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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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118 心理士カイラ

イバとルースは義理の兄達で魔道具の開発に長じたジリアとトリトを連れて【転移陣】を設置し黒鳥の探査能力を欺く為の【魔絹布】と【遮蔽】をかけさせた。


イバが皆に【泉の球】を見せて、このアーバインが球形である事を皆に納得させた。


ジュンも、一行に帯同し設置位置を記憶に刻んでいく。

(本当に記憶師冥利に尽きる)

ジュンは、次々と書き重ねられる記憶の数々を、嬉しそうに記憶の棚に並べていった。


新村に残ったミーフォーは、他の面々に島の様子と提案された、食糧確保の為に魚道をアメの聖地に引き込む事を相談した。

それを聞いたモリノ、ミクマが目を輝かせ、頭を突き合わせて地面に色々と書き示して居る。

その話しの結果、ミクマがl今持っている網の種類と数に不安を感じたので転移陣を使ってルースの聖地に戻る事にした。(各地に聖地が多く有る事でルースの聖地と呼ぶ様になっていた)

聖地に設けた【転移陣】に現れたミクマの姿を見たサランが、ミアラとルナとリルを誘って、ミーフォーの目の前に現れる。


慌てるミーフォー。

正妻のサラン、同じくイバの妻になった自分の姪とも言えるルナ。

そして姉の様な存在のミアラ。

『ごめんなさい。』と謝ろうとしたが、人差し指で優しくその唇をサランに塞がれた。

「謝るなんて必要ないわ。やっと来てくれたね。ミーフォー姉さん」

三人に抱きしめられて、泣き出したミーフォー・・・・・


夕刻、イバ達が帰って来る前にサラン達は帰って行った。

お米を持たせてくれたワッグとその家族。

もちろん砂糖や上質の塩、桑の実で作ったジャムも持って来てくれていた。


島では奴隷達や囲われていた女達の中に、新たな伴侶を見つけて人生をやり直す者も出てきいて、北の獣人達にも子供が産まれている。

そう話したせいか、サランたちが帰った後に義理の弟ルクアがミクマと一緒に転移してきた。

大量の衣服それに産着やオシメも収納に放り込まれてやって来た。


かってルースがアレの避難所で同じ様な境遇にいた女性に対してやった様に記憶をどうして欲しいかの相談を島にいる心理士の娘とする事にした。

『アレタを呼ぶかね。』

ライラは心理師に成長した心の癒しをその能力として開花させている、

赤毛のアレタを呼ぶ事にして一度聖地に帰った。

ここ数年で心理士も数名出て来ているから、アレタが推す者がいたら同行させよう。

その日の夕方にはアレタと男女一人づつの心理士が、ミーフォーに島の窮状を伝えたキラとペルが書いた家族への手紙と手土産を持って到着した。


明日には転移陣を渡って、ウルマ島に行く事に向かう。


翌朝、ミーフォーはウルマ島と大陸の間の瀬を見下ろす崖の上にいる。

「なるほどな」

ルース達が瀬の幅と潮流の具合を見ると【鮭】が南に向かい始めている。

他の魚も南に、北に向かっていく。

浜で見た事も無い魚もいた。

それどころか沖に水を噴き上げる船の様な大きさの魚が、群れを作って南へ向かっていく。

遠見の陣を使い白石板に映し出した映像を見て「鯨ですね」ジュンが教えてくれる。

「あんなデカい魚がいるのか!」

「魚じゃ無いそうです。あぁやって海面に上がって来て息継ぎをしているんです。美味しいそうですよ」

「あんなでっかい魚を仕留めるのか!」

「何隻もの舟で岸に追い込んで、(モリ)で仕留めた様です」

「一度、仕留めてみよう」

ミクマが遠見の陣から消えていく鯨の群れを、ヨダレを垂らしそうな顔で見送った。


モリノがこの瀬をどの様にするかを検討し、ミクマがアメの聖地を見ておく事にした。

同時にモリノはこの場で聖地の術師が到着するのを待ち送り出す役目を引き受けた。


ミーフォーが避難所に一行を連れて到着した。


『バイ』が走って向かって来る。

ミーフォーの前に出て【風】を使って弾き飛ばそうとするイバ!

「ダメ〜! その仔は私が飼っているの!」

思いっきりイバの土手っ腹に、一撃を喰らわせてしまった!

彼女を守る為に前に集中したイバ!

その左脇腹はガラ空きで、キドニーショットが綺麗に決まってしまった。


膝をつき横倒しになるイバ。

そのイバを踏み台にして『バイ』が、ミーフォーの顔を舐め回す。


やっと『バイ』が落ち着きを取り戻して、ミーフォーの横に座る。


「『バイ』よ。見ての通り私に懐いている雌の狼よ。ひょんな事から一緒に暮らしているわ。魔道具が付けられているから安心だけど、人を襲ったりはしないわ」


イバにはミーフォーが治癒をかけて、今は会議室で横になって貰っている。


『しかし、『バイ』ってなんだよ!』 

記憶しながらジュンは、その名前のセンスの無さに呆れ返っていた。



【アシの一族】

その存在はジュンの一族でも残っていたが名が伝承された程度だった。

大きなソファーに横になって美しいその肌を見せつけるダイア。


(本当に居たんだ)

蛇の様な身体をしたダイアに、それに付き添うノア。

ジュンの一族と同じく、記憶、記録を生業とする二人はお互いの素性を証した。

情報を交換していく。

幼いが、その資質の高さを見せつけるジュン。

ノアは彼を非常に気に入った。

ノアの一族は多くの大陸を周り伝承されている。

記憶師のジュンに伝承も含めて自分の記録を渡していく。

お互いの一族の断絶は知識の消失を意味する。

各地にいるはずのノアの一族だが、今はノアだけが一族の生き残りだ。


シータとペータの技量が解らない以上、自分がその頭脳に刻み込んで来た知識を死なせたく無い。

それだけの思い。

ジュンとノアの家族は毎日を一緒に過ごす。

寝食まで共にする様になった。

シータが、彼の世話をする。

ジュンも何故か彼女が、そばにいると仕事が捗る。


ダイアにイバを紹介し自分の名が【ミーフォー】と変わった事を伝える。

ダイアが体全身を使ってミーフォーを抱き締めた。

「望みを叶えたのね。良かったわね。ミオラ・・・・・ミーフォー」

「チョチョ、きついきつい、ダイア! 緩めて〜死んじゃう!」


街跡の地下街に、ライラとアレタが心理士達と作り上げたサロン。

ライラが、土の術師を使って一日で作り上げた。

今後、ルースの聖地の様に【遮蔽】で隠しながらも、外の風景を観ながら話が出来る場所に作る計画だ。

軽度の者から重度の者まで此処で、その心の傷を癒すか記憶の奥底に押し込める。

長すぎた囚われの時間。

ダイアとただ一人の【心理士カイラ】が居なかったら皆、自由になった事から逆に追い込まれて更に自らを傷付けるか、自ら命を絶つ者もいただろう。

アレタはすぐに彼女が心理師の数歩手前にいるが、疲労で彼女自身が危ないと見抜き彼女を先にライラと心の補強をしていく。


心理士の仕事は過酷だ。

相手の名前や状態、受けた被害の内容。

果は今まで聞いて来た『一言一句』を記憶して置かなければならない。

失念や記憶の取り間違えは、相談者を孤独感に苛む事になりかねない。

自分の元を訪ねてくる多くの人々の事を覚えていた事にその能力の高さを知った。

ノアが渡した紙を使い一人一人の記録を残しているのが役に立っているのは当然だが、この娘の能力の高さが知れる。

ライラは

「私らサトリは、話を聞きながらさっさと心を覗きに行って対処しちゃうだけだから、心理を司るあなた達には一目を置いているよ。」とその肩を抱き締めてやった。

これは、アレタを心理師へ導いた最大の心の支えの言葉だ。

カイラも同じで、ダイアの安眠の力で強引に眠らせている事を恥じていたが、時を稼ぐには良い方法だとアレタに褒められて、肩の荷を下ろしていた。

此処には、北の集落を捨てる事になった一同の中で、やはり不安を感じる者達も訪れている。

サランが指揮するサトリの者をルースが呼んで、カイラの手助けをさせる事になった。



遅くなりました。やはり、この時期にエアコンが無いのは辛かった。高齢猫は保冷剤で作った寝床でよく寝ていました。エアコンがなおったら又、朝方の徘徊で鳴きまくっています。日常が戻ってきた。

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