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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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011 塩

初めて食べた【米】と言う穀物。

それにこの浜で作った塩をまぶしただけの食い物。

確かに旨い。

腹持ちも良さそうだし子供から年寄りまで旨そうに食べている。

だが、イバは塩の味がどうにも馴染めなかった。

米に塩をまぶしただけだから、野菜や肉と違って塩の味が余計にわかる。

ちらっとシューラに目をやると、すぐさま彼女がイバの横に座る。

「どうしたの? ワッグが羨ましくなった?」

「・・・・・・シューラ。済まないが塩をこの鍋に貰えないか?」

「そうなの⁉︎ この塩はもっと美味しくなるんだ!」

「あぁ、混ざり物を取らないと美味しくならない。(考えを読んだな!)」

「ごめんなさい! 待ってて作ったばかりの塩が有るから」


鍋の底に厚く塩を入れてシューラが戻ってきた。

タルムもついて来てイバのやる事を見守っている。

「色々試す必要が有るけど絶対美味い塩を作ってみせますよ。」

周囲に集まった者達に、そう言うと指先から水を出して鍋に入れて行く。

水を出す術は別段珍しくないが魔素を多く使う。

それを魔石を使う事なく安易とやってみせるイバ。

周りのざわめきを無視して鍋の半分まで水を入れると火にかけた。

そして木ベラでかき混ぜながら塩を溶かして行くが、鍋の底に塩を半分ほど残して塩水を他の鍋に移した。

塩を入れてきた鍋は砂地に置いて上澄みを移した鍋を火にかけた。

「そいつはどうするんだ?」タルムが鍋に残った塩を指差した。

「まだ塩は残っているけど、混ざり物も多いいんだ。舐めてみな。熱いから気をつけろよ。」

イバは塩水を火にかけながらタルムに塩が残った鍋を渡した。

「ぺッ! 何だいこりゃ! 不味い!」

「どれ? 塩なんでしょう? うわ! 水を頂戴!」

イバの指先にシューラが吸い付く。

慌てて指先から水を出してシューラに、うがいをさせながら、もう片方の手の鍋は火から外して焦がさないようにしていた。

「こうして、一手間かけると美味い塩になるんだ。サイスでも自分達が使う塩はこうして作っていた。」

「そう言えばサイスの親戚の家で見た事あるわ。」

ライラが顎に指を当てて思い出していた。

「少しだが舐めてみるか?」

イバは木ベラで鍋のフチに出てきた塩を皿に取り渡す。

シューラが指先にに塩をつけて舐める。

「美味しい! 本当に美味しいよ。」

「だろう?」

そう言っているうちに精製した塩ができて行く。

村人達の間を皿が回って行く。

村長も「これがサイスの高級塩の秘密だったのだな。」と感じ入っていた。

サイスの浜には流木が集まる。

それを使って塩を精製していた。


「赤魔石を使った陶器の大皿で精製してやれば薪はいりません。

父が村外れのあの場所に家を構えたのは、ごく僅かですが魔素が出る井戸が庭先にあって、それを使って村人の魔石に魔素を注ぎ込んでいました。

父が村に来てからは、そうやって塩を自宅用に精製したのでしょう。

全てを上質の塩にするには手間がかかりすぎですからね。

残った混ざり物には塩が残っていますが、手間を考えるなら海に戻した方が良いと思います。

最高級の塩はこれを繰り返して最後は天日で水を抜きます。

大粒の四角い塊が出来たらそれを砕いて使います。

覚えているのはこんなところですね」


「やっぱりお前は大した奴だよ」タルムが肩を叩いてきた。

「そりゃそうでしょう。私の旦那になる男なんだから」

「えぇ〜 イバもうそんな話になっているのか!」ワッグが驚いていた。

「せっかく、オレも許しが出てお前に仕事を引き継ぐ話をして驚かせようと思っていたのに、コッチが先に驚かされてしまった」

「あぁ、聞いている。でも、しばらくは荷運びは続けるよ。オレには漁は出来ないし、ここの塩作りには魔石が欠かせないからな。その補充もしなきゃならない」

新たに作ってもらった丸く固めた米を口にしながらイバはワッグに言葉を返す。

「それでな、オレここから船で少し行った先の村に行く事になったんだが、そこでこの『米』を作る事になった。

今、丘の村から牛と馬を分けてもらって畑を作っているそうだ。畑と言っても水浸しなんだけどな。米はそういう場所で育つそうだ。でも、美味いだろう? 麦じゃあこうはいかない。何でも昔この海の先にある村から逃げて来た船に乗っていた奴が広めたらしい」


「その先はワシが話そう」

村長がイバの横に座って話し出した。

「この村で前の村長に婿になる様に言われた時に最初にやったのが、あの岩場作りで、村人から散々、文句を言われたさ。

そりゃそうだ、産まれて毎日目にし続けてきた景色が変わるのだ。

船を出すにも岩場の間を抜けないといけない。

色んな事を言われた。

だけどオヤジはそいつらを黙らせてやらせてくれた。

嵐がくるのが解っていたし、雲が隠してくれるからいい機会と思ったからな」

沖に並ぶ8つの岩場を見ながら皆が頷く。

「そしてあの先端の全てに【遠見の陣】を刻んだ魔石を組み込んだ岩が有る。

【遮蔽の術】もかけてある。イバにやり直してもらうがな。

あの岩場のお陰で漁場が直ぐそこに出来て、この内海でも漁が出来る様になった。

海も穏やかになっている。

他にも工夫をしているが、それは後で教えてやる。

造船所も船の造り方を記した石板を持っていたから新しく作った。

竜骨を使った強い船を作ったんだよ。

だから、新しい村を作れるほどこの村は豊かなんだよ。

だがな、ワシが恐れていた事が起こった」

20230626

やっと、次章に移る文章まで準備できました。

これを機に行の調整や文脈の調整行います。

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