表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
211/928

209 『静』

その日の夕食は、豪勢なものになった。

だが、ルクアは先代の館林源蔵が【呪核】を、その身に入れられた可能性があると知って、幾つかの真道具を取り出した。

一つは害となる物質、特に食材に反応する『腕輪』を渡した。

あの、キヌクの一家を救った魔道具の対ジャイ追加仕様だ。

友嗣に教えられて作ってみた、月夜石の腕輪をルクアの仕様にして有る。

大きさが変えられるので、シャツの上部に付けておけば男性でも違和感はない。

そして、男性用にベルトのバックルに仕込んだ【魔石】のアクセサリー、女性には【勾玉】のアクセサリーを要望によって姿を変えた。

これを使えば、先程の腕輪が防御の為の【遮蔽の壁】を展開して物理攻撃から身を守る。

蒼も実際に【魔石】の形状を変化させる作業は見たこと無いらしい。

作業中ルクアの指先を覗きこんでくる。

兄から貰ったペンダントトップは、兄が桜の分と一緒に合わせて作って来たものだし、他にこんな事を出来るのは、この地球上では逆に蒼しかいないだろう。

このペンダントに組み込まれて居るのは、魔道具への【魔素の供給】と、【収納】を利用した追加のヘルファの供給と防御の【盾の術】か? 

兄も危険を感じていた様だ。


「ルクア! お願いがあるの!」

食事が済み、まだ工事中だが入って見ることは出来ると、階上の自宅になる部屋から、煌びやかな街の光を見下ろした時に蒼が横に立った。

目をあげれば、もうそこは『八王子』 真っ暗な山影しか見えない。

「どうした?」

「この、友嗣さんに頂いたペンダントだけど、母の為に加工できないかな?」

「蒼、なんて事を!私はこの『月夜石の腕輪』を頂いているし、万が一でも、『薙刀』で自分の身は守れるわ!」

「でも、その『薙刀』が無かったらどうするの? 自分の身は護れても、お母さん! 無手で相手に向かっていくわ!」

「それは・・・・・」

間違い無かった。

かつて、熊を素手で撃退した事がある。

少々、脇の肉を持っていかれただけだが、蒼は一緒に風呂に入る度に気が重くなる。

あの傷は私のせい。

「『薙刀』か〜そういえば、一条のチンピラを撃退した映像を見ましたが鮮やかでした」

そう言いながら蒼に、手を伸ばす。

蒼が、ペンダントを外してルクアに渡す。

「見ててご覧なさい。これが、兄がこのヘルファに込めた力です」

赤魔石のペンダントトップをそのままに、ヘルファを変形させていく。

「うん? 少しヘルファの量をケッチてますね、仕方無い、私が継ぎ足しましょう!」

少し幅の広いヘルファで、魔素の入れ方を変えて金とプラチナの色で波の紋様を刻み込み台座とした、ファルバン家の赤い魔石が付いた『髪飾り』が現れた。

「お母さん! コレを持って、【真力】を回して下さい。やり辛かったら【薙刀】に名前をつけてやって下さい。その方が楽に変形できますよ!」

「名を付ける! ワシに命名させてくれ! 『波斬り』はどうじゃ? 『風返』、『月影』も良いぞ!」

「あれは無視で・・・・・ 『(しず)!』」

現れた【薙刀】は、白銀の刃を輝かせ刃の根元に、赤い魔石が羽を広げていた。

物理攻撃もだが、【呪術】の攻撃に魔石の効果で【盾の術】が発動する。

柄の部分は白柄だが、色は変えれる。

あの透明状態にもなると説明した。

「ルクアくん。もう少し刃の部分を厚くしてくれ、刃の長さは・・・・・」

「お母さん。もう持ち主はお母さんですよ。魔石の部分に手を触れてイメージしてもらえれば変えれます。重量配分もね!そして、髪飾りに戻す時は・・・・・自分で決めてあげてください」

薙刀を出現させたまま、様々に刃の幅や長さを変える。

ルクアも調子に乗って、巻藁を数本立てて振らせもしてみた。

阿部夫妻が、固まったままだ。

無理も無い。

色んな物理法則を、ぶっ飛ばしてしまっている。

「兄が【赤魔石】を利用して、あのヘルファに【収納】をかけていたんですよ。ヘルファは金属としては軽いので、全体をヘルファで作る事は可能です。それで、何かに変化させる時に隠してある【収納】からヘルファを追加させて、予め決まった形に変形できる準備だけしてありましたよ。【盾】でも出すつもりだった様ですかね?」

「それじゃ、蒼はどうするの?」

「私が夫ですよ!お母さん。

危ない目になんか合わせる訳が無いじゃ無いですか、例え、真力、魔素を失っても彼女の命を守る。

そう言う物を身に付けてもらいます。それまでは、ひと時も離れません!」


蒼、真っ赤!

秋子は、もう良いとばかりに薙刀を振り回して、

「うん!良い感じだ。『朝霧の魔女』とやりたくなった!」

これには、九鬼修造が口を挟む。

友嗣のブートキャンプで彼女が【鎌鼬(カマイタチ)】の術を使えるようになり、剣を使わずとも『真空の刃』で、実戦に出た事を話した。

「ルクア君! 私にも何か切り札が出せるんだろうね? まさか、『神出鬼没の薙刀』だけじゃ無いだろうね?」


『静』に耳が! 心が、有ったら! 折れてしまいそうな発言をぶちかます!


「いや、お母さん。私は魔道具技師で戦闘関連はからっきしなんですから、その薙刀担いで兄さんを訪ねて下さい。なんとかしてくれますよ」

「そうかい! ルクア! 今彼は何処にいる? 繋がっているんじゃ無いのかい?」

「ヒィ!」

「お母さん。もう、こんな時間よ。明日の朝にしなよ。若菜さんが驚くよ!」

「・・・・・そうだね!【鎌鼬】か? 面白いね。ひとみの奴。と言うことは伊東武敏が、鹿児島に篭っているのも対抗策を考えているわね。で、今夜は寝床はどうするの?」

「私達は階下の、親方の家でお世話になるよ。兄さんは?」

「俺は、下に配下が来ているから横須賀まで帰るわ」

「大変ですね」

「高速を使えば直ぐだよ」

「道路網も、知っておきたいですね」

「あぁ、私も君にはもっと色んな事を覚えてもらいたい。それでだな・・・・・」

「良いですよ。【刀】が欲しいんでしょう?」

「今度でいいか? どれにするか、もう悩んでいる」

「兄が言っていましたよ。術を付けていない【日本刀】をヘルファで3本作っているそうですね? 兄も刀鍛治を体験出来て喜んでいましたから、聖地にもゲーリン様達に何本か送るつもりの様です。玉鋼で打って有るそうです」

「いや、彼の日本刀も良いのだが、今度は趣を変えて一本それを、護身刀にしておきたい」

「良いですよ。兄からも刀鍛治はやる様に言われています」

「秋子さんは、どうする?」

「私なら、この部屋で寝るけど?」

「えっ?」

「やっぱり〜」

「もう少し【静】と話がしたいんだよ。ここなら、どっかの誰かさんが張った【遮蔽】で外には知られないし、壁を這い上がって来ている【式】も潰しておきたい」

「知っていたんですか?」

「友嗣君と常義さんのおかげだね。私の【式】がだいぶ噛み砕いている」

「噛み砕くって!お母さんの式はトンボのはずじゃ? まさかお母さん!羽田のおじさんの・・・・・」

「STOP! それは使わない。オニヤンマだよ! 羽田さんのは壁を這い上がって来る奴を迎え撃つのには良い姿だけど、共喰いに見える。今日はここに、九鬼の大将がいるから敵さんも仕掛けて来たよ。大丈夫かい?」

「下の連中か?友嗣のブートキャップ舐めるなよ!」

歯牙にも留めていない。

「良いね〜ますます、彼の子供が欲しくなる!」

「母さん!」

「秋子さん 娘を揶揄うのはそれくらいにして、相手は【式】なのかい?」

「あぁ、まごう事ない【式】だよ。血の匂いがするし食い破った、こちらの【式】の中に入ってくる。あの、【呪糸蟲】が使われている。燃やしてしまいたいけど、人目についちまう。九鬼さん!下の連中、あの装備付けているよね?」

「あぁ、男用に、あんな物が有るとは知らんかった。それに、【陣】をかましてある」

『ルクア!』

『兄さん!』

念話が届いて来る。

『どうも、ここ【八王子】はジャイの拠点のひとつだった様だ』

『そう見たいだね。どうするの?』

『そりゃ、『見えない空飛ぶ治癒師』が奴らのアジトに向かっているよ。僕はこのマンションの屋上から見ている。我妻たちと念話で繋がっているがね』

「何処なんだい?」阿部が聞いて来た。

「【南平(みなみひら)の工業団地】ですよ。入所者が居なくって空き家だらけでしょ?」

「アソコか!」

阿部夫妻には、思い当たる節があったらしい。


20230922 タイトル修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ