかく量も多かっただろう。

夫がこれから導き出す一人一人のカルテを見ながら色んな事を知って行こうと思っている。

しばらくの間は客に徹しよう。

明日は、聖地の中の農園を見て回る予定だ。

もう、何人かの女性や少年、少女が仲良くなってくれた。

特にジャリムと言うライラの従姉妹にあたる女性とは気が合いそうだ。

聴くとミアラの発酵食品についての理解者で、自分の夫と子供を管理者に据えた。

本人は家畜と農園の管理を仕切っている。

この、料理に使われている濃厚な山羊の乳から作ったチーズの味は又格別だ。

しかし、気をつけないとカロリーオーバーになる。

でも、美味しい物は仕方無い。

成程、若菜が食べたがるわけだ。

若菜には看護師と共に目を光らせておかないといけない。

サランさんが甘やかすと、妊娠後期にカロリーを摂りすぎると出産に影響する。

「晴美さん。そんなに睨まないで下さいよ〜でも、解るでしょ? このチーズの美味しさ!

お野菜も美味しいし、食後のお茶やクッキーもジャムの風味が良くって手が伸びてしまうんです」

「あぁ、解る。でも、何度も言うけど妊娠後期出産が辛くなる様な事はさせないからね!夢枕で時恵に怒られる!ライラにもちゃんと怒ってもらおうかね!」



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