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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
162/926

160 原版

一枚目の原版が出来上がり、次の加工の為に、蒼がエァーライン・マスクを使ってチャンバーを清掃している。

金属の微粒子が舞って居るからの措置だ。

彼女は、非常に用心深い。

『大学の研究者なら、平気で頭を突っ込む奴が居る』

と木場が蒼を褒めていた。

医師としては金属粒子を吸い込む様な軽率な行動は自殺行為だ。

先にあがった原版は洗浄機にかけられている。

桜が皆に手描きではなく版画を使う事になった経緯を話し、友嗣が地球と聖地を繋ぐ転移陣が距離が有る為か一番外側の紋様が違って居る事を説明した。

一番外側の紋様で陣が繋ぐエリアを定めていて、その中で内側の紋様で繋がると、そう考えている。

転移陣なので陣が置かれた場所から、対となる陣へ物を運ぶので今回この場所からでも送れる。

今、作り上がったのは地球から聖地に送る分。

洗浄が終わったらこの原版を使って【陣】を重ねていく。

友嗣は、この作業を桜と蒼に頼む事にして、ふたりに赤魔石で作ったペンダントを渡している。

もちろん、若菜の前で彼女の了解をとって互いに着けて貰った。

白美の眼が怖い。

「なんだか指先に、私とは違う意識がある様な感覚が有るんですが?」

「私は、なんだか頭の中に色んな言葉が渦巻いている」

「アッ! それ【真言】なんですよ!私も最初、解らなかったからお父様に聞いて、読んだ事が有る言葉だと気づいて覚えるようにしました。友嗣さんから頂いたペンダントには【真力】よりも強力な【魔素】が籠められています。それで私達、陰陽師の中でも特に目覚めやすいみたいです」

「桜さんが感じている指先の感覚は紛れもなく、【創芸師】の物だね。これからが楽しみだ。それで萩、どうだった?」

「間違いありません。この地は【真地】でございます」

「真地?」

「あぁ、萩から聞いた時には我が耳を疑ったぞ」

常義が、考え深げに校舎の裏山を見た。


ここは、月夜石が採れた場所【真地】だ。

山の斜面や地中に魔素を吸引する存在が、感じられている。

これで、【魔石】の事を気にしなくて良い。

真力を得る事は、各地に【真力の泉】らしき場所の存在が明らかになって来ている。

しかし、それを使う為には陰陽師は友嗣が持って居る魔石に頼る事になるが、それでは数に限りが出る。

ここで見つかった【真地】で月夜石を勾玉に加工して、萩月の門人に渡せる様になればより一層術の研鑽が積める。


「友嗣さん。【真力の泉】についてだけど、話しておきたい事が有るの。今日、学園に登校する際に、一条家の長老で有る『一条 譲』って方が、やはり私達に妨害を仕掛けて来て白美と私が直接対応する事になったんだけど、途中から記憶が無くて・・・・・」

「巴様が、お出ましになられましたか?」

「どうしてそれを? 」

「相手は一条家の老人だ。白美が居るから心配無いが、揉める事なく事が済んだと言う事は、交渉が出来る人物がそこに居たと言う事ですよ。白美には無理だろうな〜若菜の事で煽られでもしたら車の中に【狐火】放り込むか、【深泥池】に飛ばしただろう。なら、何が起こった、誰が居た? 巴様が若菜の身体を借りた。そう結論が導き出されるよ。この頃では、そう言った不思議な事が信じられる様になった。そうでしょう? 巴様?」

「フン! 後で驚かそうと思っておったのに、気付いていたか婿よ。白美に言った通り顕現して私の婿にしたいぐらいだ」

「巴様!」

白美が、自分の胸元に向かって怒鳴る。

常義や木場は、あまりの事に声も出ない。

桜と蒼は、銀のスーツに身を包んだ秘書の胸元から声がしたので驚いている。

若菜はやっぱり、そこかと睨んでいるし、萩に至っては白美を睨んでいる。

「加賀の国、今の金沢市の東南に連なる白山の麓にも【真力の泉】が有る。こちらは術が緩く早めに押さえておく事を勧める。しかし、一矢(ひとつや)が再興し、まさか青山に繋がるとはな。もうこうなると誰かが仕組んだとしか思えない」

(巴様もそう思って居るのか・・・・・)

「青山については九鬼と長谷山で調べておけ、蒼とやら、母の実家は何を生業にしておる」

「アッ!はい。海産物の問屋をしていて首都圏への販売が主です」

「縁故の者に、武術者は居ないのか?」

「従兄弟が古武術の道場をやっています」

「傍流が故に陰陽師から外したか・・・・・ほんに明治政府のアホタレが西洋かぶれしおって、奴等は日本国内への宗教侵略の邪魔になると陰陽道を排除しおった」

巴様が『お怒り!』である。


「常義! 聞いてのとおりじゃ!色々と忙しいが冬を過ぎると旬が終わる。早めに、青山に縁のある場所を探せ。新婚の二人に探させればすぐに見つかる。若菜の真力の流れを読む力が見つけてくれる。青山の実家に頼みなさい、良い品を準備をしてくれる。晴美が喜ぶ!任せたぞ友嗣、若菜!」


「白美?」

「・・・・・はい」

「なんだか巴様が、言っていた言葉の中に関係が無い台詞が随分とあった気がするのだが?」

「はい、冬を越える前に越前蟹を食べて帰りたいと言う欲望と、土産も青山様のご実家から送ってもらい、定期的に北陸の幸を萩月で食べる為の手立てを打てと言っておられます」

「でも、巴様は顕現できていないじゃ無いか?」

「ですから、その時は若菜様の身体に入って、ご堪能されるつもりだは無いかと察しております」

若菜が自分の両肩を抱いて嫌々をした。

色々と問題がある女当主だった様だ。

この性格が後に、あの人に影響を与える。


なんだかんだで、二種類の【転送陣】が出来上がった。

流石に目指した十五層は無理で、こちらから聖地に送る陣は十二層でとどまり桜と蒼が残念がった。

向こうからコチラに送る為の転送陣は15枚の白石板に印刷をして、原版と共に【保護の術】の重ね掛けをしておいた。


一緒に送る物は、兼ねてから若菜が選んでいて友嗣の【収納】に収められている。

この為に、若菜は友嗣からアーバインの言語についての知識をサトリの力で受け取っていた。

友嗣、若菜、そして萩月一門の写真と甘味、そしてアーバインの言葉を充てた絵本。

便箋や画用紙、ボールペン、クレパス、などの筆記具や文具も入れて置いた。

そして、ルースから頼まれた時間を測る為のストップウォッチやデジタル時計を数多く、大慌てで使い方を書いてコピーを着けて箱に入れた。

日本の写真、京都やいろんな観光地の絵葉書。

調味料。

三人の姉達への贈り物。

更に使い捨てカメラを使い方を書いて送った。

隙間を詰めたのはキャンディと使い捨てカメラだった。


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