197 蒼への求婚
「もう、あの二人が行く気で困っているのよ。
『自分達は生体でもあるが、思念体なのでリスクは無い。それに、子をなす存在でもないから万が一でも未練はない。ルクアに何かあったらどうするんだ!』って、怒っているのよ」
「ダイアはなんと?」
「ダイアも負けて、今では準備を始めているわ。転移の為の箱作りさせて、もう出来上がって二人でその中に鎮座しているわ。いつでも行けるそうよ」
サランがゲンナリした様子で伝えて来た。
ウーラとラームの念話も届く。
『さっさと【陣】を開きなさい。私たちだけだったら青魔石半分で行けるわよ』
キャッキャと頭の中に響く二人の声。
「ルクア?」
「なんだい? 兄さん」
「お前の意見を聞きたい」
「止めようがないよ。頼むからそっちで引き取ってくれ!寝れなくって困っているんだ」
ボアーザになると魔素だけで活動出来るし、睡眠もいらない。
寝ている事もあるが、大体は周囲に合わせているだけだ。
どんな事を、二人の老婆がやっているかが解って頭痛がして来た。
「解った。今夜、陣を開こうその時に蒼に手紙を書かせるから検討してくれ。音に関する魔道具の製作だ。
人に聞こえない音を捕まえる方法を考えてくれ」
「・・・・・ 前から思っているんだけど、蒼さん。僕のお嫁さんになってくれないかな?」
まさかの告白だった。
いや、告白を飛び越してのプロポーズだった。
一斉に蒼を見る。
念話が使える友嗣、若菜、萩、白美。そして常義! 常義は萩から伝わっている。
「エッ? 何?」
一斉に顔を向けられて蒼が戸惑う。
「蒼さん。 ルクアさんが蒼さんにプロポーズすると言っています」若菜が伝える。
「エッ!エ〜!?」
聖地でもサランとルナ、ミーフォーが固まっていた。
二つのポアーザは嬉しそうに浮いて輝いて居た。
桜の結婚式で、多くの男性からの交際の申込みを、顔色変えずに断って来た蒼が真っ赤になって慌てている。
「それじゃ、僕の紋様の青魔石のペンダントを作って、そちらに行くから準備しておいて」
これだけ言って、ルクアは部屋を出て行った。
準備があるらしい・・・・・
「サラン姉さん? 繋がっていますか?」
「あぁ〜若菜。繋がっているわ」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
「他の皆さんは?」
「「大丈夫」」
「で、どうしますか?友嗣さん? 蒼さん? 聞こえています?」
「あぁ、大丈夫。それで、あの・・・・・彼は?」
「蒼さんに渡す波の紋章が入った青魔石のペンダントを準備して、こっちにくる為の準備をしに部屋を出て行ったみたいです。ですから、アシのおふたりに続いてルクアさんがこちらに転移して来ます」
割と平静なのは若菜だけであった。
「ど、どうしよう? 若菜!」
「どうするかを、決めるのは蒼さん自身ですよ?」
「それは、そうだけど・・・・・」
「先ずは、魔道具の件先に済ませましょう。今夜、陣を開くのですから準備をしましょう♪ お母様にも相談してくださいね」
何故か嬉しそうな若菜。桜にも教えてあげないと!
「あぁ、そうだな」
「友嗣さん! 友嗣さん! しっかりしてください。蒼さんを一旦アトリエに戻さないといけないですよ。お母さんに報告しないといけないでしょう?」
「あぁ、そうだね」
「じゃあ、蒼さん。又、夜に伺います」
こうして、蒼はアトリエの空き教室に帰った。
青山秋子は肩に留まったアキアカネに礼を言って、慌てているだろう娘の元を訪ねる事にした。
(今頃、友嗣から貰った赤いペンダントを掴んで、迷っているだろうね)
どうしよう!
交際を通り越してプロポーズされた!
母の車が入ってくる。
その頃、ルクアは割と平気な顔をしていた。
実は、妻リーファからは許可を取っていた。
と言うより、蒼を迎え入れる様に薦めていたのは彼女だった。
将来を考えるとイバと並び立つ、ルクアの存在を支える妻はまだ欲しい。
イバにサトリの四人の妻がいる。
リーファには無い創作の力でルクアを支える蒼はうってつけの存在であった。
若菜が妊娠中期に入ると万が一の間違いが起きるかも知れない。
(女性に対しての評価はダダ下がり)
それに、青山秋子の存在が不気味だ。
俗に言う唾を付ける行為をする様に仕向けておいた。
更に言えば館林茜から、ルクアを養子に欲しいとの申し出が在る。
この事を知るのは茜と常義そして白美だった。
巴様も知っているだろう。
だから、日本でのルクアの正体を知ったうえで嫁す存在が蒼になる。
サランの上を行く策士がここに居た。
「サラン、姉さん」
「まあ、ルクアを蒼さんと結婚させるのはこちらの希望でもあったけど、リーファがこうした手を打って来るとは・・・・・説得しにルナと行こうと思って居たのに」
「館林への養子の件ですね」
「ジュンかルクアで悩んだけど先ずは存続よ。茜様はまだ大丈夫でしょうが、引き継ぐ事が多い。記憶師のジュンも転移させるわ」
「彼の底上げも急務よ。お父様が【収納】を拡げる訓練を彼にやらせている。若菜が京優学園を動かして海外からの帰国子女を受け入れる為の特別教室を作る方向で動いている。子供達のリストを作成しなきゃね。それに、ミーフォー!先に行く事になるわ」
「私が?」
「えぇ、ルナと話し合ったの。サトリの力も増している。若菜の周辺護衛も必要だし攻撃力も有る。私とルナでは出来ないわ。なんと言ってもあなたは治癒師。若菜は当然だけど茜様を見てあげて」
「そう言うことね」
「向こうに行ったらイバに、いや友嗣に日本で生活できる様にサトリの能力で知識を補強して。そして、肩書きは・・・・・」
「解っている。姉よね?」
「もちろん、若菜も館林家でも私たちの事知っているから、夜の事には口を出さないわ」
「ねぇ、ミーフォー。アレやってもらいなさいよ」
「アレって?」
「京都の上空に【遮蔽】を展開しての散歩」
「・・・・・ううん。空を飛ぶのは私とイバは出来る。四人揃って散歩しましょう」




