4-13.旧友の喪失
最初の作戦会議から一週間が経過した。行動予定は煮つまり、ほとんど完成に近い。あとは各火薬庫に火をつけてもらう協力者と、集まった敵に向けて岩を落とす攻撃要員の選定を残すのみである。今宵も作戦会議の場へと進むタカミの足取りは少し重い。
——実行の時は近い、か
——本当に大丈夫か?
——やれるのか?
そんな疑問と不安が足枷となり、今回もまたタカミを留まらせようとする。
「よう、待たせたな」
「ああ……」
「?」
部屋の中に居るのは、ムスビ一人。いつもなら真っ先に来ているはずの彼、ミナカの姿が無い。それに、タカミを待っていた同胞の顔は妙に暗い。
「ムスビ、ミナカはどうした? まだ来てないのか?」
「……タカミ」
「なんだ?」
彼の名を呼ぶムスビの瞳は潤っていた。やがて大粒の雫となって滴る。それが繰り返し起き、滝のようになった。地べたに座ったまま、タカミの眼を見やる。
「おいおい、どうし——」
「死んだ。ミナカが……死んだ!」
「……は?」
突如告げられた訃報に、彼は唖然とした。
「な、何だって? ミナカが、あいつが、何だって?」
もしかすると聞き間違いかもしれない。あまりにも淡すぎる可能性に賭けて聞き返した。しかし無情にも、彼が聞き取ったのは真実である。
「ミナカが……死んだんだ」
「そんな……ど、どうして……?」
「腕をやっちまったらしい。それでうずくまっていたら……。後は言わなくても分かるだろう? ただそれだけなんだ。腕を痛めたくらい、しばらく安静にしてりゃなんてことないのに。しばらく動けねえからって、何も殺すこたぁねえだろうに‼」
タカミにとってミナカは、ずっと昔から支え合ってきた仲間だ。敵が侵略してくる前から、二人は良きパートナーとして仕事に励んでいた。お互いの力を認め合い、最も信頼できる存在であった。
——畜生
——畜生、畜生
——畜生っ!
そんな最高の友が殺された。それも、ただ腕を怪我しただけでだ。タカミの心は激しい怒りと喪失感に覆われた。だが、問題は感情の高ぶりではない。
——反乱計画がばれれば俺もムスビも殺される
——嫌だ、嫌だ嫌だ
——怖い
——なら、反乱なんてしなくていい
——毎日、岩を運び続けりゃいい
タカミが死の恐怖に敗北し、ミナカと共に立てて来た反乱計画を中止してしまう事である。
——ああ、またか
過去、数回に渡って計画を最終段階で棄却してきた彼。今回の出来事はタカミにとって特別大きな絶望であった。もう二度と反乱を企てまいと、そう思うほどに追い詰められていた。
「……すまない、ムスビ。計画は、しばらく保留だ」
「保留? どうしてだよ? やろうぜ、俺たちで! 奴らに一矢報いようって、そう決めたじゃねえか!」
「……すまん」
仲間の声に耳を貸すことなく、タカミはその場を後にした。重かった足取りは更に重く、地を踏みしめて固めていった。




