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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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116 ポアーザ

ミオラはアシ族の棲家だった洞窟へと、二体の竜に手を繋がれて入っていった。

中は思いの外広く、中に祭壇の様な物や家具まで有る。

魔素の泉から溢れ出る【魔素】の中に夕陽の様な色をした球が浮いている。

ダイアの祖母ウーラの【ポアーザ】だ。

ご機嫌なようで二体の竜もはしゃいでいる。

「大丈夫だって、術を周辺に張って外に光や音は出していないから心配しないでって」

そう、ウーラが念話で話して来たのを伝えてくれた。


外は島を出たのは夕暮れだったが、此方ではもう夜になっている。

これも大地が丸い証拠らしい。


【魔絹布】を纏い外を伺う。

子供達から聞いていた通り、遠くに炎を噴きあげている山が見える。


ウーラが言うには、あの山の直上に、今迄、直上に陣取っていた【悪き者の船】が行っている。

この機を逃してはと思い、ひ孫達を呼び寄せた。

二人が竜になったのは、伝承ではアシの一族はこの姿こそ本来の姿だったらしい。


ミオラは、竜の姿になった二人に触れてみる。

冷たい肌。

やはりか・・・・・。

ダイアも言っていたが、あの姿になってから体温が上がらない。

二人も、竜に変わると冬場は辛いらしい。

夜になると洞窟の中でも寒くなる。

【魔絹衣】を出してやり身体を暖めさせながら、浜の新村で黒鳥に殺された男の話をした。

体温を感知されて殺されたのだろう。

竜の体温は周辺の温度と変わらないから見つけにくいだろう。

でも、見えるのには変わらないから気をつけてと言い聞かせる。

夜がふけていく。

遠くに火を噴き上げる山が見える。

本当に火を噴いているんだ。

だが、その光のおかげで湖の上に少しだけ頭を見せた【白い塊】が見えた。


ミオラは位置を割り出し【陣】を作成して、その湖面の空間に【転移】した。

【浮遊】で接近して【エトナ】を収納にしまい込み、すぐさま【飛翔】で洞窟へ帰った。


後は撤収だ。


中に有る、祭壇や家具の様な物を全て回収した。

最後は【魔素の泉】だ。

やはり、魔道具が取り付けられている。

【コン・グラン】こう唱えて栓を閉じ、更に【レ・グラン】と唱えて泉の元となる栓を閉じた。

【コン・グラン】の魔道具を取り外し、開いた穴を塞いで置いた。

この手際を、ウーラが誉めてくれているそうだ。

夕陽の【ポアーザ】を抱いて島に戻る。

【赤魔墨】で描き上げた3重の【土の陣】を置いて置いたから、あの洞窟は土で埋まる。

【陣】は粉々に崩れて土に戻る。



衛星軌道上の警備艦では、アンドロイドが軌道を移動して活発化した火山活動を記録し続けていた。

数ヶ月後には軌道を外れてコロニー艦との合流の為に衛星軌道を外れるので有るが、湖から徐々に姿を見せようとしていた大きな岩の塊が消えてしまった事は記録されなかった。



曾祖母ウーラ、祖母ラームから昔話を聞いて楽しげな兄妹。

竜体がであれば【念話】による会話が楽なので飽きもせず聞き続けている。

彼らは人との間に誕生した事も有り、記憶の継承がされていない。

ウーラ、ラーム達も本当に人間との間に子を成せるとは思っていなかった様で、記憶・記録に無いこの二人の存在は彼女達の知識への欲求に相応しい物だった。

ダイアにもそれは理解できた。


ミオラには、秘密にしているがダイアも『男性』という存在を見た事がなかった。

だから、ノアと身体を重ねた時に不安を感じながらノアを受け入れた。

今までのアシの一族には無かった行為。

それが何を自分自身の身体にもたらすのか不安であった。

やがて、獣人の女の様に子を宿し【ペータ】を宿し出産した。

普通の人族の男児。

ペータが歩く様になり手を繋ぎ野山を一緒に散歩する様になった頃に再び身籠った。

そうして、産まれた【シータ】この子も人族だった。

二人共金の髪の少し赤みがかった黒い瞳。

四人で他の獣人の家族と同じ様に野の花を摘み、小川で魚を追いかけた。


奥底に刻まれた記憶と大人達の姿から、いずれはダイア自身も姿が変わる事を覚悟はしていた。

ある日、痛みに襲われて目が覚めた。


最初は足先からだった。

足先の自由が効かなくなる。

立てなくなり横になって過ごす様になる。

すると腰の辺りから足先に向かって皮膚が変化する。

子供の頃見た、大人達の姿になって行くと知った時には腕が動かなくなった。

腰から胸へ変化が続き身体中が大人達と同じ姿になった時には悲しかった。

自分はもう旅ができない。

子供達と野山を手を繋いで歩くことも出来ない。

食事も、そのほかの世話をノアか子供達、集落の者に手伝ってもらう事になる。


それに・・・・・

ダイアは感じている。

自分の身体の中に何かが出来たという事を、それがやがて自分を殺す存在だという事を。

本能が欲する。

『鉱物を食せ!・・・・・毒を取り込め!』

鍛治師達は、言い伝え通り原石を彼女の前に積み上げ部屋を出て行く。

残るのはノアのみ。

彼が持参していた魔道具に魔素をたっぷりと溜め込んで来た。

魔道具を、使いながら鉱石を砕いてダイアに与える。


ノアが、あのシャンタと言う者に頭を下げて、樹木から採って煮詰めた甘い汁を代価として差し出す。

怪訝そうな表情をした女。

無理もない。

今まで、北の集落に住む彼らは魔素、魔道具の類いを使わないと言い伝えられて来た。

それなのに目の前の人族の男は、獣人達が暮らす集落に住んでいる。

訝しみながらも、シャンタは考えを巡らす。

(遺跡の発掘に影響しなければ手を出さないで置こう。いずれ労働力として、あの集落は必要になるかも知れない。平穏に暮らしてもらおう。それにこの汁は美味い)

勝手に使って良いと言い残して、見張りを着けるだけにしておいた。

こうしてノアはダイアの世話を続けて来た。


【収納の箱】に収められている精錬された金属【ヘルファ】。

鍛治師達は言い伝え通りだと喜んだ。

そして、彼女と、その一家を守ると最深部に部屋を作り家具をノアと共に作り子供達を育てた。

彼女の為に、ソリと台車を作り息抜きと称して草原やお花畑を見せてやっていた。

でもやはり、冬は苦手になった様だ。

あの【黒鳥】が来た時も反撃しなかったのも彼女に害が及ばない様に、と子供の頃から刷り込まれた言い伝えを守っただけだ。


ノアは知っている。

これも彼が、伝え聞かされていた事だ。

子供達にも伝えてある。

泣いて泣いて大変だったが、ダイアの前では明るく振る舞っていた。


この子達には伝えてある。

ミオラが母を救ってくれていると、身体に広がる痛みを抑えてくれている。

自分自身に【サトリ】の術をかけ、眠る様な事をせずに済んでいる。

恩を返さなければいけないが今は学ぼう。

それが、今やるべき事だ。


【麦畑の遺跡】から臭いが取れて、鍛治師と土の術師が中に入って行く。

聖地に押し込められていた人達からも、術士の才能を秘めた者が見つかる。


ミオラは悩んでいた。


2,200人 幸い麦は豊富に備蓄されている。

だが、他の肉や魚は日常を賄う程度しかない。

北の住人達は、狩で生活を支えて来た。

街の住民は、春から秋の終わりにかけての海産物の収穫と僅かに獲れる兎や鹿、ボアでなんとかなる。

足りない。

準備が出来ていない、北の住民の食糧が準備出来ない。

麦を除いた食糧が冬を越せずに枯渇する。

悩み抜く面々。

地下の会議室では牧畜を検討したが良い案が浮かばない。

イバに頼るか・・・・・


近づく種まきの季節。

今年は、賭けで麦に変えて聖地の氷室や食糧庫で保存が効く野菜類を育てることにして畑をおこした。

芋の類やトウモロコシ、香辛料も隙間に植えて行く。

お茶の木は聖地の中にも、もう移植されている程だ。

幹を傷つければ甘い汁が流れ出る木々も移植している。

周辺の山々にも移植させてくている。

元々、この木【砂糖楓】(さとうかえで)は北の住人が移植して育ててきたので、こうして若木を移植したりして来たからその分を移植させている。

収穫出来る様な木の太さになるまでには、時間はかかるが楽しみにしてくれと笑って作業を進める。

ミオラが壊した麦の保管庫もノアの知識で修理をさせる。


そして、魔道具が避難所に残っていた。

土の術師が使えば土地が変形できる。

これを見た、ウーラとラームがとんでもない事を言い出した。



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