4─9.心の成長
「ボ、ボウスが?!」
「この日長石は、クライヤマの巫女から受け取ったものです」
「そうか……なんてこった」
突然の告白に困惑した彼は右手で後頭部を掻き、姿勢を正してユウキに真っ直ぐな目線を向けた。
「ボウズには悪いが、この際だからハッキリ言う。俺もハルも、トリシュヴェアの住民も、大半はクライヤマを疑ってる。バケモノは基本的に北から来る。その原因は、影が落ちてるクライヤマの仕業なんじゃないかってな」
まあそうだろうなと。悔しさは感じるものの、状況を客観視すればそうなるのは当然だとユウキは理解している。
「……半分正解で、半分は違います」
桜華に詰められなかったのが特別なだけだったのだと、彼は冷静に説明すべき内容を脳内で整理する。初めてツヴァイに問いただされた時に比べれば、かなり感情を抑制できるようになっていた。
「確かに、バケモノはクライヤマに落ちた影から生まれると考えるのが妥当です。ニューラグーンでは南から、ブライトヒルでは東から、ここトリシュヴェアでは北からバケモノが来る。位置関係からして、その推論は正しいかと」
「ああ」
「ですが、それはクライヤマの悪意によって起きていることではないんです」
「そう言われてもな……。クライヤマの人間が何処で何をしてるか分からん以上──」
「死にました。僕以外、全員」
「なんだって……?」
「全員、バケモノに殺されました。状況も、バケモノが何なのかも分からずに。……抗えもせずに」
突然バケモノの源流となったクライヤマ。もともと軍事機能が無かった故、抵抗する術など微塵ほども持っていなかった。
「今の話は私が保証します。個人としてではなく、ブライトヒル王国騎士団第一部隊長アインズの名を以て、です」
「そこまで言われちゃ、何も言えねぇが……」
「もう一度伝えます。僕らの目的は、鎖の破壊です。タヂカラさん、どうかお力添え願えないでしょうか」
う〜んと顎に手を当てて唸り、己の置かれた状況を整理する。クライヤマの少年が現れ、鎖を壊せると言い、協力を求められた。
「そうだなぁ」
トリシュヴェアの国民を恐れさせている要因は主に二つある。北にある集落と、南東に刺さる鎖だ。その内の一つを共に解消しようという提案がなされている。
「アレをぶっ壊そうってんなら協力する。だが、ウチには騎士団なんてねぇぞ」
「恩に着ます。我々が鎖に近付くのを援護して頂ければ、それで十分です」
「あいよ。ハル、お前も手伝ってくれ」
「うん、分かった」
「そういう訳だ。実行は明日でいいか?」
「はい、よろしくお願いします」
なんとかタヂカラの協力を得られた一行。宿泊用に部屋を用意され、明日に備えてそこで休むことに。
「では、今日のところは失礼します」
ユウキとアインズが頭を下げ、桜華とポリアもそれに倣う。
タヂカラを筆頭に立ち上がり──
「あっ──」
──危なっ!
ユウキに続いて立った桜華が倒れそうになった。それなりに長時間の正座で足が痺れたからだ。ユウキが咄嗟に手を出して両肩を支え、なんとか転倒せずに済んだ。
「ナイス援護、ユウキ殿」
親指を立て、左目を瞑る桜華。
「無理してお淑やかな座り方するからよ」
「は? 私、お淑やかの化身だけど?」
──あぐらは……お淑やかなのか?
「はっはっはっ! 慣れねぇ事はするもんじゃねえな!」
「タヂカラ殿……?」




