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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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128 萩月八家

翌朝、【岩屋友嗣】と名乗る事になったイバは、用意されていたスゥエットスーツに着替えて布団をあげた。

気配を読んだ【館林 茜】が襖の外から声をかけてくる。

「おはようございます。お食事の準備が出来ております。昨夜の部屋へおいでください」

「ありがとうございます」

イバは鏡で姿を確認する。

ルースの聖地では白魔石の屑で焼き上げた物に【反射】の術をかけて鏡の代わりにしているが、どうしても歪みが出る。

しかし、この鏡には歪みが見られない。

友嗣は【畳】にも興味を持っていた。

これは良い。

毛皮を使った敷物よりもサラリとした感触が良いし、草の匂いなのだが清涼感が有る。


学ぶべき物が多いと、友嗣は心を踊らせる。

昨日、夜遅く迄話をした部屋に【膳】が置かれている。

昨夜も、食事を共にした萩月一門の者から驚かれた。

【箸】の使い方が綺麗だと言われた。

ルースの聖地でも浜の出身者は箸を使う。

魚を食べる時には箸が便利なのだ。


友嗣にはその作り方を、どうしても覚えたい。

あるいは持って帰りたいのが【調味料】の数々だ。

【収納】から向こうで使っている食材を出しておいた。

念の為と木場が預かり、分析とやらをすると言う。

更に今日は木場の長男が務める病院とやらで、検査を受ける事になっていた。

「不快に思うかもしれないがお互いに病気の問題が生じる。本来ならば隔離とすべきところだが、客人をそんな扱いをする訳にはいかない。申し訳ないが検査を受けて欲しい」と木場に言われ興味も有り素直に了承した。

友嗣が着ていた着衣も木場に預けてあった。

使われている植物や動物の毛を調べてみると言っていた。


常義の横に友嗣の膳が用意されていて友嗣は正座で座布団に座る。

この正座。

術師の修行での座学の際に取る姿勢だ。

この地球上でも、この座り方ができる民族は数少ない。

近年では、日本人でも出来ない者が多い。

これも、常義が友嗣に親近感を寄せる事となる。

友嗣も共通する点が多いと感じていた。

食事を終えた頃に病院から連絡が入る。

「どうしても日中は病院では人目をひいてしまう。申し訳ありませんが休診日の明日ご足労願います」

「解りました。私も、もう一度庭でやっておきたい事が有るのですが宜しいでしょうか?」

「何をするのかな?」

「【転移陣】をもう一度浮き出させてみたいのです。出来れば真上から記録しておきたいのです。庭も屋敷も含めて」

常義が、顎に右手の親指をあてて思案をしている。

「岩屋。その【陣】の事だが私達も記録に残して良いか?」

「えぇ、構いません。【転移】、【転送】が、こちらでも使える様になれば幸いですから」

「木場、長谷山、口の硬い門人を集めよ。特に写真、映像の技術に優れた者を呼べ。羽田、両角、九鬼にも来て貰ってくれ。木場、予めできる事が有るか岩屋と相談しろ」

【館林 茜】が事務所から、電話をすると言う。

「電話ですか!様子を見せて欲しいのですが・・・・・」

と頼み込んで事務所に木場と向かう。

長谷山は道場にいる門人達に今日の事を準備させる。

木場が病院に手配して友嗣の血液や尿、そして、口内の粘膜からDNAサンプルを取りに来ると言っている。

同じ大学内の関係者も来るそうだ。

そこへ、常義がふらりとやって来て

「待て待て、良い事を思い付いた。距離はあるが先に術を試しておきたい」

そう言うと、長谷山を事務所に呼び出して【懐中】からあの燕の【式】を四つ取り出した。


常義が、何をするかを察した木場と友嗣。

常義は左手に一つ目の燕を手に取り、懐から【黄魔石】を取り出した。

左手の(たなごころ)に【黄魔石】を置き、人差し指と中指で【式】を挟み右手で印を結び術を使う。

左手の掌の魔石が光出し【式】も同じ様に光ったと思うと【式】が飛び上がり、常義の頭上を数度周って、事務所の天井をすり抜けた。

それを、更に三度繰り返す。

次々と消えて行く【燕の式】

長谷山も館林茜も言葉も出ない。

茜に至っては涙さえ流している。

たちまち、鳴り響く電話。

どれもが、一門の者達からだった。

「すぐに来い。萩月の復興だ」

全ての電話に、常義がその一言だけ告げて電話を切る。

薄笑いを浮かべていた。

最後の電話だけは

「解ったか? 陰陽道の復活だ。学園が終わってからで良いぞ。紹介したい男が居る」

そう優しく告げて電話を切った。


木場が、すぐに常義の傍らに進み顔色を見た。

「当主様。お休みになられていないのですね?」

実は常義。

眠らずに【白魔石】が空になるまで式を操っていたのだ。

それ故に門人達を呼び寄せる機会を窺っていた。

今も悪戯っ子の様な顔をしている。

(義父ルースとそっくりだ。会わせたら良い友人になるだろう。だが・・・・・これを『混ぜるな危険』と言うのではなかったか?)


門人達が機材を準備している間に、友嗣は客間で木場による医師としての健診と聞き取りを受けた。

木場から説明を受けながら、血液と尿も取られて半裸にされて心電図も取った。

今来ている医師や看護士も萩月一門の者である。

木場が問診をしながら簡単に説明をして行く。


木場家は当主 木場 (すなお) 60歳 元は今来ている大学病院で外科医をしていた。

先代が数年前に亡くなり、萩月家の差配をする者がおらず、常義に請われて執事の様な事をしている。

常義の右腕。

妻の晴美は、この屋敷で厨房を取り仕切っている。

友嗣が持ち込んだ香辛料等は木場の一族が調べた上で晴美に渡される。

一族は医療を主に研究関連で日本国内だけでは無く海外でも重要なポストにいる。


長谷山家 当主 (いわお) 55歳 鹿児島を拠点にした剣術の一門でも有り京都にも建立されている萩月家所縁(ゆかり)の神社の宮司も務めている。

武術に関しては剣術だけでは無く無手、柔術、合気、古武道もおさめる。


館林家 当主 茜  65歳

萩月一門だけでは無く他の陰陽道に関する所作、しきたり、術に関する記録、古文書の管理を取り行う。

家業は寺社仏閣の修理、改修を専門に取り行う宮大工の会社を経営している。

入婿であった夫、源蔵を早くに亡くし茜を当主として働く。

副社長が会社を運営して茜は萩月家で『ばあや』と呼ばれて奥を取りまとめている。


以上の三家が京都在住である。


羽田家 当主 (ひろし) 55歳 皇室について江戸に向かった政治関連の家系。

しかし、表立って政界には出ずあくまで裏方を務め外交関連にも強い。

自衛隊、警察、検察にも人材を出している。


両角家 当主 寿美(すみ) 45歳 羽田家と共に皇室について江戸に入った一族。

経済、商業系に強く、銀行によっては彼女から「ダメね?」と言われる度に頭取が代わる。


九鬼家 当主 修造 55歳 運輸、物流系に強い。

鉄道の建設、車両の開発、航空機などの開発の企業も裏で操る。

JAXAにも研究員や幹部として人員が出ている。



岩屋家 当主 友嗣

岩屋は陰陽師の戦闘部隊で【式】、【陣】を使いこなす実働部隊であった。

第二次世界大戦の降り当主が戦死し当時、東京で皇室の警護にあたっていた一門が、三月の東京大空襲で亡くなった。

丁度、当主の戦死の報を受けて家族で、その霊を宥める為の儀式の最中に戦火にされされた。


もう一家あるが記録に僅かに残る程度であった。

今は名を変え、他の陰陽師の一門に与している。




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