表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
178/926

176 シマエナガ

「岩屋友嗣様、若菜様。お迎えに参りました。『御室(みむろ)美咲』 2等空尉です」

確かに、これは他の人には真似が出来ない。

すぐに、迎えの人物と解った。

オマケに、彼女は若菜の式と同じ【燕の式】を飛ばして来て、自分の存在を知らせて来た。

もっとも、友嗣が先に周囲を探って彼女には気付いていた。

外に、待っていたのは【ハマー】

その前後には、アベックの男女が乗ったパジェロが停まって周囲に目を配っている。

明らかに、相手にその存在を知らせて牽制している。


友嗣は、もう一度深く『探索範囲』を広げて見る。

顔は、車に積み込むキャリーバックに向けたままだ。

(なるほど、そういう訳か)

車に乗り込む時には、後部座席を勧められた。

「済みません。急に彼らの動きが激しくなって、出来れば抑えて起きたかったのですが・・・・・」

「昨夜の婚儀の、せいでしょうね」

若菜が答える。

「気付いていたの?」

「友嗣さん。昨夜、萩神社の灯りが灯る時に北山の方を注視していたでしょう? そこに、黒いシミの様な物が見えましたから、何か違う物がそこにいると思いました」

「ふぅ! 潰して貰ったのに気づいていたとは・・・・・」

「お父様の式が向かいましたよね? 私達には『返した』と言ってらっしゃいましたが、見えていました。『大陸の道士』ですね?」

「そうです。車を出します。先行から合図が来ました」

「襲ってくるつもりでは、無さそうですね」

「そうなのでしょうか?」

「畏怖の念が強いです。御室さん達、何かやっちゃいましたか?」

「ウフフ。 羽田様がおっしゃる通りですね。相手にしたらこれ程怖い存在はないですね。アジトを【式】を使って雪で塞いだだけですよ。珍しくないでしょ?」

「室内を雪で塞いだのですか? それは、ちょっと有り得ないでしょう?」

「【雪使い】或いは【ゆきめ(雪女)】という【式】が使える様になった陰陽師が居るんです。岩屋様が羽田様に分けて頂いた白魔石で、家伝されていた術が使える様になって喜んでいますよ」

「そこまで、能力が高いと次の段階に行けますね? 新たな段階に進みましょう。雪使いの美咲さん!」

「ですね。魔石の補充は必要じゃないですか?」

「くっ! やはり、岩間家復興の鍵! 若菜様ですね。 はい!実は羽田様から頂いた白魔石はちょっと面白がって術を向上させていましたら、ほぼ空になっています。羽田様からは直接交渉してみろと言われました」

「車がホテルに入りましたら。荷物を運ぶのを手伝ってください。部屋で少し魔素の回し方をレクチャーをして黄魔・・・・・いや、赤魔石をお渡しします」

「・・・・・ありがとうございます。その時に指導頂けますか? その【探査の術】」

「相当に優秀ですね? 美咲さんは?」

「友嗣さん。美咲さんは『御室』が姓です。室の本家です」

「そういう訳ですか! でも、貴女の中に萩月への変な意識はない」

「室と御室は、祖先は一緒でも違う一族です。きっと美咲さんが私達に付いたのは父の計らいでしょう。御室は室に滅せられるところだったのです。その一族を救ったのが岩間家でした」

「詳しくは解りませんが当時の御室と岩間の次期当主は、仲が良かったそうです。そこで、京都から東京へ移る際に行動を共にした。その時に、色々と手を借りたと口伝されています」

「そうですか。しかし、前後の車の方々も中々の腕ですね。この車を『風の壁』で包む様にされている。何度かこの車に張り付こうとした【符】を吹き飛ばして居ますね。どうやったのかわからないですが道路に何重にも重ねておいたらしい【符】の束を押し付けてもいる。この方々にも来て貰った方がいいですね」

「友嗣さん。そんな事まで解るんですか? 私には黒い手の様な物が、弾き飛ばされているのは感じれるのですが?」

「若菜様の方がよりイメージとして強く見えるのですね。胸の青いペンダントのせいでは無いでしょか?」

「美咲さんは、真力、魔素どちらも視覚的に見える能力も潜在的にお持ちだ。彼女達を羽田さんと九鬼さんが重視されて助かりますね」


「さて、ホテルに着きました。フロントには向かわなくて良いですよ。こちらへどうぞ」

「荷物は私が【収納】に入れますね。その方が動きやすい」

「【収納】はまだ誰も使える様になって居ませんね。是非、習得したいものです」

「こればっかりは、おいそれとは教えられません」

「何故ですの?友嗣さん?」

「もっとも、危険な能力ですからね。悪用すれば、これ程相手に取って厄介な術はないですから。萩月の道場でもまだ誰にも習得指導していません」

「確かに。重量規制や各種検査、スルーですからね。やはり、信頼を勝ち取る事と制限が必要ですね。どんな組織も漏れない構造では有りませんから」


エレベーターで上階に向かう。

「この階、全てがご使用になれます。上下階は空けて有ります。実はこのホテル。オープンは未だなんですよ。工事は終了して、道の検査も終了して居ます。20日からプレオープンで12月1日が初日になります。

今後、この階には萩月の関係者以外は宿泊させません。ルームキーパーも関係者です。

呼ばない限り誰も入って来ませんから、ノックした者は敵と考えて下さい。と言っても、お二人なら直ぐに武装解除出来そうですね」

「怖い話ですね」

「それだけ、【真力】を取り戻した【陰陽師、萩月一門】が脅威なんです」


【式】を放っていたらしい。

「大丈夫ですね。どうぞこの部屋をお使いください」

と言って消火器の箱にカードをあてた。

何もない壁が開いた。

(隠し扉か。上手く隠している。羽田家にも蒼の様な創芸師がいるのだろう)

中に入ると大きな窓の外に札幌の街灯りと、深々と降り始めた雪が見えた。

「冬は、この様に日が沈むのが早いです。釧路ではもっと早く日が沈みます。16時には車はライトが必要ですね」

「早く免許を取らないとな」

「ふふ、ドライブ行きましょうね?」

「若菜様は免許証はお持ちでは無いのですか?」

「ペーパーですね」

「それでは釧路の、駐屯地で遊んでみますか?軍用車をベースにして居ますから、楽しいですよ」

「ちょっと、怖いから考えておきますね」


白い丸っこい鳥の【式】が、美咲の肩に現れた。

「後一時間で、お食事の準備が出来るそうですが如何します?」

「うわー、可愛い!」

「ですよね〜『シマエナガ』です。私も【式】が使える様になって『白い燕』で良い気になって居たら、先輩にこの【式】を使い出されてショックでした。『しまった! コイツが居たか!』ってね」

「私も、取り入れてみようかな?」

「北海道は鳥が多いですから、こう言った伝達系の【式】は鳥だらけです。マリモなんて使って馬鹿にされた上官も居ましたが、今では皆に受け入れられて居ますよ。それでは、このカードお渡しします」

「アッ、美咲さん。魔素の回し方今やっちゃいましょう。直ぐに済みますから」


『後だと、邪魔になるでしょう?』

『あぁ、そうでしたね!』


上気した顔をして美咲が部屋を出て、空いた他の部屋で、身体に残った火照りを覚ましている頃。


若菜を抱き締めて、口付けをして居た。

色々と友嗣も限界に近い。

必死に感情を押し殺して、唇を離す。

「意地悪・・・・・」

互いの身体の火照りを覚ます為に、若菜を抱き締めたまま近くのビルの屋上に転移した。

「ふぅ〜 やっと二人になれましたね。」

「そうですね。あのホテルの周囲の屋上には結構、臥せている人が居ましたから」

「気づいて居ましたか? 随分と成長されましたね。若菜さん」

「少し、怖いですけどね。でも、自分とあなたと家族を守る為には仕方無いですから」

「さて、戻りますか、美咲さんが部屋の前で待ってらっしゃいます」

「お腹空きました!」

「僕もです。そう言えばお昼食べてないんじゃ?」

「そうですよ! 晴美さんが作ってくれたクラブハウスサンドウィッチしか、口にしてませんでした!」

「行きましょう!」

「食べるぞ! 北の大地の恵み!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ