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【完結】天ノ恋慕(旧:太陽の少年は月を討つ)  作者: ねこかもめ
第三章:乖離
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3-28.蛇は助ける側に

「こっちだ、バケモノ!」


《グ?》


「くらえ! サン・フラメン!」


 予備の短剣を抜き炎を纏わせ、

それを敵に向けて投げ付ける。


炎だけの攻撃はダメージに繋がる前に消されてしまう。

カマイタチのように内部に太陽の力を流し込む事も出来ない。


ならば、力を纏った剣を刺してやれば良いのではないかと。


《これが日の巫女の! な、なんと気味の悪い……っ!》


「ユウキ君、もう一発!」


アインズの短剣が床を滑って彼の元へ。


「サン・フラメン!!」


《や、やめろ! それを余に近付けるな!》


二発目はヒットせず弾かれてしまった。

しかし、一発目のそれが大きな効果をもたらしたようであった。


──あれ、動ける!


 運動失調が緩和された。


全快ではないにしろ、アマビエに太陽の力が

流れ込んだことで効果が薄れたのだ。


「ナイスだよ、ユウキ殿!」


「行くわよ、ブリッツ・ピアス!!」


アインズの突きが敵を襲う。

胴体に深々と刺さり、それなりのダメージになった様子。


バケモノの体から剣を抜き、すぐさま右へ回避。

少し下がって彼女めがけた突進を繰り出す。


「させないよ」


が、その間に桜華が割って入り──


「そこ!」


無数の斬撃を浴びせ、アマビエは

小さな肉片の集まりへと姿を変えた。


「サン・プロミネンス!」


それらをユウキが焼き尽くす。


《グギャアアアアアアア!》


バケモノは灰になり、気流に乗って散っていく。


「ふぅ、終わ──」


しかし安堵は出来ない。


守護者を倒すと、そのフロアが崩落する。

前回同様、登ってきた階段の方から徐々に崩れているのが見てわかる。


「わわっ! どうすんのこれ?!」


「逃げるわよ。ユウキ君、桜華、掴まりなさい!」


「うん!」


「はい!」


急いで踊り場を抜け、アインズの力によってなんとか次の階段へ。


「ふう、間に合ったわね」



 一息つくと、景色はウルスリーヴル国近郊。

鎖の目の前に座っていた。


「おお、戻られましたか桜華様!」


 防人の女性が一人駆け寄ってきた。空はまだ明るい。

神殿のある場所と比べ、現世ではあまり時間が経っていない。


「うん。私が付いてたからね、余裕余裕」


「流石でございます」


──見栄っ張りが凄い!


──おっと、ふざけてる場合じゃないか


 まだ守護者を討伐しただけ。

主目的である月長石、ないし鎖の破壊を行わねばなるまい。


「サン・フラメン!」


 剣に炎を纏わせ、鎖の根本付近にある月長石を攻撃。

輝きを失ったそれへ刃を押し込むと、次第にひび割れ……砕けた。


「わあ、すっごい……。本当に……」


 核を失った鎖が砂に変わって崩れゆく。

三人も防人も、暫くその様子を見上げていた。




 ──ウルスリーヴル国城、指導者の間


 戦いの成果報告をしに、三人が天舞音の前へ。


「……という訳で、ユウキ殿、アインズ殿のご協力により鎖の破壊に成功致しました」


「そうか、そうか。本当にご苦労じゃったな。これでバケモノ問題も少しは落ち着き、防人も休むことが出来よう。お二人にも感謝申し上げます」


「いえ。私共も防人の皆様へは頭が上がりません」


「ありがとうこざいます。本当に助かりました」


「なんの。では、こんなところかのう? 皆、ゆっくり休むと良い」


報告会は終った。


しかし、別れの挨拶が口にされることは無く、

桜華が話題をもう一つ提供する。


「あの、ユウキ殿」


「はい?」


「ユウキ殿の旅の目的……私にしてくれたあの話を、天舞音様にも話して貰うことは出来る?」


「え? はい、構いませんが……」


「ありがとう。じゃあ、お願いします」



 ──クライヤマ。日の巫女。自分。

そして、何が起きて今に至り、巫女がどう認識されているのか。


それらを全て、天舞音に話した。


「なるほどのう……」


思ったよりも悲惨な事実を明かされ、

彼女はどう反応すべきかを探していた。


そこへ、桜華が更に言葉を繋げる。


「ユウキ殿もアインズ殿も聞いてね。私はユウキ殿からこの話を聞いて、最初は『まずい』と思ったんです。彼は復讐を目的としてるんじゃないかって」


「ほう」


「このままじゃ、蛇が生まれてしまう。ご覧の通り、ユウキ殿は他人に優しい性格をしています。そんな彼が、誰かさんのように復讐の為に生きる蛇になってしまうんじゃないかって」


「それで」


「でも、違いました。彼は巫女の仇討ちなんて考えてないんです。亡くなった巫女が悪く言われない様にと、もっと……純粋な心持ちなんです」


 天舞音は相槌を打つだけで何も言わず、桜華の言葉に耳を傾けた。

話す彼女自身の脳裏は半分がユウキ、もう半分は過去の己の事で一杯になっていた。


盗賊に家族を殺され、その仇討ちだけのために生きた己との対比をしていたのである。


「だから私は……」


「桜華さん……」


「……助ける側になりたい」


 いつの間にやら敬語が消失していたが

天舞音は何も咎める事はせず、また桜華の言葉を待つ。


「ユウキ殿の旅を、手伝いたい!」


主人に対して願望を顕にした桜華は視線を落とした。


「桜華や、こちらを見よ」


「……?」


「……ふふっ、ふはははは」


 桜華の目を見て数秒後、天舞音は嬉しそうに笑い始めた。


「天舞音様……?」


「いやぁ、すまぬ。そんなに真っ直ぐなお主の目を見たのは久し振りじゃったからな。そうか、やりたい事を見つけたか。妾もようやく一安心じゃ」


「じゃあ──」


「ああ。桜華が行きたいと言うなら、妾は構わぬぞ。あとは、お二人に聞いてみるんじゃな」


天舞音の目線は桜華からユウキへ。

それを察知し、彼は桜華に言った。


「はい。これからよろしくお願いします、桜華さん」


「うん、ありがとうユウキ殿」


「私も良いと思うわ。これから先、きっとバケモノとの戦いは厳しくなるだろうから。よろしくね」


「よろしく、アインズ殿!」


 ポリアに続いて二人目の参加が決まった。

桜華ほどの剣士であれば、彼らの戦力はかなり上昇する。


残りの鎖や、最後に待ち受けるであろうクライヤマでの

戦いを考えれば、非常に強力な助っ人である。


「ご了承下さりありがとうこざいます。不束な部下ではございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます」


「え、私、不束じゃないですよ」


「客と罪人を間違えるのは不束でしょ」


「うわ、しつこ! あんたホントしつこ!」


──あはは……


──大丈夫かこれ?




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