表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
14/926

012 遠見の陣

「ワシらが恐れていた事。解るだろう。そうだ、銀の鳥の襲撃だ。【シーグス】、【アレ】、【サイス)が焼かれこの村を守る為に【遮蔽】と【偽装】を施した【魔絹布】を展開させた。


更に【遠見の陣】で海の先を見張っていた時にキラキラと光が瞬いたのだ。

見つけたのはタルムの父だ。

その血筋のせいかタルムも毎日、遠見の陣で遊んでいたから術が上手くなっている。

今じゃ父親よりも遠くを見れる」


「娘達の着替えを覗いているんじゃないの〜?」

「バ〜カ! そんな事するかよ。それに魔道具を作るのは俺には出来ない」

「出来たらやる? イバ! タルムに【遠見の陣の魔道具】渡しちゃダメよ〜」

「バカな事言っているんじゃない!」村長から雷が落ちた。


「先を続けるぞ。銀の鳥が海の向こうの街を焼き払い始めたのだよ。

ワシには解ったさアイツらがやって来た。

イバにも解るだろう。

薄く煙位しか見えなかったが街は壊滅しただろう。

いずれこちらにもやってくる。

そう思い、わしらは引き篭もった。

数日後。米をもたらしてくれた男達が船で新村に逃げて来た」


村長は茶をゆっくりと飲んだ。


「ワシは女と子供そして病人や年寄りを、聖地に匿わせて置ける様に準備をしていた。

聖地の長から青魔石を借りてわしに出来るだけの【遮蔽】【偽装】をかけてあの家から遠見の術で周囲を見張っていた。

ここら一帯は砂浜にしか見えなかったはずだ。

新村やサイスの村にも注意する様に伝えたが、しばらく何も起こらなかったから油断したのだろうな。

それから数年後、サイスの方向で街が焼かれた。

【シーグス】【アレ】の街だ。

この時に多くの村人を避難させて新村にも【遮蔽】【偽装】の術をかけさせた。

それから【サイス】が焼かれた。

サイスにはイバの父がいたが術師が彼だけだったし、魔石の魔素量も少なかったのだろう。

この村にも新村にも黒鳥が来たが、通り過ぎその後は何も起こらなかった。

そして今に至る。

だがな、ワシは感じているんだよ。

あの岩場を引き揚げた時の焦りを。

奴等が又、やって来る。

だから、お前を呼んだのさ。

何も起こらなければそれで良いが準備はやっておく方が良い。

この海はその時が来たら大切な食糧庫になる。

米を作らせるのもその一つだ。

麦より多く取れそうだからな。


イバ、タルム、ワッグ。若いお前達が頼りだ。

イバを鍛えれば【遠見の陣】も更に遠くを見る事ができる様になるし、【遮蔽】【偽装】の術も更に強化されるだろう。

聖地の長と話して聖地の中を改修する事をすすめている。

イバが聖地に帰ったら驚くだろうな。

さて、言えるのはここ迄だ。イバ色々と大変だろうが頼んだぞ」


村長が胸に手を当てて赤魔石を次々に取り出す。

【収納】鮮やかな手つきだ。

イバも幾らかは使えるが、そんなに大きくはない。

イバの視線に気がついた村長は、

「仕事が先だ。終わったら魔素の使い方から叩き直してやる」


村長は取り出した魔石を6個タルムの兄に渡した。

彼が魔道具作りの名人で、【遠見の陣】と繋いでる【白石板】は村長と作ったとの話だった。

今から陶器の高台の部分に熱を発生させる【陣】を描いて焼き入れをし、渡された赤魔石を使って塩作りをやってみると話していた。

本当に器用な一族だ。

シューラの兄ミクマは、入り江の一部を網で仕切って魚を育てていた。

どの魚がどんな餌を食べてどうやって、卵から孵るかを調べている。

ここには、海藻についても調べる為に多くの人が当てられていた。

これらは『養殖』と言うらしい。

弟のルクマは彼を支えて『養殖』関連の魔道具を開発していた。

入り江で海水が滞留しやすいのだが、潮の流れを利用して岩場の先の海水との入れ替えができる様にしたのも彼の功績だ。

これで、網の中で育てている魚が死んでしまう数が激減した。

海藻の生育も順調になっている。


ライラの姉達も白魔石を使っての【治癒の術】が使え、米を伝えてくれた避難民を助けたのも新村に嫁いだ従姉妹だし、他にも丘の村に嫁いだ従姉妹は【身体強化】で、羊やヤギを襲って来る狼や盗賊を叩きのめしている。

彼女が産んだ子供達も術を支える様で、村長が訪ねて行ってその能力を伸ばす事を手伝っていた。

周囲の村々に、この村長の一族は聖地の孤児と婚姻して新村を作っていた。


「優秀なんだな。お前の家族」

「どう? 驚いた? 昔から家に伝わっている術を伝える石板、羊皮紙や木札を子供の頃から遊びとして読んだりしている事が大きいかな?

浜の子供達で術が使えない子も、魔道具を使う事が上手だし自分達が使いやすい様に作り直したりしているよ。

干し魚を作る小屋も臭いがしなかったでしょう?

アレも術が使えない女性が家業で作った売残りの魔道具を組み合わせて作り出した魔道具のお陰だよ。

血生臭い嫌な匂いも消えたし、腐ったりしなくなったから助かっているよ」

「それは凄いな。聖地の厨房にも置いてやったら喜ばれるな。後で、見せてくれ」

「ふ〜ん。ワッグが教えてくれたわよ。厨房の女の子にモテているんだってね?」

「オレも知らなかったよ。

今回、ここに来る為にパンと汁を受け取りに行って初めて聞いた。

魔素を魔石に入れる事と修行で一人でいる事が多いから、あんまり話した事ないよ。

魔素が溜まっている部屋は魔素酔いする人が多いから余り人が寄ってこないからな。時々心配して術師が覗いてくれるくらいだ」

「友達いるの?」

「術師だから尊敬されているけど、小さい頃から術師に預けられて居たから同じ歳の子と遊んだ事は余りなかった。

今回、ワッグとも初めて話したくらいだし、タルムみたいに砕けた話し方したのも初めてだな。

女の子も仕事のやり取りか荷物運びを手伝った時に話したくらいだし、こうして話すのは初めて・・・・・意識させるなよ。なんだか恥ずかしくなってきた」

「ふふ。良かった。サトリはサトリの術を防ぐ方法を知っているから少し心配したけど、やっぱりアンタは素直な人なんだね。

私だって男の人の指先に吸い付くなんてやった事ないわよ。自分ながら呆れているわ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ