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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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182 式渡り

「羽田さん、九鬼さん、両角さん 底上げをやりましょう。朝霧さんも、最後の仕上げやってしまいましょう。どうも急いだ方が、いい様な気がします」

友嗣が駐屯地に、やって来た萩月の重鎮らの指導を急ぐ事にした。


こうして、羽田、九鬼、両角、そして朝霧母子の術を見てどの程度まで底上げをするかを試す。

あの魔素を、身体中に回すトレーニングとも言える行為も行う。

両角の当主を見る若菜の視線がキツい!


特に一般人と結婚して家庭が有る朝霧さんの息子『卓也』さんには【式】の扱いを指導する。

彼には昨日、釧路の空港の格納庫で【式】を使っての術を見せていたし指導もしていた。

特に、友嗣の転移に強い関心を持っており何度もやって見せて、足元に陣を展開して見せたりもした。

そして、とんでも無い事を頼まれて【陣】を一つ伝授した。

トレーニングも済んで、赤魔石を渡してある。

今日は、昨日の続きをやってもらう。

あのとんでも無い【式】を使った技の続きだ。


【式】を自宅に置いておけば、危険予知もできるし防御も出来る。

それに何と言っても彼は ()()()()()()()()()()()()

【式渡り】などと言う、ふざけた術を編み出していた。


友嗣に丘珠空港を出発する前に【転移】を見せてくれと言うので、頭の中にこうして転移先の陣を頭に浮かべますと、自分のやり方を伝えたところ、夕方にはこの駐屯地で、とんでもない術を編み出していた。


友嗣と比べて経験が少ない自分には、長距離を行く事は無理だ。

だが、高速移動は救助にも脱出にも使えると散々考えて、【転移陣を背中に描いた式】の上を滑る様にして移動して行く。

その式の姿は、まるで亀の様で、亀の甲羅の上を飛んでいく様に移動する。

ただ、【真力】、【魔素】の消費量が半端ない。

どうも、この北海道の門人達は高出力系統が多い様だ。


朝霧さんは、腰に手刀を構えて抜刀の様に振出すと【鎌鼬(かまいたち)】の様に見えない(やいば)が飛び出していた。

左右どちらの構えでも、見えない刃が飛んで行き『巻き藁』を切り裂く。

「これは、昔からできそうな気がしていたんだ」

抜刀術で届かない位置でも巻き藁が、切れる事が稀に有ったという。

それなら、伊藤さんがやりたくない筈だ。

剣より先にこの『かまいたち』が来る予感があったのだろう。

『北の魔女』の名は間違っていなかった。


他の方々も流石に『萩月八家』の家長で有る。

それぞれに得意な術式を有していた。


羽田 (ひろし) (55歳)

明らかな【式神使い】だが、まだお互いの調律が取れずに苦しんでいる。

木場も長谷山も同じだ。

常義すらまだ繋がれていない。

赤魔石を使いこなす実力は充分にあった。

数多くの【式】を使える様で、蒼と同じ様に用途に応じた式を作り出す。

朝霧卓也の【式渡り】をなんとかモノにしたいと、足掻いている。


九鬼 修造 (55歳)

【身体強化】が出来るのは初見の時から想像していたが、意外にも器用で【創芸師】としても大成しそうだ。

蒼と兄妹の関係なので頷ける。

【探知の能力】も覚醒して、この駐屯地であれば人の存在と数程度なら判別出来ている。


両角 寿美(ことみ) (45歳)

これも予想通り。

予知の能力者でサトリ。

土の術師でも有った。

土蜘蛛使いだったという伝承もあり、大型の式神使いでは無いかと常義から聞いていた。


皆が赤魔石を受け取った。


両角の当主が、若菜を部屋の隅に連れて行き何か耳打ちして聞いていたが、若菜が真っ赤になりその後、「ダメです!絶対にダメです!」と逆に詰め寄っていた。

若菜の強烈な念話が届いたので状況は把握した。


寿美は若菜の急激な能力の向上と、赤い眼に気が付いていた。

そして、サトリの能力者。

どんなに若菜が能力は上と言っても人生経験が裏打ちして、友嗣との夜の生活と先程受けた魔素を全身に行き渡らせるトレーニングで感じた快楽。

友嗣が男性に使っても、場合によっては地獄の痛みなのだが、どうしても女性には違う様に働くらしい。

ルナから、その事を聞かされていた若菜は、夜寝る前には友嗣の魔素を全身に回して貰っている。

寿美は若菜の急激な能力の向上は、友嗣との生活に有ると見抜いていた。

そこで、

『友嗣さんを貸して・・・・・』と言って、若菜に逆に詰め寄られていた。

寿美はあのトレーシングをと思ったのだが、若菜はその先を要求されていると思っている。

寿美も満更ではないのだが、『流石にそれはダメでしょ』と思うだけの理性は有った。


いずれの家にも、次代候補が居るので、彼らには京都で会う事にした。



道東の発展を促進する為に結成されたコンソーシアムの事務所は、郊外の商業施設に接した住宅街の中にあった。

近くを流れる河川敷にヘリポートが設けてあって、これを利用している。

住宅街に近いこの場所に、こういった施設を許可される。

普通はあり得ない。

防災拠点と銘打たれているが、相当な力が無いと、ひとつの会社が半ば専用には使えない。

近くの国道沿いに消防本部と警察本部もあるので、そこにもヘリポートが存在するのにである。


先程、友嗣達が居た駐屯地の上空を通過したヘリから二人の人影が降り立つ。

ヘリは二人を降ろすと、彼等がローターの安全圏に離脱するや否や、ローターの回転数を上げて函館方面へ向かって逃げる様に飛び立った。

「随分な扱いだね」

「仕方無いでしょ。アンタと一緒に居たく無かったんでしょ」

「まぁ、何時もの事か。さて、お迎えは? アレかな?」

背の低い方がヤケに細長い指で、土手を駆け降りてくるワンボックスカーを指差した。

きっと小さい子供が見たら泣き出していただろう。

いや、もっと大きな大人でも震え上がったかもしれない。

運転席から大柄の男が、降りて来て長身の人物に声をかけた。

「お待たせしました。ヘリの中でお待ちだと思っていたのですが?」

「パイロットが降りてくれ!って、泣き叫んだからね」

「・・・・・それで、到着も早かったのですか?」

「吹っ飛ばしたよ〜 無線で高度と速度を守れ!って管制官が日本語で怒鳴っていたくらいだからね」

「それで、如何(いかが)でしたか?」

「どっちの話かな?」

「【真力】が湧き出る場所の特定と、自衛隊基地の件です」

「【真力】の方は良くわからない。元々、馴染みが、ある物じゃ無いし、飛び立ってすぐにもうあの調子だからね。でも、陸自の駐屯地にはゴロゴロ【月夜石】を持って居る奴等が居そうだよ? 100人くらい居るんじゃないかな? そこ、襲ったら良いじゃない。どうせ【月夜石】も持ってないんでしょう?」

「そうは言っても、100人の軍人相手は無理です。我らには『真力』も無ければ『月夜石』も、術を使える者もいない。あなた方の様に『符呪』が使える『道士』の教えを継いでいた者も死に絶えた」


「何の、泣き言を言っている?

自分達で金儲けに走って、『道士の教え』を学ばなかっただけだろう?

お前達の祖先はどれだけ祖国から『陰陽』を持ち出した?

なんの力も無かった、もう片方の祖先は、さも術が使えると借り物の『陰陽』を使い陰陽師を蹴落としたのでは無かったか?

争う陰陽師が『真力』を失い『月夜石』も砂粒と化してその力を失ったのに、そこで何故、『道士の道』へ戻らなかった? 

そうすれば、萩月を滅して陰陽道の連中を、排除出来たのではないか?


金と権力を得たからだろう?

そのうち、【陰陽師】としての、実力も権威を失った。

萩月は祭礼を取り仕切り、復興を信じて【術】を継承して来た。

それを今更、【真力】を取り戻し【月夜石】を再生出来る陰陽師が現れ、萩月に付いたから助けてくれ!だと?

このままでは、陰陽師の大家としての名を、名誉を失い、金と権力を失うと泣きついて来たのはお前らだろう?

我ら『道士』が、この一枚の『符呪』を描きあげるのに、どれ程の事をしているかも知らんくせに。

自業自得では無いのか『一条 (あつし)』?」


長身の方がフードを外して、手に一枚の札を握りしめて男に詰め寄った。

その眼は人の眼とは思えない、金色の縦長の瞳をしていた。

(蛇の眼だ)

一条篤は下がるしか無かった。

「姉さん寒いよ。暖かいところに行こうよ」

「ああそうだな。さて、何を食わせてくれるんだい?」

一条篤は『毒でも食っていろ』と毒付きたかったが辞めて置いた。

コイツらなら、とうの昔にやっているかも知れん。

車は、コンソーシアムの事務所に寄る事なく市内に入って行った。


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