3-26.鎖の守護者・アマビエ
──真っ白な神殿
少年が目を覚ますと、そこはやはり神殿であった。
御伽噺などではなく現実そのものである。
階段に座った状態で目覚めたユウキは、
尻が痛いことに気付いて立ち上がる。
「そうだ、二人は……?」
次のフロアへと続く方向を見ると、手前に桜華、
その少し奥にアインズがの姿が彼の目に映った。
彼女らはまだ眠っている。
「桜華さん、起きてください桜華さん」
「ん〜何よ小町うっさいわね……」
──口悪っ!
「僕です、ユウキですよ……。起きてください」
「……ああ、ユウキ殿おはよう」
「おはようございます」
右手で目を擦りながら立ち上がり、大胆な欠伸を一つ。
ん〜と唸って背中をのばし、周辺を観察した桜華はようやく異変に気が付いた。
「ここは?」
「例の神殿ですよ。この先に鎖の守護者ってのが居て、そいつを倒せば鎖を壊せます」
「へぇ、まさか本当にあるなんて……」
ユウキの冗談ではなかったのだと……。
アインズも起こし、三人で階段を上がって行く。
ジュアンとの戦闘に続く負担がユウキを襲う。
一方、ひっきりなしに辺りを観察する桜華。
神殿のデザインは、どちらかと言えばブライトヒルの雰囲気に近い。
ウルスリーヴルの建築とは大きく異なるそれに興味があるためだ。
「着いたわよ」
「わ、結構広いんだね」
登った先には踊り場がある。
桜華の感想通り、三人とバケモノが暴れるには十分なスペースだ。
「台座は……やっぱりありますね」
「あれって、さっきの石──月長石ってやつ?」
「気を付けてください。ここからが本題ですよ」
台座に近付くと、にわかに眩しさを感じるようになった。
何事かと見回している内、それは次第に強烈になっていき──
「……おでましですね」
解消されたかと思ったのも束の間、
台座のあった位置に三人とも見た事のないバケモノが座する。
半人半魚の見た目をしており、地にも届く勢いの
長髪と不気味に蠢く三本の尾ビレがある。
上半身は人のそれであるが、
腕の先にはナイフのような鋭い爪が見られる。
「あんたが鎖の守護者ね?」
「あはは、アインズ殿、バケモノに話──」
《いかにも。余は鎖の守護者アマビエ》
「えぇ……」
《鎖の破壊を目論み、巫女様に仇なす者を排除する》
各々が武器を構える。
敵は尾ビレを器用に使い、地面を滑るように移動する。
──カマイタチみたいに何かしてきたら厄介だな
前回の守護者戦では、アインズに視野狭窄の症状が見られた。
同じような事をされたら面倒なことになる故、
ユウキはそうなる前に決着をつけようと動く。
──先制攻撃!
「サン・フラメン!」
太陽の炎を帯びた少年の剣は、
いとも簡単にアマビエの胴を捉えた。
《……》
これと言った抵抗は無く、敵は二つになって離れた。
上半身が右に落ち、下半身が左に倒れた。
斬った本人でさえ驚く呆気なさで唖然とする。
剣を納めようとし彼だが、しかし、そう簡単には終わらないようである。
「ユウキ殿下がって!」
「……っ!」
落ちたはずの上半身が一人でに動き、爪を振り回す。
ギリギリで刻まれずに済んだ少年は思わず二人の元まで退避。
「普通なら勝ってたけど、こいつはそういう訳にはいかないようね」
「それにほら、増えたよ」
「……まじですか」
上半身からは下半身が、下半身からは上半身が
各々再生し、バケモノは二体になった。
攻撃手段の殆どが斬撃である
このメンバーにとって、この上ないほど鬱陶しい性質だ。
《ピャアアアアアアアア!》
「うっ──!」
二匹のアマビエが咆哮を一つ。
──まずい!
カマイタチの咆哮を聴いた直後から、
アインズに視野狭窄が見られた。
すなわち、今の声にも何かしらの効果があると見込まれる。
「斬るのがダメなら、ひたすら刺してやるわ」
そう言い、アインズは敵に切先を向け──
「ブリッツ・ピアス!」
黄金のオーラと共に進み、亜光速の突き攻撃を仕掛ける。
しかし、嫌な予感と言うのは得てしてよく当たるものである。
「きゃっ?!」
「アインズさん!」
足がもつれたか、磨かれた床で滑ったか。
攻撃が当たる前に彼女は地に倒れた。
「あれ……? なんで私──」
「ユウキ殿、アインズ殿ってドジなの?」
「え、えっと……」
ブライトヒルの騎士、ツヴァイの言葉がユウキの
脳内に蘇ったが、いやそれどころではないと冷静になる。
「大丈夫ですか?」
アマビエの追撃が来る前に、
アインズの元へと駆け寄る。
しかしそんな彼も──
「うわ?!」
次の瞬間には視界が反転していた。
「二人して何してんのよ……」
などと言いつつ、敵による状態異常である事を
察した桜華は動かずに敵を見る。




