171 お仕置き
桜の変わった能力。
自分の事だけだが、相手や状況を設定して妄想しだすと、その結果が見えて来る。
これは、とんでもない能力の可能性がある。
友嗣はルース宛に手紙をしたため、ダイア達の意見を聞いて欲しいと桜の写真と栗林の写真そして無理矢理、館林の書斎で二人で並んで写真を撮って、栗林に若菜が桜の能力を説明した。
つまり、
『桜が栗林との結婚を望んでいるがどうするか?』
と、本人を前にして聞いたのだ。
『後は、宜しく』と言って二人っきりにした。
「桜さん。あの〜俺、こう言う事初めてなんで上手く言えないんですけど」
「・・・・・はい、解っています」
「・・・・・ふぅ〜 ヨシ! 桜さん! 俺と付き合ってください。もちろん、結婚を前提としてお願いします」
そう言って、真っ直ぐ桜の方へ両手を広げた。
「はい! 喜んであなたの妻になります」
桜が栗林の腕に飛び込んだ。
(普通は片手を出して、受け入れたら握手じゃ無いの?)
(桜さんも、いきなり妻宣言!)
しばらく栗林は桜の髪に鼻を埋めて、その香りを嗅いで幸せな気持ちになった。
「栗林さん。プロポーズはちゃんと別の場所でしてくださいね」
「はい?」
「ここには、覗く人が居ますから」
「エッ!どこですか?」
「その、書棚と天井の隙間に若菜さんの【燕】」
「そこの、サボテンの鉢の【小石】が蒼さん」
「友嗣さんが、【遠見の陣】で、図書室から見ています」
「トモツグ〜!」
この事は、常義から一矢家と栗林の実家、そして長谷山へと伝えられた。
栗林 仁は次男坊で、長男の栗林 誠は現在、警視庁で勤務している。
後、五年もすれば35歳で退官して鹿児島で暮らし出す。
鹿児島の道場の師範代は兄に任せて、自分は何としてでも『一矢仁』として萩月の道場で師範代になって見せる。
無茶苦茶、やる気になった栗林は前から気になっていた術を釜に聞いていた。
あの鹿児島の道場でやっている、部分的な筋肉や打突を受ける部分への強化についてだ。
「あぁ、あれね」
そこで釜は、友嗣がやっている真力の回し方をした後に、強化したい部分へ真力を回す方法を教えた。
最初は中々上手く行かなかったが、次第にコツを覚えると打突が当たる瞬間に、その部位を硬くする事ができるようになった。
剣を使う門人に最初は腹そして胸、最後には急所の喉仏への竹刀により突きを受けてみる。
流石に急所の喉仏を突くにしても、剣道の防具を付けていないので躊躇したが、『突き垂』を貼り付けてかかって来させた。
『耐えれる』
そうやって、次第にスピードをあげてやっていたが、首筋を削られて切ってしまった。
そこへ、友嗣が転移して駆けつけ栗林の傷を塞ぐ。
【遠見の陣】で道場の様子は常に見ていた。
「危ないことするなぁ〜」
「イヤイヤ、済まん済まん。つい避けてしまった」
栗林は相手の突きがズレたせいではなく、自分が首を無意識に、かわしたからだと謝った。
(コイツ・・・・・)
友嗣は全ての門人を集めて前に立ち、個々の真力を回させてみた。
やはり、今の局部を守る身体強化をしているせいか、釜と栗林の真力の流れが歪になっている。
(次の段階に進ませるか・・・・・これ以上、この状態が進むと修正が大変だし・・・・・見せしめになってもらおうか!)
「長谷山さん!次の段階に行きましょう!」
「どうするのかな?」
「今まで【白魔石】を使って、細く真力を使って来ましたが。今日から、その量を上げて【全身の身体強化】に移ります」
門人達から一斉に、歓喜の声が上がる。
「遂に、全身の身体強化だ」
「友嗣さんが言っていた、本気で打ち合いができる」
「怖いな〜」
「防具着けるよりは、痛くないって言ってたぞ」
「ただ、個人差が出て来ていますから量は毎週調整します」
「皆さん前に出て、魔石を出してください」
一人一人白魔石を右手の掌に持たせて、その上に友嗣が手を載せる。
左手を出してもらい魔素を体内に回させる。
これで、相手の魔素に対する処理能力が判る。
蒼と桜そして若菜にもやった事だ。
秋子や茜は常義がやってくれている。
最初は、あの合気の有段者の娘だった。
まだ幼いが、自分が陰陽師で有ると理解していて外では話さない。
今、建設中の一門の為のマンションにいずれ住み、京優学園へ入る事になっている。
本人も自分に何か不思議な力があると感じていたし、両親が進めるので母と同じ合気を選んでいた。
少女の掌の白魔石の【真力】を抜いて友嗣の懐の赤魔石に移す。
ゆっくりと白魔石に【魔素】を移して、その一部を使って身体に【魔素】を回す。
この娘、良い術師になれそうだ。
その能力を見定めて流れ込む量を調整した。
「はい。終わり。今日は、身体の中に残っている分だけで術を使うように。新たに魔素を供給すると気分が悪くなるからね。それから、今日は早めに帰ろうね!」
こう言って、この親子は早めに済ませて帰らせた。
良い子には見せられない光景が、この後続くからね。
こうやって次から次へと調整をして行く。
釜と栗林の番だ。
(ちょっとばかし、勝手をやった二人には、このくらいやってもらおうか・・・・・)
「随分と【真力】を回す量が、上がりましたね」
「そうですか?」
嬉しそうに釜が頷く。
「それじゃ、二人は一段階上に行きましょう」
そう言って『黄魔石』を渡した。
「これは?」
「【黄魔石】です。白魔石よりも容量が大きくなって、流せる【魔素量】も大きくなります」
白魔石を返してください。
周りの門人からは二人を、羨む声がする。
(今のウチだろうけどね〜)
二人から白魔石を受け取り、個人を特定していた【陣】を消し去る。
「それでは、釜さん。やり方覚えてくださいよ。長谷山道場に帰ったら、皆さんに同じ事やってくださいね」
そう言うと身体の中から、【魔素】を黄魔石に移して行くそして、そのまま釜の身体の中を【魔素】が巡るようにする。
「ウォ〜これは凄い!力が湧いてくる・・・・・ ちょ、ちょっと待って、気持ち悪い〜 痛ッ、痛い! な、なっ何するんですか! 友嗣さん!」
「いや〜 あんまり勝手に【局部強化】なんてやるから、【魔素】の流れがメチャクチャなんだ。それをリセットしないといけないからね。もうちょっと続けるからね〜」
釜が痛みと、気持ち悪さにのたうち回る。
「はい、終了! 黄魔石は明日渡すね。今日は自室で唸って過ごしてね、食事は多分吐いちゃうから、飯抜きで! はい! みんな! そこの幸せクリチャン!捕まえて!」
「な、なっ何が幸せクリちゃんだよ! ちょっと待てお前ら本気でやるのか? 俺も、身体強化かけるぞ!」
「大丈夫! 三人でかかれば! 皆んな全身の身体強化やってごらん。ねぇ、大丈夫でしょう? はい、クリ! 諦めてここに座る」
「アッ!テメ〜友嗣!裏切り者!」
「釜ちゃんが寂しいってさ! はい、いらっしゃいませ〜」
こうして、栗林も釜と同じ様にとはいかず、数段上の状態で部屋に飛ばされた。
やはり栗林の方が、能力が高い分修正には時間と強さを必要とした。
「今夜は二人共:うるさいから『遮音』かけておくね」
「あの〜仁さんが、大変な目に遭っているって聞いたんですが・・・・・」
桜が、騒ぎを聞きつけてやって来た。
ほんと優しい、奥様だ事。
この二人は長谷山夫妻の媒酌で三月末、桜の時期に結婚する事が決まった。
【遠見の陣】で床に潜り込んで、痛みを堪えている栗林の様子を見せてやる。
入れない様にはしてあるし、女人禁制エリアだ。
彼女は今夜『桜の花びらの式』を飛ばして、仁を慰めるのだろう。
釜よ!邪魔するんじゃないぞ!
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