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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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169 トビウオ

萩月家の一人娘の『萩月若菜』が、再興した萩月一門の『岩屋友嗣』と結婚する。

この事は色々な憶測を呼んだが、各方面への影響力を持つ『萩月常義』の娘という事もあり、招待状を受け取った者達の多くが出席を告げて来た。

萩月家へ数々の犯罪的な行為をして来た一条は辞退するかと思われていたが【真力】を得る為の繋ぎとして夫婦での出席を申し出て来た。

一連の所業は、あくまで先代の『譲』が孫の『豊』可愛さに、やらせていた事であり、その『豊』も行方不明になっていて廃嫡し、慰謝料、迷惑料を若菜本人と萩月家、更には京優学園に寄付金として各一億円を『譲』が支払ったので、これで手打ちにしたとの態度を取っている。

室からも萩月家には手を出さないと、当主自ら連絡して来ている。


だが、『岩屋友嗣』に対しての身辺調査は開始される。

今まで全く、その素性が明かされていなかった名前が知れ渡り、あの途絶えてしまったと考えられていた【萩月八家】の一つ岩屋家の子孫という事で、早速、家系図をもとに調査がされた。

しかし、岩屋友嗣と言う名を彼に名乗らせる事になった時に、羽田達が戸籍を作る為のカバーストーリーを作成したのだ。

抜けがある訳が無かった。

岩屋家の家系図を調べ、戦時中に長谷山を頼って疎開させられた少年が居た。

戦後、成人し結婚した彼は婿入りして、長谷山家の説得にも応じず『岩屋』の名を捨て陰陽師として暮らす事を辞めた。

彼達の住まいはダム湖に沈み、一家は東京に出て静かに暮らし、その生涯を閉じた。

そこで、友嗣に繋がる新たな岩屋一家を作り上げて、長谷山の指導を受けていた事にした。

調査に来た一条、室の門人は、作られた【カバーストーリー】しか得る事ができずに京都へ帰った。


長谷山の門人の中に、ダムに沈んだ、この村の事を知っている友嗣と同じ歳の頃の『(かま)』が、萩月の道場に呼ばれて友嗣に記憶を渡した。

バイクでのツーリングで何度も訪れていたらしい。

友嗣が、その中に『気になる光景』があったので木場と長谷山で調べる事となった。

鹿児島県と宮崎県に跨る『えびの高原』の奥まった谷間(たにあい)の村。

そこに、バイクで訪れる理由は『隠れ湯』の存在だった。

村人の共同湯だったが、人口の減少で小さな『立ち湯』だけが残されていて、掃除をして初めて湯に入る事ができる。


谷川と星空を見ながら湯に入る。

これが楽しくって、一人でツーリングをして来ている。

ここに、テントを張って夜を過ごし、朝にもう一度風呂に入る。

彼の視線に先に【祠】らしき物が見えて、【岩の切れ目】が見えていたのだ。

だが、本人に聞いてみたが【祠】や【岩の切れ目】を見た記憶が無いと言う。

(認識を阻害されている? なんらかの【術】の存在が考えれるな)


そこで、ますます気になって木場が国土地理院の地図を持って来たが、確かに谷間なのは間違いない。

現地に他人を行かせるのは危険だと判断して、釜の実力を見る事になった。


真力を籠めた白魔石を渡して道場で術を使わせてみた。

鹿児島県の道場でも使ってみているが、身体の動きを早める事と打身や打撲、捻挫を治す程度しか使えなかった。

萩月の道場では【式】、【符】を使った術が主流なのに対し、長谷山が開いている道場では武闘派が主流で自らの身体に使う術が主流だ。

(【身体強化】に特化しているかな?)


友嗣は、釜に術の発動に真言や印を結ぶ事を辞めさせて、【真力】を感じ、それを身体中に循環させる事に集中させた。

これを繰り返し行う。

時には、ゆっくりと全ての指の先にまで【真力】を行き渡らせる。

そして、時には身体の中心だけを回していき、素早く【真力】を身体から放出する。

これを繰り返させた。

常義と若菜も、この訓練方法をやってみている。

こうして、友嗣と言うより【ルースの訓練方法】が伝わっていく。

これが出来る様になれば、術の発動に【真言】を口にせずとも良い。

若菜が【式】を飛ばすのに真言は、取り出す際に心で唱えて【式】を【真力】で押し出す。そんな感じだ。


これが出来ると、今までの術より強い術が出来る様になると告げ、くれぐれも【炎系の術】を使わない様にと念押しして置いた。

しかし、不安が胸を横切り道場の内側に【障壁】を張って、【遮音】を巡らせて置いた。

改めて釜にも【式】と【符】を使わせる。


真力を【式】に注いでいく。

彼に学ばせているのは【探知】と【伝え】。

今は調べる事を優先して萩月が使う【和紙】にアーバインの探知と知らせの陣を【魔墨】を使って描いてある。

釜は常義の指導を受けて使える様になった。

【探知】は特に【真力】に反応する様に、萩月の庭で訓練させた。

【式】を操るには慣れが必要で、繰り返し行う内に萩月の庭程度で有れば【式】ひとつで、探し出せる様になって来た。

更に鍛錬を重ね一気に10体もの【式】を同時に飛ばして複数の【真力】を同時に探知できる様になる。

これを利用すれば上空から、複数の目で敵を見つけれる様になる。


【式】は人型か鳥か昆虫の類を模する事が多いが、彼の場合は魚の姿で『翅』を持っていた。

友嗣が知らない魚だ。

釜が笑いながら【式】を操る。

「まさか、【飛び魚】の姿をした式とは思いもしなかったな」

長谷山が、言うには鹿児島の沖合や西海岸で、手に網を持って海面を低く飛ぶ『飛び魚』を掬わせる漁をする観光業者もいるそうだ。

「そうやって、採った奴が美味いんだぜ!」

と釜が自慢げに話す。

なんでも、彼の出身である港街から観光船が出ると言う。

「それは、是非やってみたいな」

「あぁ、鹿児島にも来るだろう。桜島は驚くぜ!」

「あんまり無理はするな。『一条』や『室』が、目を光らせているから気をつけてくれ」

「長谷山さんにもそう言われている。慎一の落ち度を晴らす為にも命令は守る。それに、九州でも雪が降るんだ。バイクしか行けない様な場所だから除雪されていない」

「済まないな。いや、釜さんは【式】の扱いがうまい。【身体強化】も、一部使えると言うならどうだい?しばらく、萩月でもう少し鍛えてみないか?」

こう友嗣に誘われて、釜が長谷山に必死に眼で訴える。

「良いだろう。春までここで修行を続けるが良い。友嗣がこう言うんだ。お前に何かの才能を感じているんだろう。

化けてみろよ!」


「ありがとうございます!憧れだったんです。この道場に来る事が!」

数日後、釜の両親から萩月の厨房に【冷蔵】でいくつもの箱が届けられる。

晴美は聞いていた様で、その夕方に告知を出した。

明日の朝食は和食のみ!

数量限定! トビウオの一夜干し定食!


この、分を描いてる最中に九州物産展が開催され、トビウオの一夜干し買ってしまいました。

身がまとまっていて、骨から外れやすく食べやすいし大好物です。

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