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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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211 やるべき事を

やはり、残酷な描写があります。

高尾に別宅を持つ『両角寿美』は、自分の拠点のひとつに『一条』が潜んでいたのが腹立たしかった。

ただでさえ、政府・地方自治の無策で治安の悪化が言われ始めている首都圏の地方都市。

外国人による不良集団が、いくつも組織されて来ていて暴力団と揉めている。

暴力団も一部が、暴対法の影響で力を失い彼らの侵食を受けてしまっている。

別に彼らの肩を持つ気は無い。

ただ、その後を考えて警察機能の充実を図るべきなのに、後手にさえ回れていない。

日本は外部からの侵略に対して考えが甘い。

周囲を海で囲まれている安心感と、『神風神話』のせいだ。

その長い海岸線のせいで、密入国は簡単だと言うのに、言葉の違いで嫌疑があっても現場の警察官が及び腰だ。

寿美が再三、羽田博と九鬼修造に愚痴る。

経済を担当する両角としては、海外へ流れて行く闇に流れる資金は、無視出来ない金額になって来ている。


今回の方法なら『一条 譲』一人でも、次々に【呪糸蟲】を感染(うつ)していける。

その気になれば、誘拐などせずに奴が元気なジジィとして店のドアを開けさえすれば良い。

寿美はすぐさま、関東圏の風俗店の実情を至急報告する様に命じた。


ミーフォーが姿を消したまま、ベランダに降り立ち。

中へ入って来た。

周辺の安全を確認して来たのだ。

【魔絹布】のコートを脱ぎ、姿を表したミーフォー。

挨拶を交わす。

(えっ! ホント!)

蒼が写真と実物の違いに驚く!

今日の夕方、アトリエでも繰り返された言葉なのだが・・・・・

若菜が予め送っておいた、日本の働く女性用のパンツスーツとパンプスでショートヘアーの可愛い女性だった。

絶対に30歳越えの子持ちの女性には見えない。

友嗣の姉という『カバーストーリー』はキツくないか?

皆が、そう思った程だ。


美耶(ミーフォー)は知る、この中の最大の危険は青山秋子!

(強敵では無い。もはや【危険】なのだ!)

ヘルファの変わった武器を持ち笑顔で話しかけて来るが、こいつが一番の【危険物】だ。

このスラリとした佇まい、身のこなし。

ボディーライン。

何より、陽に焼けた健康的な肌!

そうか! ここにも罠があったか!

(彼女が脱いだら、友嗣でも落ちる!)

『ルクア!聖地に直ぐに『日焼け用の施設』を設ける様に指示しろ!彼女の写真を送っておけ!』

『解った!姉さん!』

やはり、この姉も心理攻撃は、半端無いと思い知ったルクアだった。


「美耶さんも、かなりの使い手やね? 一度、道場でやり合いましょう」

「望むところですわ。友嗣がこちらに来て、相手に事欠いていましたから」

火花が散る!


このままじゃ!マズイ!

慌てて、友嗣が今からの予定を話す事にした。

間も無く日を跨ぐ、友嗣達はアトリエご近所の温泉施設の家族風呂で二人っきりで入浴し『蕎麦のコース』を堪能して来ていた。


修造が、名刺を取り出す。

薄いチタンでできている。

「蒼に作らせた。『カードキー』になっている。横須賀のホテルの最上階の部屋だ。使う時には、わしの許可がいる。フロントにはもう連絡しておいたから、直接【転移】してくれて良い。海が見えるから少しの時間だろうが再会を祝うが良い。

積もる話もあるだろう。朝飯はホテルででも良いが、朝からやっている市場直営の食堂がオススメだ、金目鯛のセットが良い。馴染にしてくれ」

「解りました。ありがたく受け取ります。明日は、用意ができましたら連絡ください」


友嗣が、青山秋子の為にソファーベッドと【魔絹布】を入れた毛布を取り出して置いた。

「優しいね。良い旦那様だ」

秋子の目が怪しく光る。

慌てて、美耶が友嗣の手を取って【転移】で横須賀に向かった。


「可愛いわね〜 美耶ちゃん!」

「もう、お母さんたら〜」



翌朝

寿美の別宅を借りた修造が急遽、蒼たちが使うはずだったマンションを前線基地に据えた。

両角寿美も入室して室内に置かれた関東一円を表した地図に、聞き込んだ結果が色毎に分類される。

関東の繁華街と言われる場所のほとんどで、怪しい情報が集まる。

早急に対応が必要だ。


都内の地下施設も多くのゲートに人員を増員して警護にあたる。

これはのちに公開されて大騒ぎになる地下シェルターの一部だった。

【陣】を書き込んだ、人が入れるサイズのカプセルが準備され呼吸機器が取り付けられた。

京都から一矢夫妻が呼ばれ、桜は様々な【陣】をカプセルに直接書き込んで行く。


仁は一条豊とその取り巻きが、都内に潜伏している可能性に備えて門弟の指導に余念がない。

萩月の門人で組織された機動隊を準備されて、特殊な盾と警棒を渡された。

全ての防具に【陣】が【魔墨】で刻まれていて、隊員の【真力】と連動していた。

今回は【月夜石の勾玉】に加え、【白魔石】が渡されていて高出力の陰陽師には【黄魔石】が渡される。

それを見て隊員達の訓練に一層の気合いが入る。



ルクアと蒼は、阿部の手を借りて【呪核】と【呪糸蟲】が出す音を出せる装置を作り、それに特化させた探知器を作り出す。

三次元レーザー加工機が唸りを上げる。

蒼の眼が、欲しい!欲しい光線!を修造に向けて発射する。

全国の萩月に属する陰陽師が行動を開始する。

世間ではGWの連休が終わり、暑くなる最中、彼方此方で探知機が作動する。



しかし、先ずは彼女達を救おう。

その為に、特殊な護送車両とあの『カプセル』を準備した。

その数 600セット。

しかも、いつでも追加できる様に桜が待機している。

そして、そのカプセルごと収容できる地下の医療施設を各地に設けた。

木場、羽田、九鬼から、医療従事者が参加している。

今日は緊急車両を優先走行させるための交通規制もされていて、地下施設への入り口には一般車両や人が接近できない様に、【式】が監視を続けている。


午後10時。

【呪糸蟲】の反応が有った関東一円の風俗店や、一般住宅に一斉に取り締まりが入る。

多少の事なら見逃す、今はその身に【呪糸蟲】を忍ばされた哀れな女性を探す。

次々に、護送されていく女性たち。

共通しているのが、目が赤く見え自己表現に乏しい事だった。

護送車は各地に設けられた、地下の施設に入って行く。

九鬼達が準備していた施設だ。

そこに、次々と女性がストレッチャーに載せられたまま運び込まれる。

何人もの女性が録音された、美耶の歌声を聴きながらカプセルに収納されて行く。

やはり、【呪糸蟲】の動きが止まる。

【陣】を展開させて身体から【呪糸蟲】を抜いて行く。

赤く蠢く【呪糸蟲】を入れた瓶が幾つも次々に遮音区画に送られて、そこで次々に、粉々になって消えて行く。

女性は、カプセルに入ったまま、次の治療の為に奥へと運ばれて行く。

次の女性達が運び込まれる。


ある県の施設で、それは起こった。

ストレッチャーからカプセルに移す際に、一人の医官がストレッチャーを止めて『採血』を行おうとした。

採血用の針が、女性の静脈に刺さる。

その途端に、女性の身体に黒い炎が灯る。

もし、【出雲阿国】がいたらこう言っただろう。

『蟲が泣き叫んだ』と

それを合図に、地下施設に入って来ていたストレッチャーの女性に、次々に黒い炎が着き始める。

「この馬鹿野郎!この光景!目に焼き付けやがれ!お前らの自己満足で、この女性達は、もうこうするしかないんだ!」

耳からも頭の中にも直接声が響く!姿を隠したままミーフォーが杖を振るう。

青い炎が、黒い炎を包み込む様にして燃え盛る女性達。


助けるべき時には、それを優先する。

そう言って置いたのに・・・・・

この施設から伝搬した『蟲の鳴き声』に反応して、搬送中の車の中で黒い炎をあげ出した女性が出る。

店舗や自宅で、同じ様に女性に黒い火が付く。

式が次々に、現在地を伝えてくる。

もう、間に合わない。

友嗣とミーフォーは女性を【転移】させて、用意されていた施設で次々に、彼女達を天に送る事になってしまった。

ここには、ルクアが待機していて、姉が歌う死者を送る歌を歌いながら、その命を悼み青い荼毘を守った。

最終的に関東圏で五百人を越える女性が搬送され、その六割が【呪糸蟲】を抜かれた。

だが四割、二百人程が自分の名前を忘れたまま天に帰っていった。

たった数人の門人の勝手な振る舞いで、多くの犠牲者を出してしまった。

羽田の門人の医官だった。

『術前後の、データを取っておきたい』

通常の病気なら、それでも良かっただろう。

だが、言い聞かせて有った。


これは『病気では無い』

【呪術】なのだと、調べる余裕はない!時間との勝負だ。

【呪糸蟲】が異変を感じたら女の身体が燃え出すか、身体を食い破って近在に居る者へ侵入をはかる恐れがあると。

そして、鳴いて周囲に異常を伝える。


だのに、その命令を無視した。

護送車両も延焼し友嗣と美耶は、運転手と同乗者を【転送】した。

車両は【遮蔽】で囲った上で、完全に燃やし尽くす。

その作業に、朝までかかってしまった。

羽田は頭を抱え込んでしまった。


犠牲者の事もある。

だが、問題は何より行動を一条に、世界に知られた事だ。

間違いなく、世界の諜報機関・報道関係者が押し寄せてくる。

今回の計画に参加した人間との接触を図るだろう。

上空からの監視衛星の眼は、ルクアが【遮蔽】と【偽装】に加え温度変化も誤魔化して置いた。

夜間だったので、赤外線モードなのは間違いない。

これは、事前の打ち合わせ通りだった。

だが、発生開始地点が地下施設だったのは不味かった。

どうしても、同心円上に異常現象が発生した事は解ってしまう。

地下施設への導入路は完全に閉鎖するが、報道機関への発表次第ではパニックがおこる。

たった、ひとつのエゴが引き起こした危機だった。

羽田の髪の毛が心配になった。





20230922 タイトル修正しました。

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