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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
221/929

219 番外 ルクアのプロポーズ

『うん!』

『大丈夫だね』

『あぁ、問題無い』

「もう3年ですよ!魔石を吸い込んだのは!それに、排出も出来ていましたし、お父さんとイバが追加で調べてくれていたじゃないですか?」

『そうは言っても初めての事じゃ!蒼に辛い思いはさせないのじゃろう?』


今日も朝から緑とオレンジ色の、ポアーザのチェックを受ける。

蒼の事を言われるとグゥの音も出ない。


青山秋子がキレてしまった。

『いい加減に、男女の仲になってしまえ!』


尻を叩かれる様に六月に、ハワイで式を挙げることになった。

世間は、まだ怪奇現象の煽りを受けて自粛ムードになって居る。

その真っ只中の震源地なので有るが、蒼とルクアがイチャイチャして作業をするので周囲があてられてしまっていた。

八王子のマンションは両角寿美が指揮を取って、被害女性の回復をケアするセンターになっている。

しばらく、空くことはないだろう。

今は、二人で相模原の賃貸マンションで暮らしていた。

だが、ベッドは別々。

これに、秋子がブチ切れたという訳だ。

で、若菜との約束通り、今夜ルクアが蒼にプロポーズする事になった。


「どこでするんですかね?友嗣さん!何か聞いていませんか? 萩も白美も教えてくれないんです!

録画するんですよね?

私たちのを見て、ルクアと蒼さんが二人でヒソヒソ話していたんですよ!」


若菜だけでは無い。

サランもルナもミーフォーも、ルースとイバが持っていた黒石板にバッチリ記録が撮られていて音声も周波数変換されて録音されている事が解った。

黒石板を解析するためだけの研究所で、様々な方法で解析が試みられていて軟エックス線での内部検査や超音波を利用した調査が行われたが、全ての分析結果は・・・・・良く分からない。

エックス線も、その他の透過性を持つアルファ線でも、どこもかしこも均一な黒い物体と判別される。

縁の一部にギザギザが有り、ここを上下に触ると、正常に動作する黒石板の画像が自分の意思で反転したり分割したり、3D映像になったりするのは解っていた。

それに、魔素を強く入れる事で持ち主が固定され記録されているデータを呼び出せる事も解っている。

そして、その際に縁の部分が、少し緑色に光る事も解っていた。


ルクアが預かって来た黒石板も、同じ様な操作をすると微かだが緑の筋が出た。

そこでポアーザ達が思い出した。

【魔素切れ】じゃ無い?

慌てて送り返して、現在、あの回廊の下でルースが所持していた黒石板をズラリと並べて魔素を供給させている。

再起動の為の魔素の供給が開始されていた。

魔素切れのせいで内部に組み込まれている筈の【魔石】との接続が上手くいっていない様で、内部に魔素を溜め込ませている。

これが、収納に入れるのに苦労をする破格の魔素量の所以であった。

さて、若菜に秘密にしていた訳は友嗣と美耶が、魔絹布のコートを着て姿を消して白石板で録画撮影にあたるためだった。


場所は

明石と淡路島を結ぶ橋の上空。

ルクアは、この巨大な橋を作り島をつなぐ、その思いに感激していた。

舞台としては友嗣と同じで、遮蔽の床を張って下からは見えない様にした。

ルクアが蒼を横抱きにして、明石の海岸から飛び上がる。

蒼も桜に付きあって落ち物を体験したせいか高所が平気になっていたし、何よりもルクアへの信頼が強かった。


二人で明石大橋の上空に置いたベンチに腰掛けて、行き交う船を見る。


ルクアは初めてリーファとミダクの話をする。

リーファの話はある程度聞いていて手紙のやり取りやテープレコーダーでの会話もした。

流石に間も無く子供が生まれるとの事もあって、ハワイには来ないと言っているが・・・・・


私はどうなんだろう? 

友嗣さんみたいに、後二人って言われたら・・・・・ 許しちゃうだろうな。

若菜と美耶の仲の良さ。

念話を使って楽しそうにするサランとルナとの会話。

羨ましかった。

だからこそ、次は念話を使えないリーファや私でも電話の様に会話が出来るようにする。

黒石板を、見せて貰っているうちに出来る様な気がしている。

こちらにやって来る子供達と、その家族の為にも完成してあげたい。



ミダクの話は余りにも切なかった。

今、美耶が助けようとしている女性達にも繋がるような話だ。


「僕は彼女の事が有って、しばらくは人との接触を絶っていた。

魔石の影響が出るかもしれない。

だけど、兄が、こちらの世界に行ってしまって悲しむだけかと思っていた三人の姉達は悲しむ間も無く団結して、家族を纏めて、より一層に聖地の為に動き出したんだ。

僕は驚いたね。

女性の強さは悲しみ、嫉妬や恨みを越えていく。

思い返せばミダクもそんな女性だった。

恥ずかしかったね。

そんな折、兄から凄腕の創芸師の話を聞いた。

元は『傀儡使い』と一緒にしていたんだけど、聖地でカイという女の子が、創り出す物に美しさを加えて行ったんだ。

それ以来『創芸師』と呼ぶ事にしたんだ。

その創芸師を二人も見つけた。

悔しかったね。

しかも、見たことも無い精密な加工」


「でも、アレは設備が優れているだけで私では無いわ」

「それは聖地の創芸師も一緒さ。魔素がふんだんにある場所でその力を借りている。

阿部さんも言っているだろう? 装置の限界を引き出して越えてさえいる。

創芸師というのはそういう人達だ。

僕もそうありたいとは思うけど、チョット違っているんだよね。

だから、僕にできる事をしていく。

そして、人々の生活を支えていってあげたいんだ。

ミダクみたいな防げる事故や、理不尽な侵略者たちのせいで不自由な生活を強いられている子供たちに笑顔を届けたい。どうかな?

蒼さん。僕の事を支えていってくれるかな?

僕は君を守り抜く。

その為のネックレスを準備した。

受け取ってくれるかい?」

ルクアが極限まで薄く加工したヘルファに、魔絹布を幾重にも貼り付けて保護した青魔石で覆った長い小箱を差し出した。

ゆっくりと蓋を開けると、V字の青魔石の先端にブルーダイアモンドを埋め込んだネックレスが現れた。

「着けてくれる?」

「良いのかい?」

「もちろんよ。こんな幸せなプロポーズしてくれる人は居ないわ!」

ルクアは、蒼の正面から腕を回してネックレスを着けてやりそのまま口付けをした。



もう、面倒になって、白石板を見えない様にして空を飛び回る二人の後を【梟の式】に追わせて、友嗣と美耶は空の散歩を楽しむ事にした。

ふたりは鳴門大橋に回って、渦潮を飛行しながら近くで見るつもりらしい。

瀬戸大橋にも回るかな? だけど、次にしないとキツくないか?


『ずる〜い!

私にも【飛行術】教えてくださいよ!二人とも!』

若菜の声を念話で聞いて、空で笑いこける二人だった。


ルクア、蒼 おめでとう!

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