特別なプロローグ
僕は特別になりたかった。
主人公、ヒーロー、英雄、勇者、正義の味方、
魔王、殺人鬼、ラスボス、悪の化身、
なんでもよかった。
ただ、特別に、普通ではない何かに憧れた。
最初は物語の主人公に憧れて、その在り方を真似てみた。
けれども、特別な事件や人生を変えるような素晴らしい出会いは訪れなかった。
何かの分野で天才になりたかった。
思いついたものは何でも試したが、人の目を引くような才能は終ぞ見つからなかった。
遂には、何でもいいからと悪の道に手を染めようかとも考えた。
でもそんな覚悟もできず、出来たところで、精々はた迷惑な犯罪者になるだけで、僕の求める特別な悪のカリスマや魔王なんかになったりすることは、絶対に出来なかっただろう。
そんな中途半端な、普通で、普通の、普通に、普通な、人生をゾンビのように送っていたから罰が当たったんだろうか?
信号無視して来たトラックにはねられて、あっけなく僕の一度目の人生は終わった。
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ーーーここは?
「ーーー・・・ーー・・・・」
頭上から巨大な鐘のような音が降ってくる。
頭をそちらの方に向けようとしても、何故か身体が上手く動かない。
僕はどうしてしまったんだ?確か・・・
そこまで考えたところで、自分にまだ意識があることに疑問を生じることを思い出す。
自分はトラックに轢かれて死んだはずだ。
身体がバラバラになり、身体のあっちゃいけない部分が吹っ飛んでいく感覚があったので、ほぼ間違いなく即死だったと思うのにどうして意識があるんだろう。もしやここは死後の世界?
だとしたら凄いことになったが、身動きが取れないのに、意識だけはっきりしていて、死んでいるのだから、死ぬこともできない。・・・これひょっとしてとんでもなくマズい状況では?
急激に不安に苛まれて、声を出そうとすると、なんと赤ん坊のような泣き声が出た。っていうか止まらない何だ?これ涙も出てきた。
身体も感情もまるで制御が利かず、プチパニックに陥っていると、
「ーーー・ーー・・ーー・・・・ーーー・・・・・・ーーー」
身体を動かされ、口に何か柔らかいものを入れられる。
何事!?ってか誰かいるのか?
口に入れられたものを本能的に吸うと何かの液体が口に流れ込んできた。
慌てて飲み込みながら、ある一つの仮説が思い付く。
これ、あれではないだろうか?
僕は心から特別に憧れていただけあって、少し興奮しながらも察しが付いてしまった。
その手の物語についてももちろん熟知している。
この状況は正に、異世界転生ってやつではないだろうか。
僕は初めての特別な体験に興奮を隠しきれず、内心大喜びしながら、母乳(?)を貪った。|




