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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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009 記憶

「お主と同じく家族を銀の鳥に焼き殺された者だよ」

ルイスはイバから目を離さずに告げた。

周囲にいる男たちは言葉を発しない。

「これは・・・・・」

「そうだ、ここにいる者達の中には、あの日サイスの村が銀の鳥に襲われるのを見た者もいるし、話を伝え聞いている」

頷く男たち。

誰もがイバよりも年長なのだろう。


「イバ、こちらへ来て、ここへ座れ」

座らされた椅子の前には磨き抜かれた白い四角い石板が置いてあった。

「その板の両端を手で持って魔素を流して見ろ。体の中の魔素が足りなければ赤魔石が有るが使うか?」

「いえ、大丈夫です」

魔素を流し込むと薄らと何かが映し出される。

「これは?」

「この沖に有る右端、南側にあたるがな。その岩の頂上に置かれた【遠見の陣】から見たサイスの村の跡だ」

その言葉に押されるように更に魔素を注ぎ込む。

浮き上がる光景。


あぁ、そうだ。

あの岩場に見覚えがある。

川の両側に広がっていた塩田。

満潮になると潮が川を遡る。

男たちが海に面した水門を開けて海水を流し込んでいた。

そして、天日で乾かす。

それを繰り返して塩田に轢かれた石畳に積もった塩を集めていた。

それを、清水で溶かして釜で炊いたのが上質の塩だった。

塩田から離れて小川が流れる高台に有った家には母が居て父と兄と姉がいた。


あの日、父は襲ってきた【銀の鳥】から母と子供達を逃す為に【障壁】の術を張っていたが、周囲を炎に囲まれて火柱を挙げて死んでいった。

兄が姉を庇う様にして【障壁】を張ったが直ぐに二人とも炎に呑まれた。

母は私の手に魔道具を持たせて最後に頬にキスをしてくれた。

そして母が何事か唱えると僕を中心にして陣が浮かび上がった。

陣が起動して僕は川の上流の草むらに座り込んでいた。

アレは【転送陣】だと思う。

イバはそれ以来、【転送陣】について調べていたが不明な事が多かった。


「思い出したかな?」

イバは自分が涙を流して居る事に気がついていなかった。

「はい。ですが父と母そして兄と姉で暮らしていたんですが顔を思い出せなくって、悔しいです。」

そこへシューラともう一人の女性が茶を入れたポットとカップそして菓子を持って上がってきた。

「妻のライラだ。」村長が紹介した。

「ライラです。イバさんでしたね。

・・・・・間違い無いわね。サキアさんとマウアの子よ。

面影があるわ。でも、ごめんなさい。

アナタの名前を聞いてなかったわ。

お兄さんとお姉さんの名前も思い出せないわ。

でも、幸せな家庭だったわ。

私の母がね、あの村の出身なの。だからこの子達を連れて顔を見せに行っていたわ。

その時の事を思い出してみるわ。シューラも見てみるわね? アナタお願い」

「お前さんが持っていた魔道具の柄の事をゲーリンからの手紙で知っていたが、女の記憶力は侮れないな。

イバよ、今からライラが見たお前の家族を見せてやる。

それに、ワシの記憶から二人の若い頃の姿も見ておくが良い。良いな?」

村長がイバの頭に右手を添えた。

その左手をライラの額に添えライラの右手はシューラの額に添えられた。


浮かび上がる一軒の庭先、背の高い30過ぎの男が剣を持って型を次々と決めて行く。

その横には10歳くらいの男の子が棒切れを持って真似をしていた。

『父さん・・・・・兄さん・・・・・』

こちらに気付き挨拶をかけてくる、人の名前が出るが聞き取れない。

男が家の中に声をかける。『マウア・・・・・ライラ・・・・・』

家の中から金色のウエーブがかかった髪を髪飾りで抑えた30前位の女性が5歳くらいの女の子の手を引いて黒髪の赤ん坊を抱いて出てきた。

『母さん・・・・・姉さん・・・・・』

会話は続いて居る様だが赤ん坊が泣き出して、そこで手を振りながら家を離れていく。


『私の記憶も出すわ。』シューラが記憶を送ってくる。

一つ上と言っていたが3歳の記憶が有るのか?

家に続く坂を登って行く。

遠くに広がる塩田の白い風景が目に痛い。

どうやら母親に後ろ向きに抱かれて居る様だった。

風景が止まる。

振り返ると男と。その横の棒を握った少年がこちらを見ていた。

『シューラ・・・・・イクス・・・・・』ライラの囁き声。

『イクス! 兄さんの名だ!』

同じ様に母に連れられた姉がシューラを見上げてニコニコと笑って見せた。

『・・・・・マーシャ・・・・・』シューラの声。

『・・・・・姉の名です。』


「たった一度見た光景を覚えて居るとは・・・・・それでは、私の記憶だ」


30代位の美しい気品がある女性と、もう一人の20代の女性そして20代前の若々しい母マウアと三人で唄う姿を映し出した。

『春を讃える唄ね。綺麗な声だわ。皆さん美しいわ』


場面が切り替わり、練兵場の様な場所で剣を撃ち合って居る。

サキアと・・・・・聖地の長!

『そうだ、ゲーリンだ。そして先ほどのもう一人の女性がゲーリンの妻ルナだ。』

又、風景が切り替わる。

サキアとマウアが泣いているのだ。

二人共、旅装をしていてマウアを先ほどの女性が宥めていた。

隣に立つ明らかに術師と思われる男性が立っていた。

『私の両親だ。一門が聖地に篭る事に決めたのに、子をなす為にマウアの生まれ故郷のサイスの村に旅立つ二人を破門にしたのだ。

外へ見送りに出れないのでこうして室内で最後の別れを交わしている。

今日はここまでにしよう。

シューラが子供達の名前を覚えていたのはお手柄だ』


『だってお母さんが、将来のお婿さんとお姉さんかもねって言ったから記憶に残ったんだわ』


「これでわかっただろう。

お前は我が父の弟子サキアと母の弟子マウアの息子だ。

名前がわからなかったが、あの日生まれ変わったと思うが良い。

私も家族を殺された時から名前を変えて居る。

本当の名前は妻も知らない。彼女は私を聖地の孤児として扱ってくれて居る。

それが嬉しい。

そこでだ、本題に入ろう。

ゲーリンに頼んでお前に浜に来てもらったのは、

遮蔽の魔道具を作ってもらう事も有るが、お主、この村への荷車の係になれ。

今の男は来月には村の娘の婿にして新村に行ってもらう。

そして、村にいる時にはワシの下で修行をしろ。

上達したら来年にはシューラの婿にする。

アイツは他の男では無理だからな」


シューラを見るとニコニコと笑って手を振ってきた。もう話は済んでいるらしい。

「解りました。是非、お願いします」

イバは頭を下げた。


その言葉を聴いてシューラがイバの横に座った。

「あらあら、まだ早いのじゃ無いの?」

「そんな事無いわ。イバはサトリに慣れないといけないってお父様が言ったもの。

それに、彼を聖地の女達が狙っているから私だけを見てもらうのよ」



20230626

やっと、次章に移る文章まで準備できました。

これを機に行の調整や文脈の調整行います。

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