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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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142 時代祭

窟の場所は高野川源流にあたり、そこから更に山肌を登る事になる。

土地の所有者は直ぐに解った。

確かに以前は延暦寺の関係者の所有であったが、今は民間の会社が所有している。

丁度、他の所有者の土地に挟まれて開発がしにくく手に余る状態だった。

常義は手を回して、この土地を関係者に購入させた。

下草の整備という事で届けを出して、春先から整備にかかる為に関係各所へと根回しをする。

交渉がスムーズに行ったのは、信心深い土地の所有者の枕元に白美が立った事ももちろん関係する。

(宗教は使い方次第だな)

友嗣は白美の手腕に感心した。

常義は買い叩いた訳ではなく相場で支払って居た。

「萩月は案外豊かなのだよ。今回も両角の事業のひとつとして事を進めている。心配は要らない」

窟が埋まっている位置は特定された。

中は空間になっている。

魔素で探るとウルマの遺跡よりも、小さな構造の様だ。

気になるのは頂上の山から伝わってくる術の痕跡だ。

真力の行き来は無いがどうにも気になる。

封印の紋様も萩月とは違う様だ。

いずれにしろ春までは手を出さない。


関を迎えに来たのは漆黒の衣に身を包んだ僧侶だった。

常義が言って居た最初の一光への頼み事は関の身柄を預かる事だった。

表高野では無く裏高野が預かる事になったから、しばらくは出て来る事が出来ないだろう。

ワンボックスに押し込められる際に、たった一日で窶れてしまった関は屋敷に向かって頭を下げた。

犯罪者の様に腰縄がされて居る。

(いらないだろな・・・・・恐怖しか感じない)

「あれは、見せしめの為ですよ。萩月の掟を知らしめる為にやって居る事です」

木場が寂しげに車を見送った。

後ろを萩月の門人と長谷山を乗せた車が着いていく。

これから、栗林が案内して来る関の両親と弟に合わせる為だ。

もちろん一光との面会も長谷山が行う。

事が大きくなってきて居る。


関家に対しての処罰は無く、兄に代わって弟が鹿児島の長谷山の門を叩く事になって居る。


色々有ったが約束の三日後、サランに念話を繋ぐ。

『【真力の源】を見つけた。誰かが陰陽師の邪魔をする為に術で泉を止めている。春になったら窟に潜って元を開ける。

それから大事な話だが、侵略者達の侵攻の前に危険が生じたら、住民達を地球へ避難させる事を彼等と考えている。シュウを始めとした子供達を、こちらで教育するのも良いかも知れない。又、三日後連絡する。サラン。皆んなを頼んだぞ』


念話を終えてしばらくすると、図書室のドアがノックされる。

若菜が入ってきて、お茶が準備されている事を伝えてくれた。

隣の部屋が資料の読み解きに供されいて、友嗣は古文書に釘付けにされて居た。


茜の夫、源蔵が愛した場所だと言う。

彼は、萩月の門人の中では温和で、知識の探求に寄った人だった様だ。

聞けば聞くほど本を愛した人だった様で、今も資料の読み時には彼が残したノートが役立っている。

ただ、達筆な筆使いで読み取りが難しく、若菜に手伝ってもらう事になった。


夜には萩月との境の門を使い帰って行く。

友嗣も今では、客間を出て門人達が住まう一室を借りている。


早朝、門人達に混じって掃除、そして、朝の鍛錬で汗をかき、風呂で汗を流して食事を取る。

門人達は、しばらく休憩を取った後に各々の術の鍛錬を行う。

まだ、真力は足りている様だ。

門人達の為に近くにマンションの建設が始まっている。

一条と室が子供を拐かしてまで真力を得ようとしている。

その対応だ。

東京でも鹿児島でも同じ様に事が進んでいる。

萩月の本気度が見える。

資金の調達は、萩月一門の総力を上げている。


一条家当主の机の引出しに入れていた白魔石が消えて、余計に一条達は焦っている様で監視者が増えたが、友嗣が張った術を破れずに、萩月家の周囲で彷徨き警察に不審者と通報されているが注意されるだけだった。


三日後の念話では明日、時代祭と火祭りの事があるから明後日、念話を伝えると連絡をした。

「友嗣さん!少しは愛の囁きをしてあげては如何ですか? あんな事務的なお話じゃつまらないですよ。サランさんきっと不満ですよ」

若菜から文句が出た。

「いや〜若菜さんに漏れているから恥ずかしいじゃないですか!」

「男の人は普段は横暴なのに、こう言う時はダメですよね。まさか、そんな風に思う人とは思いませんでしたよ」

「済みません。次は頑張ってみますよ」

(本当は他の妻達に不公平だから、そう言う言葉は伝えていないのだけどな・・・・・)


翌朝、いつもの様に食事を済ませて館林の家に行く。

今日は館林の家から車を出すことにしていた。


慶流橋の住宅は木場の大学での友人で、今は、私立大学で史学の教授を退官して講師をしている。

木場の本来の姿である陰陽師についても認識をしていて、その関係者という事で喜んで部屋を開けてくれていた。

「この行列を観るために改築した位だよ。隣にもう一部屋同じ作りの部屋があるから気兼ねなく使ってくれ。ベランダを一段下げているのは部屋の中から車椅子で座っても見える様にしている。母が楽しみにしてくれていたからね。その母も亡くなって、母の友人達もご高齢で、祭りにも来れなくなってしまって空き部屋になって寂しい思いをしていたんだ。 木場の奴も遠慮せずに来ればいいのに、アイツらしい。来年には奥さんと来る様に伝えてくれ。隣の部屋で女房と二人じゃつまらん」

「そう言われるのでしたら、ご夫妻を今から呼びましょう」

そう言うと、若菜が指先に2枚の燕を切り取った紙を取り出した。

『シッ!』

若菜が指を差し上げると、二枚の紙の燕は北へ向かって飛んで行った。

「それは『式』! 使える様になったのかね!若菜さん!」

「えぇ、この岩屋友嗣さんのお陰で使える様になりました。父からも角田先生には隠さずに良いと許しを得ています。また、萩月一門しか力を取り戻していませんが、いずれは、他の一門にもと思っています」

「そうか! まさか生きている内に陰陽師の再興を見る事ができるだなんて・・・・・だが、一条と室は諦めた方が良いだろう。あそこの一族はもう、陰陽師としてはやっていけまい。道場はもう何年も人が入っていない。かっての公家の一族と言う名を使った商売人だ。国の暗部との繋がりも噂されている」


「はい。父も苦慮しています。高野山の伯父と相談する様です」

「一光殿か・・・・・それは、名案だな。何かあったら教えてくれ。力になろう」

「ありがとうございます」

階下から木場から電話が入っていると言われて、電話を回して貰った角田が「さっさと来い!」と、怒鳴って木場夫婦を呼び寄せる事にした。

こうして、席は一室を若菜、友嗣そして白美。

もう一部屋を角田夫妻、木場夫妻、萩月の食堂の職員で夫が長谷山の部下である高田夫妻が使う事になった。

年齢も近く話が盛り上がる。

高田氏は、陰陽師である事から史学に興味が有った。

途中、木場晴美が準備してきた料理や角田夫妻が準備した、鯖寿司を食しながら煌びやかな衣装を着た行列を眺めた。

衣装や時代背景については白美の説明と、角田が作って置いた資料を見ながら夕刻まで楽しんだ。

「今日はありがとうございました。色々と勉強になりました」

「いやいや、来年もおいでなさい。うちはいつでも来て貰って構わないよ。土曜には一般人向けの史学講座を開いているから大学を訪ねておいで、君らなら大歓迎だ」

こうして、又の再会を約束して萩月の屋敷へ戻る。


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