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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
168/926

166 所長

ヘルファの加工は思いの外、時間を要した。

【魔素】か【真力】を籠め無いと、レーザーで厚み0.5mmの板に穴を開けるのも大変なのだ。

【魔素】か【真力】を籠めて加工した後に、魔素、真力を抜けば、こちらの世界にない防御に優れた装甲が出来上がる。

これは、もう国家機密どころじゃ無い。

回収した、金属粉は友嗣が収納に収めた。

次回の【転送】の際にアーバインに送っておこう。

原版は明日以降に加工する事にした。

【秋茜】が常義の肩に留まり、遥か上空に駆け上がって消えた。

「屋敷の周辺に張って居た連中が入れ替わった様だ。技能がはるかに落ちる連中が残っているので、こちらを探しに腕っこきが来るだろう」

「秋子さんは、九鬼との繋がりはバレているのかな?」

「どうでしょうか? ですが九鬼の一門もヒビが入っているかもしれません」

「余りにも長すぎる空白は、組織にヒビを入れる実例だな」

「友嗣くん。青山さん親子と周辺に住んで居る方々は、逆に目についた方が良いが、私達は一旦戻ってアリバイ作りに一条の連中に姿を見せてやろう」

「私の車はどうしましょう?」

「奥に車を回してください。【転送】で萩月か館林に送って置きますよ。準備出来るまで消して置きます」


桜が車を外からは見えない位置に停めると、友嗣が【魔絹布】で包み込んで術をかけた。

一切姿が消えて向こうが見える。

「触って良い?」桜が聞いてくる。

「大丈夫ですよ」

桜はゆっくりと、近づいて愛車に触れた。

「本当に見えなくなっているんだ」

「すぐに、館林に持っていきます」


常義達は校舎の二階にあがっている。

友嗣の【遠見の陣)と季節外れの秋子の蜻蛉が、黒のセダン二台に乗った連中が温泉施設に入って行ったのを伝えて来た。


入浴施設で聴き込みをしたんだろう。

目立つ美人の集団が記憶に残らない訳がない。


グラウンド内に、二台の黒のセダンが突っ込んで来る。

私有地なので、不法侵入なのだがお構いなしだ。

入浴施設施設に残った男が一人、公衆電話をかけている。

自動車電話では、電波が入らなかった様だ。

こちらは蒼が姿を消した小猿を使って電話が繋がりそうになる度に受話器のレバーを操作して切ってしまう。

とうとう、公衆電話が故障したと考えたか、事務所に飛び込んで来て勝手に電話を使い始めた。

公衆電話を使い事務員が警察に電話をかける。

「強盗です! 金庫に手をかけて居ます。他の連中は廃校のアトリエの女性を襲いに行きました!」

「二台の車です。七人でアトリエに行きました」

「おい!消防団を出せ!コイツらタダで返すな!良い根性してやがる。山の人間舐めるなよ!」

サイレンが鳴り響く!


グラウンドに、飛び込んだ車から男達が降りて来た。

「あら、どちら様かしら? 娘の作品の買付けは代理店を通してください」

「ここに、萩月の木場と岩屋が居るだろう!京美堂と萩月の娘も居るのは解っているんだ!痛い目に遭いたくなかったらそいつらの居所に案内しろ!」

「あらあら、この土地は今、青山家の私有地なので不法侵入に脅迫、強要ですか?」

「うるさい! つべこべ言わずに案内しろ!」

「ちなみに、この会話は録音されて居ます。脅迫と不法侵入は覚悟してくださいね」

胸に付けたワイヤレスマイクを指差して秋子が煽る。

アトリエから蒼が手を振っている。

秋子は何か棒を、握った様な構えをしているが、男達には何も見えない。

「あそこだ!あの部屋に踏み込め! 萩月のジジィを叩きのめして娘を攫え!婚約者の野郎は袋叩きにして川にでも流せば一条家が何とかしてくれる」

「おやおや、雇い主の名前をあげてしまうとは、頭おかしくないですか?」

鳴り響く消防団のサイレン! 

「逃げ出すなら今ですよ? じき、警察も飛び込んできますよ。京都市内の警察なら兎も角、こんな田舎じゃブタバコ入りは確実。出して貰えるか疑問ですね。尻尾切りって言葉、知って居ますか?」

「うるさい! 今は俺がリーダーだ!後継者争いが始まる前に名をあげておくぞ!」

男達が、校舎跡の玄関に向かって走り出す。

秋子の腕が回転して伸びたと思ったら、『バキ!』と音がして先頭の男が転び、後に続いた男も転んだ。

「てめー! 何をしやがる!」

「何も? 勝手に転んだんでしょう? 鍛錬もせずに車に乗ってばかりだと脚が衰えますからね!」

左手に持った訓練用の薙刀をトン!と足元に突いた。

「見えない棒?」

「棒とは失礼な、今は刃を落として居ますがいつでも、刃を起こせますよ? 脚の一本切って見ます?」

秋子が倒れている男の裾を払って見せた。

音がする事なく、ズボンが切れる。

「テメーそんな物持って居たんなら、捕まるのはテメーの方だぞ!」

どうやら、獲物は持って居ない様だ。

持って居たらそれはそれで、楽しかったのに・・・・・

「誰が信じます? 見えない薙刀で斬られただなんて? 頭にウジが湧いているんじゃないですか? それより、騎兵隊が着きましたよ」

消防団員がポンプ車に乗って奴らの車と、一条のチンピラの間に割って入った。

秋子に向かって目配せをするのは、あの温泉施設で啖呵を切った所長。

団員達がすぐさまポンプ車から飛び降り、消火用ポンプを起動させる。

消火栓まで、ホースを引き伸ばして消火栓を開けて放水態勢に入る。

「うちの町の住民を寄ってたかって襲おうとした様だな?」

こちらに向かって、殺意を剥き出す男にも怯むことはなかった。

「しかも、なんだそれ?」


倒れた男達の手には火炎瓶が握られている。

もうひとつの手には、ライターが握られていた。


(本当、なんでもありね。 後で売店には謝っとかなきゃ・・・・・)

秋子は蒼の傍から、こちらを見ている娘の婿に欲しい男の姿を見た。


この火炎瓶は、奴らの車から抜き取ったガソリンを、入浴施設の売店から拝借した瓶に移し替えて、倒れた男のポケットから抜き取ったハンカチを詰め込んだ物。

ライターも売店から拝借している。

温泉施設で騒いでいた馬鹿は、こちらに駆けつける前に所長が強盗退治で私人逮捕してふん縛っていた。

男が電話を使おうとした場所が、出納係の机で片手が手さげ金庫の取っ手に触れているから証拠はバッチリだ。

電話をしようとしていた何箇所もの電話番号は、見えない小猿が何度も切ったおかげで電話にいっぱい残っている。

後で調べが行くだろう。


慌てて起き上がり、校舎に向かった男達。

火炎瓶に火が移る。

「現行犯だな!放火犯を取り押さえろ!」

この時には秋子はバク転でその場から離れていた。

警察車両もグラウンドに突入して来る。

「放水開始!火炎瓶を吹き飛ばせ!」

所長の号令一発!強烈な水流が、七人の男達を襲う!

どんな、格闘技の猛者でも放水ポンプの威力には敵わない。

すぐさま、足元に水流を集中され転ばされて顔に目掛けて放水が続く!

流石に本気でやったら眼球が危ないので水圧は落としてあるが、呼吸を妨げられて水を飲んで、たちまちグッタリして駆けつけた警官と消防団員に捕らえられる。


取り調べに対して黙秘を続ける男達。

だが、不法侵入、強盗、恐喝、しかも、放火未遂に火炎瓶所持。

車からいくつかの銃刀法違反を示す獲物まで出てきて、車の所有者の『一条 豊』に指名手配がかかるのは止められなかった。

残っていた電話番号と返答した声が、電話機のテープに残っていて一条家にも捜査の手が入る。

羽田と九鬼が警視庁に圧力をかけたのだ。

関西地区の有力議員の横暴を、苦々しく思っていた府警と警視庁が検察を動かした。


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