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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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010 朝

早朝、何となく波の音が気になって起き上がる。

横で寝ていたはずのシューラの兄の姿が見えない。

「よう。起こしちまったか?」

声がした方を見るとライラさんの長兄の三男タルムさんが窓に腰掛けて外を見ていた。

「いや、久しぶりに波の音がしてきて起きてしまいました。」

「そうか、サイスの村の方が波の音はでかいだろうな。ここは目の前の岩場で波が消されているからな。」


「問題は無いのでしょうか?」

「漁は岩場の沖に漁場があるし、この入り江の岩場の手前に魚が集まっている。

だから、沖が荒れても入り江の中でも漁が出来るし皆よろこんでいる。

嵐が来てもあの岩場のお陰で波も穏やかだから、岸につけた船がひっくり返る事もない。

偶然かもしれないが上手くいっている。

オヤジに聞いたんだが婿になったばかりの村長が、いきなり岩場を持ち上げ出した時には驚いたらしい。

俺の家は術師の一家だが、あんな事できる奴なんていなかった。

元々、真ん中の3つの岩場は有ったがもっと低かった。

そいつと一緒に、その両側に間を開けて海の底から少しずつ引っ張り上げたと聞いている。

色々と考える事があったみたいで、爺さんも驚きはしたが反対しなかったそうだ。」

村長も子供の頃に家族を【銀の鳥】に殺されたそうだからな。

あっすまないな。辛い事思い出させて。」

「タルムさん。心遣いありがとうございます。

でも、村長とライラさんシューラのお陰で忘れて居た事を思い出せました。」

「オイオイ、オレ達、親戚になるんだぜ。

歳だってオレはシューラと同じ年だからそう変わらないよ。

タルムで良いさ」


「じゃあ、タルム。他の皆んなはどこ行ったの?」

「漁師だぜ。漁に決まっているさ。ほら、そこの遠見の魔道具に魔素を流してみな。真ん中のやつでいい」

言われるままに白い石板の魔道具を起動してみる。

すると、岩場の先に4隻の小船と一艘の大きな船が網を揚げていた。

小船が大きな船に網を寄せていき、大きな船が網をあげている。

「今日は大漁だな。浜は大忙しだ」

タルムが浮き出た映像を見てそう言った。

浜に視線を戻せば女や子供そして老人達が集まってきていた。

「私も、手伝いに・・・・・・・」

「お前はここに居ろ。

オレもお前もやる事が有るのさ。オレは見張り番そしてお前は・・・・・

ほら、ここにこの浜の周辺を書いた板があるからこれで陣の事を考えろって言われている」

人の丈で一人分の高さと二人分の横幅が有る巨大な板に、この村の周囲の様子が書き込まれていた。

まるで上空から見た様な正確な地図だ。

それからしばらく、タルムに聞きながらおおよその距離を板に書き込んでいく。

丘の方の岩山までの距離や生えている木々、雑草を描いていく。


「おう、帰って来たな」

タルムが窓の外を見て漁を終えた船が帰ってくるのを見つけていた。

船が岩場の間をくぐり抜けて浜に向かってくる。

浜の一箇所、造船所の横が深くなっているようで船が横着けされて、待ち受けていた老人達が網を籠に移していた。

この後、真水で洗って乾かすそうだ。

魚が木箱に詰められて下される。

(あのままじゃ傷んでしまう。)

そう思っていたらライラが左手に魔石を持って箱の上に右手をかざすと細かい氷が降り注いだ。

他にも同じ動作をする少女もいる。

「驚いたかい?ここの村長の家系には元々術師が生まれやすい。

元は聖地で修行をしていた術師が、浜の女と恋に落ちて漁師になった子孫だからと言われている。

そして、村長やイバみたいに術が使える男や女がこの浜の人間と結ばれる事が多いからか術士が多いのさ。

親父の妹や弟も術士だからか、その子供の俺たちも術が使える。

更にルイスさんが婿に入って指導してくれて、みんなが術師を名乗れる位になっている。

村長は教えるのが本当に上手い。

他にも村長は技術を伝えてくれている。

あの造船所だってそうだ。

あれも村長とオレの親父が組んで立てた。

今、女達が魚を運び込んでいる小屋も、夫を嵐や病気で亡くした家族を助けるための加工場さ。

あそこで働けば飯も自分と家族の分が賄えるし、小さい魚や加工に向かない魚やアラを好きなだけ持って帰ってもいいようになっている。

働きや事情に応じて干し肉や麦も分けている。

育ち盛りの子には、この家で飯を食わせている。


加工場には丘の村から来た家族も働いている。

丘の村々では作った塩を詰める麦わらで作った袋をサイスの村に納めていた。

あの日、海沿いの道をサイスに向かっていたその荷馬車が、銀の鳥に襲われて夫と娘が亡くなった。

その時、丘の村に残された奥さん達も今はそこで働いているよ。

丘の村では食っていけないからな。

連れて来ている娘の一人が身体が弱くてな、うちのお袋達が世話をしてやっている。

だから、お前が持ってくる白魔石があの子の命を繋いでいるんだ。

そういう助け合う仕組みを、決めたのは今の村長さ。

その弟子になるんだ。俺たちも期待してるぜ」


一仕事終わって皆で浜でメシを食う。

集まった村人の前に立たされて村長から名と、来月から今の荷運びに代わってこの村と聖地を行き来する。

浜にいる間は村長に付いて術を学び、来年にはシューラと所帯を持つ事が告げられた。

ワッグは許嫁になった女の家に泊まったから、二日酔いでまだここに来ていない。

食事が皆に配られる。


「イバ。美味いもんを食わせてやる。こいつだ!」

イバは先ほどから自分の鼻をくすぐる匂いに気が付いていた。

何だろう?

何か植物を湯掻いたもの?

麦とは違うし、豆なのか?

「米という。穀物だ。麦のようなもんだが麦とは違う。ほれ、食べてみろ」

少し黄色がかった白い粒の穀物を丸く押し固めてあった。

ひとつ受け取り匂いを嗅ぐと、さっきから漂っていたのはこの匂いだった。

遅れて来たワッグを見てみると許嫁を横に座らせて米に齧り付いている。

イバも恐る恐るかぶりついてみた。

美味い。

塩がまぶされているが穀物の甘みが口の中に広がる。

皆、仕事の後だ、網で痛んだ魚を焼いたりアラを入れた汁で米を食べていた。

なるほど、このおかずや汁には米が合う。

初めて食べたがイバは納得してしまった。


20230626

やっと、次章に移る文章まで準備できました。

これを機に行の調整や文脈の調整行います。

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