115 竜
子供達には、人の姿に戻って貰った。
話が長くなるだろうから、茶を貰って来ると二人が出て行く。
北の住民達は、お茶にうるさく様々なお茶を供してくれる。
ノアも席を外したので、二人っきりになってダイアと話す。
「ノアの推察力には驚かされるわね。今回の攻撃は【転送陣】を使ったと見抜き、立ち寄った聖地の話と浜の村から食糧の調達を浜の村でなんらかの方法で行ってしかも黒鳥に見つからない様にして運ぶ為に【転送】、【転移】を使っていると見抜いてしまった。恐れ入ったわ。知的好奇心の高さは怖くもある」
ダイアも
「予言も有ったし、大人達からの遺言でもあるので、いずれはそうなったでしょうけど、あの押しには負けるわ。色々な知識を渡したし、妻になってくれと言われた時は驚いたわ。そのおかげで、まさか竜種を産み出すとは思わなかったけど・・・・・。でもね、ノアが言う通りあの子達は人間よ。竜種ではあるが生殖機能は人で有り、【母球】(ポアーザ)が有る場所で周辺の魔素が強くないと、あの姿にはなれないわ」
こうして、ダイアが見せてくれたのが【ポアーザ】。
ミオラの手では少しはみ出てしまうくらいの緑色の美しい球で、中で水が動く様に見える。
「生きているみたいだね。」
「そうね。これは私の母が残した物。今向こうに残っているのは祖母の物。他の大人達の分は残っていないわ」
「焼かれたの? 」
「ううん。残していけなかったのよ。アシの一族に伝わる伝説で亡くなる時に残す事が有るとされているわ。でもこうしてここにあると言う事は事実よ」
「本当に亡くなる際に残すの?」
「そうね、私も残す筈よ」
「まだ、ずいぶん先の話でしょう?」
「・・・・・そうね」
「でも、なぜ人との間に出来た子供が竜になるんだろう?」
「それはね。この子達に話してもらうわ」
お茶を持ってきた二人をテーブルに掛けさせた。
ノアも茶菓子を持って帰ってきた。
ミオラはとっておきの【砂糖菓子】と、ライラが焼いてくれた果実の皮を細かく切り刻んで山羊の乳で練った麦の粉を焼き上げた菓子も出してやった。
(これも、こちらの材料で作ってみよう)
ノアが、北の集落で食べる木の幹を傷つけて集めた樹液から作った茶色の甘い汁を、かけた柔らかいパンを出してくれた。
ミオラは、これが大変気に入り、今度、作り方を学ぶ事にした。
小麦粉を練って寝かせる。
その時に一緒に練り込む酵母が違う様だ。
聖地でも、あちらこちらから集まった諸族の違いでパンが違う。
又、ひとつ聖地の楽しみが増えた。
(木の幹を削るのか・・・・・寒い地方でなら栽培できるみたいだから、苗をもらって帰ろう)
砂糖の甘さはやはり虜になる。
ひと通り茶菓子を口にして、お互いの物を褒め合う。
あちらこちらを旅して来たノアにも、ライラが作った茶菓子は気に入ってもらえた。
二人の話を要約する。
子供なので、話が飛ぶ飛ぶ!
妹のシータと兄ペータが、成長して接触しての念話が使える様になったのが冬が始まる前。
二人で母が置いて行った【ポアーザ】を前にして出来るようになった【念話】でお喋りしていた時に、『私達にお婆さまやお爺様が居なくって寂しいね。』と話していたら、念話で声が聞こえてきた。『やっと、話ができる様になって来たと思ったら嬉しい事言ってくれるね。お婆ちゃんだよ。』って頭に声が響いて来た。【ポアーザ】の中のお水が動いている。『お婆ちゃん?』って聞いたら『そうだよ』と返して来る。しばらく、緑色の【ポアーザ】と話していたら更に頭に響いて来た声がある。『私もいるよ』。『誰?』って聞いたらひいおばあちゃんだって、『どこにいるの?』って聞いたら『今からこっちに来ないか?』って言われた。お兄ちゃんの【ペータ】と相談して『会ってみたいって!』言ったら二人が【竜】に!
お婆ちゃんが『あらあら 【竜】になりましたよ』て言ったら、ひいお婆ちゃんが『なら大丈夫だね。門を潜っておいで』って言われて、目の前に現れた丸い扉を潜ったら真っ暗な中に夕陽の色の【ポアーザ】が浮いていた。『ひいおばあちゃんだよ。撫でておくれ』って言われたの。それから、時々ひいおばあちゃんとおばあちゃんの間を行ったり来たりして遊んいた。
ダイアが、その時の事を話し出した。
「あの日はノアに誘われて外に出てみたわ。ここと同じ様に石板を敷き詰めてくれていて肌に小石が当たらない様に掃き清めてあって、その私を思ってくれる心が嬉しかった。鉱石のお陰で具合も身体も軽くなって精錬した【ヘルファ】を渡しにノアと出掛けて帰って来たら、この子達【竜】になっていたんですもの。そしたら、二人が急に消えたわ。ビックリしていたら、すぐに現れて人に戻ってくれて。そしたら、この二人急に笑い出したの。ひいおばあちゃんの【ウーラ】に会ってきたって。
そしたら、今度はこの【ポアーザ】の中の流れが動いたわ。初めてよ。私を産む時に亡くなった母。これで解るかしら。この【ポアーザ】は生きているの。私の母【ラーム】の心がこの中にいる事を知ったの。
同じ様に【ウーラ】はあの洞窟に残っていた。ラームはノアの処に飛ばされた私のところへ行く時に魔素を使い切って、ウーラは自分自身を守る為と【エトナ】を湖に沈める為に使って眠りについた。
二人共、私とエトナを守ったの。
アシの血と、このアーバインを守ったの。
「ダイア。これどうしてなの?」
「解らないわ。私も渡された記憶にも残っていないわ。今まで人と結ばれたアシ族が居なかったから解らない。私もこの緑の【ポアーザ】は大切な物で、同じ様に大事にしていた夕陽の【ポアーザ】が、あの日から手元に無い事を残念に思っていた。それが、実の母と祖母だなんて思わなかった。知ったのはこの子達が竜になってからよ。
今の私も母なら繋がるわ。祖母も近くに来てくれたら今なら繋がるはず」
「おばあちゃんが、よろしくって言っているわ」
「ミオラ。良かったら触れてあげて。母が喜ぶわ」
「ミオラと言います。お世話になります。今度、フロールまで行かせていただきます。先にお聞きします。この移動は魔素を使うとの事ですが、魔素の泉が有るのでしょうか?それと、お母様達にご負担はかかっていないのでしょうか?」
緑の流れが、ゆっくりと周る。
「喜んでいるわ。自分達の事を心配してくれた事を。【泉の球】を見てくれたらわかるけど魔素の泉が洞窟の奥に有るわ。大丈夫よ魔素を使って二人をお互いに引っ張り有っているみたいなものよ。おばあちゃんもこっちに来れる様になるから喜んでいるわ」
「魔素の泉は止めさせて頂きます。栓の魔道具では無く泉の中の栓で止めて埋めて置きましょう。問題ありませんね?」
「そうしてくれると助かると言っているわ。魔素の泉を活かしたまま埋めてしまうのが心配だったみたいよ。ファルバンの術師が来てくれるなんて『幸運の女神』だよって言っているわ」




