3-27.神速の一閃
──来た!
まだ片膝をついた状態のユウキへ、敵の爪が迫る。
「くそ!」
受け止めざるを得ず、不利な体勢で防御。
左右どちらかに振られれば、すぐさま倒される状況となった。
──まずい
──フラメンで逃げられるけど
切断すると増える性質が彼をより苦しめる。
しかも敵は二体いる。
片方は桜華が対応しているものの、
彼女も時折足がもつれている。
──足さえちゃんと動けば
──これ、運動失調ってやつか?
彼もアインズも、何もドジで転んだのではない。
足の運動機能が落ちているのだ。
ユウキが防御体勢からなかなか抜け出せないのも、その一環であった。
「ユウキ君、私がそいつの腕をぶった斬るわ!」
「でもそれじゃ、敵が増えちゃいますよ」
「これは賭けだけど、吹っ飛んだ腕が再生する前に君のプロミネンスで燃やし尽くせないかしら?」
その間もアマビエはユウキへの攻撃を緩めない。
ただ受け止める事しか出来ず苦しくなってきた彼は、
アインズの賭けに乗ってみようと決めた。
「分かりました、やってみます!」
「了解よ。はあああっ!」
彼女はすぐに右から迫り、
転びながらもアマビエの腕を斬り上げで切断した。
敵は怯んでさがる。
斬られた腕は宙を舞い地面へ向かう。
「サン・プロミネンス!!」
少年が叫ぶと剣から炎が飛び出し、腕へと向かう。
《……ギャ?!》
「やった!」
アインズの目論見通り、腕はそのまま焼失。
が、患部から瞬時に再生してしまう。
ならばと、彼は本体へも炎を飛ばしてみる事に。
「サン・プロミネンス!」
《不愉快だ》
──不愉快なのはその不協和音だよ
炎を帯びたアマビエ。
上手くいけばカマイタチのように致命傷となるが……。
《ブキャアアアアッ!》
敵は体を翻してそれを鎮火。
サン・プロミネンスが致命傷になったのは、
体を風に変えたり戻したり出来ると言う
カマイタチの性質ゆえである。
「くそ、ダメか……?」
フラメンで斬れば増殖し、プロミネンスは効かず。
加えて運動失調の効果はは加速的に増しており、
三人の足はその時の姿勢を維持するのが限界であった。
が、桜華は勝機を見出していた様子で──
「ダメじゃないよユウキ殿!」
「え?」
「つまり、暴れて鎮火できないくらい細切れになればいいんでしょ?!」
腕だけの小パーツなら焼却出来た。
桜華の言葉通り、アマビエの体が全て
小パーツに別れれば、消し去ることが出来る訳だ。
「でも、再生される前にそんな」
このバケモノ再生能力を有するし、増える。
すなわち、一箇所ずつ斬っていられる程の猶予はない。
同時に無数の斬撃を繰り出さない限りは──。
「ふっふっふ〜、私に任せなよ。こいつの攻撃はもう」
そう言いながら彼女は刀を鞘に収める。
しかし視線だけは二体目のアマビエをしっかりと捉えている。
「──見切った」
「お、桜華さん!」
「何か策があるみたいね。ユウキ君、あなたは桜華の言う通り燃やすことに専念するのよ!」
「りょ、了解!」
爪を振り上げる。
引っ掻くと言うよりも突き刺す様な
角度に指をセットし、振り下ろす。
鋭利な刃物が桜華へ向かって落ちていく。
──桜華さん……いったい何を?
心配するユウキをよそに、桜華は冷静に敵の行動を見る。
その時ユウキとアインズが見たのは、
濃い桃色のオーラに包まれた彼女の姿であった。
「そこ!」
アインズの突きの様な亜光速とまではいかないものの、
鞘から刀を抜く動作のまま神速の一閃を見舞う。
《グギギャァ?!》
右から左から。上からも下からも。斜め垂直水平。
表現するに足らぬ程あらゆる方向からの斬撃がアマビエを襲う。
その鋭さは覚醒時とは比にならず、
一つ一つがバケモノの体を細切れにしてゆく。
「ユウキ殿!」
「はい! サン・プロミネンス!!」
《ググッ?!》
──やった!
分身が殺られて呻くアマビエ。
しかし困っているのは敵だけではない。
ユウキを襲っている方のバケモノは、桜華からは遠い。
運動機能の低下は更に進行している。
──どうする?
──このペースじゃ、あと一分くらいが限界だぞ
対して、相手は水面を滑走するかのように自在に動き回る。
だが桜華には近付かない。
己の死を招くであろうことを学んだのだ。
──待てよ?
──斬れない事が分かったから、アインズさんは突き刺そうとしたんだよね?
初心に帰ってみればそうであった。
サン・フラメンによって二等分された
アマビエが増殖し、斬撃はダメだと判断された。
だから刺そうとした所で
運動失調が明らかになり今に至る。
──やってみる価値はあるか




