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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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177 ユキメ

「おはよう。若菜」

「おはようございます。友嗣さん」

若菜は友嗣の腕に抱かれて、朝を迎えていた。

友嗣が張った遮蔽のせいで、朝から低く赤く届いて来る陽の光が遮られている。

(6時前か)

「確かに冬でも、朝が早いですね」

若菜は毛布を巻いて身体を起こそうとしたが、友嗣に毛布を剥ぎ取られてしまった。

露わになる若菜の裸体。

「陽の光で見ても綺麗だ」

「もう! ・・・・・でも、うれしい」


「8時ですよ。友嗣さん。9時にお迎えが来ますよ」

「そうだったね」

若菜は先にシャワーを浴びて、髪を乾かして居た。

その後ろ姿を見ている友嗣の顔が鏡に映る。

「ダメですよ! 他人を待たせるのは最大のマナー違反ですから。軽くシャワーを浴びて、レストランに行きましょう

私達の為だけに皆さん早く、家を出ていらっしゃるのですから」

「そうだね」

こうして、腕を組んで部屋の荷物を【収納】に仕舞い込んで部屋を出た。

荷物を探られたり、不審物を入れられたりするのはゴメンだ。

ただ、若菜が下着の類を収納させるのに躊躇する。

【収納】を若菜には教える気になった。

万が一の為にも、使える様になった方が良いか・・・・・

身内には甘々の友嗣である。


【遮蔽】は、ホテルを離れれば解除される。

「おはようございます」

「おはようございます。お待たせしてごめなさい」

「いいえ、パンケーキが焼きあがってしっとりしたところです。お席にどうぞ」

昨夜、サービングしてくれた女性(朝霧さん)が朝も世話を焼いてくれた。

ルームキーパーも彼女が務める。

細やかな気遣いができる女性で、御室さんの教育を担当された方で退官後、今は札幌で広報を手伝っていらっしゃる。

抜刀術(居合いとはちょっと違うらしい)の指南役として、羽田の幼馴染だ。

友嗣達が旅先を、鹿児島から北海道に変更した際に、有無重言わさずにホテルでの護衛を引き受けている。

食事を終えホテル近くの専門店で、スキーウェアやブーツなど一式を取り揃えてスキー場に向かう。

例年では11月中旬がスキー場のオープンの日だが、今年は、このスキー場には雪が早くから降り早くもオープンしていた。

その事を、スキー場の関係者から聞いて、リフトに並ぶ美咲を見るとニコリと笑った。

どうも、ココにも雪女が出た様だ。

道理で一番容量が大きかった【白魔石】が空になっていた訳だ。

他の隊員達も、そうかも知れない。

今日は、一般客に混じって滑っていて美咲は外してくれている

食事も普通に、食堂でスープカレーを食べたりした。

辛い物がそう得意では無い若菜には、甘口でも辛かったみたいだった。

慌てて水を、飲んでいる。

(そう言えば、サランがニガリが残った塩を舐めて、指に吸い付いたな)

と、昔を思い出してしまった。

口に含んだ水を思わず吹き出しそうになった若菜が、慌てて無理やり水を飲み込んで咽せていた。

目には涙を浮かべて必死に笑いを堪えていた。

「何それ!サラン姉さん可愛い!」

「アッ、漏れていた?」

「思いっきり、その光景が伝わって来ましたよ。そうか〜、あのサラン姉さんも、そんなお茶目な時があったんだ。そりゃそうだね。ねぇ、今もあなたの【黒石板】は記録を取っているの?」

「あぁ、私の魔素が続く限り撮り続けている」

「それって、夜の事も?」

「・・・・・撮っている。サランにでも見せないがな」

「それは、お願いするわ」

「サラン達の、昔の姿は見せていないな」

「そうね。聖地の事やウルマ島の今は写真で見ているけど、見ていないわね。見せてくれる?」

「今夜、一度サラン達に聞いてみてからなら」

「今夜は良いわ。アナタだけを見ていたい。仕事になっちゃう釧路でお願い」

「そうだな。俺も若菜だけを見て置かないと時間が勿体無い」

「そうよね。聖地に帰ったらどうするのかな?」

「何が?」

「夜の順番」

「・・・・・それは、君達で決めるしか無いよ」

「そうよね。アナタが決めたらハズれた妻は魅力が無くなった?飽きられた?って思うかも知れないしね。考えてみれば、大変ね。アナタも」

「・・・・・ さて、もう少し滑ってみようか。」

「逃げたわね。良いわ。五人で一緒に寝ましょう! どうせ、向こうにいた時もそうしていたんじゃ無い? ともあれしばらくは独占するわ。妊娠しても蒼に手を出したらダメよ!」

「・・・・・信用無いのかな?」

「信用も信頼もしているけど、蒼はアナタの子供が欲しいと思っているから余計に心配なの。家庭は要らないって思っている節があって、それは悲しいから・・・・・」

「・・・・・ 今は若菜だけが良いよ。今からもね」

「そうね。姉さん達に任せるわ。私もルクアさんの方が蒼にはお似合いだと思っている」

「サラン・・・・・」

ルクアの未来が、見えた気がした。


二人は、こうして昼はスキー場、夕方は札幌市内で食事を楽しんだ。

札幌最終日の夕食は朝霧さん、お勧めのジンギスカンにした。

中々、予約が取れない店で、若菜も知っていた。

ココは店内に入るとクロークが有って、コートやダウンコートを預ける。

貴重品も預かってくれる。


そう言った場所が無い場合は、店舗によってはビニール袋を渡される。

店内にロッカーが有りそこに入れておくのだ。

自動ドアを開けて中に入ると、その意味が解る。

ロースターの直上に換気用のダクトが来ていて、店内も、引いているが煙と匂いが強烈なのだ。

慌てて、薄く髪と衣服に【遮蔽】を展開した。


次々に、焼き上げては口に運ぶ。

全くラムの匂いがしない肉も旨いが、ラム独特の匂いがする肉も、それらを、かき消す様タレとの相性が良い。

実に美味い。

聖地でも羊肉は食べるが、やはりタレの威力だ。

肉の処理も数段違う。

日頃はこうした肉類より野菜を食べる若菜が、よく箸を出してご飯も食べていた。

ビールもよく飲んだ。

デザートのレモンシャーベットが、口の中をサッパリしてくれて満足した。

クロークで会計を済ませ、美味しかったと礼を言ってドアの外に出る。

【遮蔽】を張っていたが、やはり匂う気がする。

そう言えば街ゆく人達も、すれ違うたびにジンギスカンの匂いがする。

すれ違って後ろを見返すと、向こうもこっちを見て片手を上げて笑っていた。

「面白い街ね」

「そうだね。もう少しブラついてみようか?」

「それなら、アレに乗りましょう!」

指差す先には、路面電車が有った。

目の前の営業所で一日乗車券を買って乗り込んで市内を廻った。

「これは面白いな」

「昔、日本で初めて路面電車が走ったのは京都の伏見だって。でも、私が生まれた頃に無くなっちゃった。乗っていみたいなって思っていたの!」

「僕も初めてばかりだな。」

「みんなで来ようね。シュウ君ならきっと将来、聖地と浜の間に電車走らせるかも知れないね」

「そうだな。浜の村とサイスの海岸沿いを走る電車も良いね」

「そうね。海水浴もできる様にしようね」

「あぁ、そうだ、そうしなきゃな」

ジンギスカン 好き嫌い別れますよね。

仕事で北海道は彼方此方周りましたが、旭川の有名店がやはり美味しかったです。

滝川も捨てがたい。

でも、札幌の行き交う人が互いにジンギスカンの匂いさせて思わず振り返った時にやってしまう仕草。

懐かしいですね。

本州では秩父ですか。あ〜行きたくなってきた!


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