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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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144 怒り

「お父様、友嗣さんの事も予言されていたの?」

「いや、そこまでは無い。だが、今考えればそこまで、いやこの先も、私と時恵の出会いがこの地球側での始まりで、友嗣くんが転移してきたのがアーバインでの始まりなのだろう。後は知っての通り、高野山側の反対を押し切り私達は結婚した。時恵は18歳で美しかったからな、周りが反対するのは解りきっていた。だが、久様と一光さんが強引に話しを進めた。あの人は寺を、大僧正への道を捨てて裏高野に廻ったのさ。そして、今に至る。高野川の上流の土地を買えたのも、資金は一光さんが肩代わりしてくれた。萩月はもっと金がいると言ってな。御山への意趣返しでも有るらしい。ことの発端がもし、他の宗派や陰陽道への妨害だったら許せないにだろう」


常義が窓の外を見ると、多くの車と人の向こうに川が見えた。

「友嗣くん。夏は京都は暑いんだ。日本でも一二を争うくらい夏は過ごし難い。だが、この川に川床を張って涼を得る。この街の人は我慢強くそして、贅沢なんだ。来年の夏には若菜と一緒にに来るが良い。

私は君を認めている。たった数日でこんな事を言うのもなんだが、君を見たら他の若い男はどれもダメだ。君を基準に考えてしまう。若菜には縁談が持ち込まれているが、君を使わせて貰って全ての縁談を断ろうと思う」

「お父様」

「中には一条と室が推す軽薄な馬鹿がいる。万が一が無いとも言い切れない。若菜のそばにいて欲しい。私はそんな悲しい女を見ているんだよ。時恵と逢ったのもその傷を癒す為だった。だから、これはその時の借りを返す為でもある。一条、室には【真力】を渡さない。陰陽道から引いてもらう。もう、弱い人を泣かせたく無い」

常義がため息をついた。

「いかんな。この闇を見ているとついあの頃の事を思い出す。時恵が救ってくれたのだが、人の心の闇はなかなか消えない物だ」


「主、車はここ迄です。私は裏から回って車に残ります。門人達が先入りしていますのでご心配無く」

長谷山が車止めに進めながら常義に言葉をかけた。


こうして、一行は鞍馬へ到着した。


車から降りる際に常義の足首に作って置いた月夜石のアンクレットを通しておいた。

「ほほう。これは良い。この所外出ばかりで道場に行けていなかったからな」

「これを着けていれば万が一でも石段を踏み外す事はありません」

前に三人、後ろに六人の護衛代わりの門人がつく。

萩が念話を飛ばしてくる。

『一条の者が何人か居ますね。寺の関係者から漏れたのでしょう』

『どこにでも居るのだろうな。気取られるなよ、萩』


寺へ入る。


中に通されるが写真を撮っている奴が、近距離でも長距離でも見受けられる。

常義に眼をやると頷いてくれた。

「高価なレンズの様だが、恨むなよ!」

レンズにヒビが入り周囲の者達に音が聞こえ、騒ぎになり慌てて逃げ出す一条の門人達。

「デバガメ行為は、されたく無いわ」

京都の街を歩いていても、カメラを向けられる事がある若菜はいい気味だと思っていた。

先程話が出た二人の見合い相手も、若菜が通う大学の周囲を彷徨いて手下に写真を撮らせていた。


今度からは、【式】を使った実力行使が出来るし友嗣と言う婚約者候補も出来た。

彼ならどんな男でも太刀打ち出来ないだろう。

今でもすれ違う女性が彼を見つめて足が止まっている。

誇らしくも有り腹立たしくもあった。


たった一週間で私は・・・・・

初めて男の人を好きになった。

戸惑いが若菜を包み込んだ。


友嗣は、こちらを見る視線の中に明らかな、敵意を持った一団を見つけていた。


会場を見下ろす席に通されて中居が障子を閉めたにもかかわらず、外から引き倒す様な勢いで障子が開けられた。

「無粋な奴だな。一条の小倅か?」

「あぁ、何度も面会を要求しても断るのだから、こちらからこうして出向いてやった。で、返事はどうなんだ萩月のジジィ!」

「お客様!他のお客様もいらっしゃいます。お静かに願います」

「うるさいな!他の連中なんぞは放り出せば良い。なんなら実力行使で出て行ってもらおうか?」

「警察を、呼びますよ!」

「呼んでみろよ。この人混みだ。到着するまでには皆が出て行ってくれるよ。そうだろう!」

腰を浮かしかける客達。

『常義さん。コイツが若菜さんに言い寄っている馬鹿の一人ですか?』

『あぁ、そうだ。一条 豊。どうしようもないクズだ』

『私を何度も襲いそうになって、長谷山が防いでくれたわ』

『そうですか! それじゃ、挨拶しておきましょうかね?』

『殺すなよ!』

『居なくなって欲しいけど、殺しはダメよ』

『萩。 取り巻きは何人だ?』

『七人ですね。どいつもコイツも醜い顔付きしています』

『解った。人払いの結界張れるか、そうだな、場所は川沿いの物置きの脇に連れて行くよ』

『御意』

『安寧!』周囲の者には一瞬、女の歌声が周囲に響いた様な気がした。

中居も他の客も腰を降ろして寛ぎ出した。

先程まで怒鳴り散らしていた一条のバカ息子も、腑抜けた顔をしてコチラを見ている。

「さて、ここでは他のお客様に迷惑だ。この球に付いて行きたまえ」

友嗣が収納から白魔石の球を取り出して馬鹿息子の足元に転がした。

這う様にして後を追う八人の男達。

見える者がいたら大爆笑だろうが、残念ながら【遮蔽】を張って見えなくもしている。

多くの人を押し退けて進む一団。

友嗣は若菜と常義の前に【白石版】を置いてゆっくりと後を追う。

『本当にもう、悪戯好きなのはお父様の記憶を読んだからですわ』

『頭に来ているんだろうな。あんな態度取ってしかも、お前を襲おうとしていながらも誰も咎めない。どう、罪を償わせてくれるのか・・・・・』


萩が張った【人払いの結界】に入り、サトリの力で縛った一条達の支配を解く。

裸足でしかも、四つん這いになって先程まで若菜の横に居た男に膝を突いている。

湧き上がる屈辱と怒り。

皆が懐に手を入れるが目当ての物はそこには無かった。

「テメ〜何もんだ!」

「若菜さんの、婚約者と言っておこうか」

(やはりこうなったか・・・・・)

白石版を見ている二人に嵌められたと思うが、それでも目の前の男には渡したくは無い。

【遠見の陣】で飛ばす場所を探して置く。

周囲を取り囲む様に散開した男達。

木の上から萩が見ている。

「お前ら、近いのと遠いのどっちが良い? 泳げない奴は居るか?そうか、お前泳げないのか?」

泳げないと心に思った男を指差して、飛ばす場所を変更する友嗣。

ちょと遠いし、その分魔素を使うのでやりたく無いが、若菜の事を考えると手加減はしない。

警察がダメならその筋に・・・・・ 記憶にあった場所を検索して【遠見の陣】を飛ばす。

遠慮する事が無いので、思いっきり飛ばしてやる!

「テメ〜!シカトするんじゃねえ! ハジキが無くとも素手で充分だ。やってしまえ!」

襲い掛かる男達、喧嘩慣れしていて一人は脚を狩りにきた。

空中!しかもはるか頭上に転移した友嗣。

直ぐに連中の側頭部や顎を捉えて殴り、蹴りを入れて、豊の鼻を折りにかかる。

「クソ!何なんだよコイツ!こんな事してタダで済むと思うな!京都府警を動かして・・・・・」

鼻血を噴き出しながらそこまで言ったが、身体が動かない!

恐怖が身体を蝕んでいく。

目の前に突きつけられて浮かんでいるのはそれぞれが懐に入れていた獲物。

匕首は白鞘から抜かれていた。

手榴弾はピンが抜かれかかっていた。

余程、長谷山に痛い目に遭わされたにだろう。

その光景を見て常義は

「本当に馬鹿だ。ここで、そんな物使う気だったのか?」


「さて、消えてくださいね。警察に突き出してもダメなんですよね?」

位置と方向を定めて先に手榴弾を送って見た。

ピンは外れる事もなく目的地のガレージに転がった。

遠見の陣でそれを知った友嗣が

「すぐに両手を上げてくださいね」

と言って八人を転送させた。

八人が獲物を握って飛ばされたのは、兵庫県のその筋のトップのご自宅だ。

(八人でこの距離。青魔石が1/4位か・・・・・ アーバインより飛ばしやすいな)


事も無く転移で席に戻って、周囲の人々の元に戻して火祭りを楽しんだ四人だった。


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