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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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132 子狐

夕刻まで門人達と鍛錬を行い、風呂と夕食を済ませて客間に戻り念話に使った青魔石を取り出してサランに呼びかけて、今日、有った事を告げる。

そして手始めにこの地に湧き出る【真力】の源が地下に有る様なので、土の術を使って調べてみるつもりだと知らせた。

今は【真力の泉】の様な存在を探したい。

一日の長さはそう変わらない様に思うが、明日もこの時間に念話を送ると伝えた。

明日、の念話の時に次はいつ連絡するかを伝える事にした。

真力を掻き集めたり萩月一門に渡している魔素は大したことは無いが念話が一番魔素を消費している。


彼自身でも魔素が生み出せる。

日常生活をしていれば、青魔石を溜めるのに二十日程度。

つまり真力を得られ無ければ五日に一度の念話が使えるだけになる。

それでは、帰る手立てを見つける事にも支障が出る。

返事を受け取れないがイバにはサランが解ってくれた様に感じた。

そして、みんながイバを愛していると。

でも、私が一番だと言ってきている様に思えた。


これから、【萩神社】に向かう。

なんでも合わせたい存在がいるそうだった。


神か・・・・・

イバが初めて常義から知識を得た時に、その意味が理解出来なかった存在【神】

日本にはその他にも【仏様】と言って、死んだ者の魂を救い、守る存在が居るそうだ。

アーバインでは、そう言った存在を知らなかった。

常義に告げると

「無理をしてその存在を理解しなくても良い。解る様になってくれれば良いし、他の人の信じる事を邪魔や否定しないでいてくれれば・・・・・それで良い」

そう、言ってくれた。


少し冷えるからと、木場がスポーツコートを持って来てくれた。

庭に出て奥に向かえば、そのまま行ける。

京都の秋の夕暮れは、すぐに夜の闇に変わるが萩月の屋敷の外は相変わらず照明の灯りが周囲を照らしている。

萩月と館林の両家に跨った小高い丘の様な場所に、その(やしろ)は建立されている。

「おや? 人では無い気配が幾つか有るが・・・・・」

「気付いたかね? これが、神に近い存在だよ。さあ中に入ってくれ。靴はここで脱ぐ」

友嗣は常義の後に従う。

常義と若菜、館林茜、木場、羽田、両角、九鬼だけがついて来ている。


中に入ると、思ったよりも奥に入って行く。

(術が使われているな? 距離感がおかしくなる)

「気を張らずとも良い。彼女達が過ごしやすい様に少しばかり現世と距離を取ってある。これはこの社自身が持っている仕組みで霊界と繋がる道でもある」


一番奥に着くと数段の階段の上に長谷山と、白い巫女服を纏ったふたりの女性が正座をして頭を下げて迎えてくれた。

(おや?その背後にも・・・・・)

正面に常義、左手に出迎えた女性達、皆が対面した形に置かれた座布団に座る。


「待たせたな。【萩】、【白美】頭を上げてくれ」

常義が声をかける。


「紹介しよう。我が萩月家に仕える式神 【妖狐 萩】と館林家に仕える 【妖狐 白美】だ 」


「萩で、ございます」

「白美で、ございます」


ふたりの巫女が頭を上げて、友嗣と目を合わせた。

「「あなたは・・・・・?」」

(流石に式神か・・・・・一瞬でこちらの人間でない事を見抜いた)

「イバと言います。今は萩月一門の家名【岩屋友嗣】と名乗らせて頂いていますが、アーバインと言う他の星から【転移陣】で萩月家の庭に送られてしまいました。私は【魔素】と言う力を使って【術】を発動します。貴女方を顕現させる為の【真力】を集めるの【魔素】を使いました。これがその魔素を溜めるための魔石。魔素を溜めた状態の魔石です。これは、黄魔石。 他にも赤、青と有りますが、もしもの事があったら大変ですから【黄魔石】で試してみましょう」

友嗣は、ふたりの前に黄魔石を置いた。

ここまでは常義との打ち合わせ通りだ。

一気に事を進める。


アーバインで吸収させて来た【魔素】が漏れ出す。

「美味しい!」

「すごく美味しい!」

「あったかいよ!」

「すぐ、お腹いっぱいになりそう!」

いくつもの声があがり萩と白美の後ろに、子供の巫女服を着た少女と子狐達が現れた。


友嗣、いやイバとしてこの様な経験は今まで無かった。

確かに目の前のふたりの女性が人とは違う存在なのは解っていた。

が、それでも驚きはしなかった。

魔素を食事の様に振る舞いそして具現化してくる

人として日常を過ごしながら蛇の様な身体に変化し、その身の中に新たな生命を宿しその生命を産むために更に肉体を捨て【ポアーザ】に変化する。

【ポアーザ】は食事を取らず魔素を吸収して生きていく。

ダイアみたいな存在か・・・・・


(ほう、神という存在は信じていない様だが式神とその眷属が具現化して行く事に対して冷静に見ている。同じ様な経験がある様だな・・・・・ 話を聞くのが楽しみだ)

常義は冷静な友嗣の姿を見て、今夜も遅くなるかと思っていた。


(式神の存在を見るのも初めてなのに、光の珠が姿を変えてあの様な人の姿を取るとは・・・・・しかも、狐耳にモフモフ尻尾・・・・・メイド服を準備しなくては・・・・・、ハッ! あの八人の子狐も人の言葉を発したと言うことは皆、人化するのでは無いか? これも、準備が必要だな。腕が鳴る)


「これは・・・・・」

若菜は先程の友嗣が話した内容に驚いたが、心の奥でそうかも知れないとでも思っていたのか驚かなかった。

でも、萩の眷属を顕現させるにはどうすればと悩んでいたのに・・・・・それをあっさり叶えてしまう。

(本当にこの人は・・・・・底が見えない・・・・・)



萩は泣くしかなかった。

霊界で過ごしている間は食事と言える【真力】を与える事ができなかったのだ、

横に居る白美が我が身を削って方々から集めて来てくれたのだが、白美自身も霊界に篭り眠る事になった。

それが、九人とも顕現出来ている。


白美は・・・・・ 顔は笑っていたが頭痛がしていた。

顕現前でも充分に騒々しかったのだが・・・・・子狐の姿になってしまったら・・・・・八人の娘が居るのだ・・・・・。

又、あの娘が苦労する事になる。

萩は子供の躾が苦手で甘やかしてしまう。

長い事我慢させて来た引け目も有るのだろうが・・・・・。


「常義様。こうして人の姿として顕現しました眷属にも名を頂戴できますでしょうか?」

「そうだな・・・・・若菜。お前が、この娘に名を与えてくれ」

「・・・・・解りました。明日の朝、名を与えましょう。それで良いですか? 萩」

「もちろんです。それでは、明日お願いします」

「萩。悪いが【月夜石】を友嗣に渡してくれ。白美も良ければ見せてやってくれ」

「まともなのは、これだけです」

と、萩が耳から勾玉の耳飾りを外して友嗣に渡した。

所々に欠けた跡がある勾玉の耳飾り。

友嗣が手にした勾玉を若菜が覗き込む。

彼女も小指の先程の月夜石と欠けた『腕輪』を持っているが、こうして形を成した物は見た事がなかった。

(残念だわ。こんなに欠けてしまって・・・・・でも、本当に治るのかしら?)

友嗣は木場から袋を受け取った。

そして、【収納】から、両手程の白い陶器の様な板を取り出し前に置いた。


(えっ、今、空間から取り出したわ。)

真横で見ている若菜には、友嗣の所作が見えている。


友嗣はそこに、袋に入った月夜石が欠けた粒をそっと出した。

「萩さん。この月夜石の耳飾りですが大きさはこのままで良いですか? それともし、もう片方の欠片と金具があればでしてください。一緒に治しましょう」

「えぇ、大きさは少し小さくして頂けると助かります。舞を舞う時に気になりますから・・・・・」

「萩! それは巴様から頂いた物ですよ! それを軽々と扱って良いのですか!」白美さん激オコ!

「白美さん。壊れているところを修復するとどうしても削る事になります。それに、この月夜石は水の影響で少し膨らんでいるんですよ。ですが私はこの勾玉の本質は変えずに修復して見せますよ。白美さんも準備してください。皆さんも宜しかったら懐にお持ちの品を修復します」

「友嗣さん。修復すると言っても準備出来ているのは、この袋の分しか有りませんよ」

多くの者が、懐に手を入れたのを見て木場が慌てて皆を押し留める。

「大丈夫です。今、完全な形の耳飾りを見せて頂いて、この月夜石の事が解りました。この、境内に砂粒よりも細かに砕けた月夜石がありますよ。九鬼様、申し訳ありませんが何かに境内の土を持って来ていただけませんか? それに大皿も有りましたらおねがいします。半紙も有ればありがたいです。木場さんがお持ちになった砂粒大の月夜石は核にしましょう。」

「解った。面白い事をやってくれそうじゃ無いか。直ぐに取ってくる。それまで待っていろ!見逃すと一生後悔しそうだ!」

「はい。お待ちしています」

「待て、九鬼!私も行く。厨房に行くなら(うち)のカミさんがうるさいぞ」

「・・・・・そうだな。そっちは任せた」

こうして、萩月の屋敷に駆け戻る九鬼と木場を待つ間に色合い、勾玉と球の違いを常義や茜も交えて聞いておく。

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