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いつかは訪れる最後の時  作者: Saka ジ
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008 出会い

翌朝、少し頭が痛かったが、干し肉を刻んで汁に入れて温め直してパンと一緒に飲み込んで朝食にした。

浜に向かって進む。

鼻をくすぐる懐かしくも胸を張り裂きそうになる潮の匂い。

『お母さん・・・・・』

思わず呟くが、同時に押し寄せる恐怖感。

冷たい汗が背中を伝う。


「お前さんがゲーリンが言うところの優れた術師か?」

いきなり声をかけられてイバは驚いた。

そこには小柄な男が居た。

「あっ、初めてまして。聖地からやってきました。イバと言います」

「15歳という話だったが、よく鍛えているな。ゲーリンの手紙通りじゃな。

この浜の村長をしている。ルイスだ。よく来てくれた。」

「済みません。先ずは荷下ろしを先に済ませて置きたいのですが宜しいでしょうか?」

「あぁ、構わんよ。今回は干し肉や塩漬けの肉も多いからな。

後で、ワシの家に来れば良い。一緒に来たワッグが知っているから連れて来てもらえ」

「お気遣いありがとうございます。」

ルイスはもう一度イバを見つめると、頷きながら造船所の方へ歩いて行った。

「なぁ、凄い人だろう? なんだか全てを見通されている気になるんだ。

だから、俺も村長の前では嘘はつかないし、見栄も張らないことにしている」

「あぁ、それが良いだろう。 (俺がサトリだと気づかれたな)」


イバはこの歳になって初めて自分の上を行く術師に出会った。

荷を下ろし終えて魔石をルイスの家に持って行く。

「こんにちは。イバです。魔石をお持ちしました」

「あら、ご苦労様。その棚の箱と入れ替えてもらえますか?」

出迎えたのは金の髪をなびかせた、茶色の眼をした少女だった。

「綺麗だ!」

思わずイバは声に出してしまっていた。

「ふふ。ありがとう。アナタも良い男ね」

思いもしていなかった言葉を発した事も、それに対して褒められた事も驚きであった。

「サトリ?」

『そうよ。アナタもそうね。お父様以外では初めてだわ。男性のサトリは。

仲良くしましょう。私はシューラ。まだ未婚だから名前は変わるわ」

『そう言えば聞いた事がある。女性は結婚したら名を変えると』

『そうよ。だから考えておいてね。私の名前。アナタより一つ歳上よ』

彼女が送ってきた念話の意味が解らずに戸惑うイバ。

「おう。来たか。イバ。なんだ、もう、うちの娘と『念話』を交わしていたか。これは、話が早くて助かるな」

「あっ。魔石をお持ちしました。空の魔石は仕事の話が終わりましたら。岩屋に持っていきます」

「まぁ、焦るな。イバよ。シューラ。茶と菓子を出してやれ。ワッグの分も用意すると良い。もうすぐやって来る」

「ミューラが離してくれるかしらね。あっ、ミューラはワッグが婿入りする相手で私の従姉妹。お父様が今朝お話し済ませておいでよ」

「これこれ、シューラ。なんでも話してしまうで無い。イバにはサトリとの間での心の壁の作り方を学ばせなければならない。頼んで良いか?」

「お父様たら。もう、解っていらっしゃるでしょう。もちろんですわ。お父様も見込んだ人ですから」

「さて、イバよ。上に上がって依頼の件を話そうかの。茶菓子はシューラが兄や従兄弟の分と合わせて持ってくる」

「兄さんに従兄弟?」

イバは自分が置かれた状況を理解出来ずに戸惑っていた。


村長の家は海に面した少し小高い丘の上にある。

その為に2階に上がると目の前に浜が広がり、沖に屏風の様な岩が立ちはだかっていた。

イバがこの浜に着いた時に感じた違和感がこれだった。

浜の先に入江が広がり急に深くなっていて、その先に入江を囲む様にそそり立つ岩場。

何枚かが重なっているがその間に、船の出入りができる様な切間が有る。

左右から突き出した岬でこの浜は囲まれた形になっていた。

南の岬と浜辺、一番右の岩場の間には網を張ってあるのだろうか(うき)が綺麗に並んでいた。

そに網の上には緩い【遮蔽】がかけてある様だ。


「あの岩場はワシが海の底から引き上げた物じゃよ」

「やはり・・・・・・」

イバはこれで納得がいった。浜の具合と合わないのだ。

「気づいておったか。やはり、良い眼をしている。

それで、頼みはこの浜を山側の土地と繋がって見える様にしてもらいたい。上空からだ。【黒鳥の眼】からな」

「【黒鳥】からこの浜全体を岩場の様に隠すのですか?」

「そうじゃ。出来れば、そうだな『バカ蔦』が生えている様に見せて欲しい。あの岩場にも、『バカ蔦』を植えるつもりだ。もちろん、この浜の外側の岩場やここまでの道もそうしたい」

「それは、いったいどういう訳なんでしょうか?」

「気づいて居るだろう? 又、奴等がやって来る。黒鳥と銀の鳥だけでは無い。もっと、悍ましいものがやって来る」

「村長。アナタは?」

「お前と同じ様に家族を銀の鳥に焼き殺された者だよ」


村長の眼がイバの心の奥底を捉えて離さなかった。

20230626

やっと、次章に移る文章まで準備できました。

これを機に行の調整や文脈の調整行います。

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