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【完結】天ノ恋慕(旧:太陽の少年は月を討つ)  作者: ねこかもめ
第三章:乖離
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3-24.月と太陽の衝突

 ユウキも剣を抜き、臨戦態勢に。

左右に居るアインズと桜華もまた、武器を取った。

が、少年は二人の仲間を制止する。


「アインズさん、桜華さん。手出しは無用です。ここは、僕にやらせてください」


「ユウキ殿……?」


「わかったわ。離れるわよ、桜華」


「え、でもユウキ殿は——」


「いいから、早く。大丈夫、ユウキ君は負けないわ」


「……うん」


 ユウキは騎士でも何でもない素人。


そう聞いていた桜華は、彼がジュアンに

負けないか大いに心配していた。


それと同時に、なぜアインズが

ここまでユウキを信じているのか、

という疑問が喉につかえている。


疑心暗鬼の桜華を見て、アインズは続けた。


「あなたも見てなさい。ユウキ君の心の温かさを」


「心の……?」


二人が少し下がったのを確認し、

まっすぐジュアンの眼を見て剣を構える。


「一人でいいのか? 死んじまうぞ?」


「僕は……負けないよ。仕返しなんて、そんな虚しいことに囚われてるお前には」


「くっ……てめえ‼」


ユウキの言葉に腹を立て、

ジュアンは輝く剣を振り上げ、走った。


「サン・フラメン‼」


ユウキが叫ぶと、彼の剣も輝きを帯びる。


太陽のように強く明るく、煌々と周辺を刺激した光は、

桜華の身体の芯まで届いて彼女を温める。


「ア、アインズ殿……? これって……?」


「ユウキ君の日長石は、クライヤマの巫女様から引き継いだ物なの。あの子が戦うと決心した時、石が呼応して、この温かさが目覚めたのよ。どう? これでも、ユウキ君の目的は復讐だと思う?」


「……ううん」


 ふと桜華は自身の過去を思い返す。

復讐に駆られ、何年もかけて牙を磨いた。


その結果生まれたのは、憎い相手なら

殺すことも厭わない凶暴な蛇であった。


ユウキの話を聞いて、勝手に彼も

蛇になってしまうと考えた。


しかしどうやら、それは大きな勘違いであるようだ。


「ユウキ殿はもっと——私なんかより、純粋なんだ」


 家族が殺され、その犯人を憎んだ桜華。


対してユウキは、死んだ想い人が

悪く言われないようにと行動していた。


それは報復などという悲しき行為ではないのだと、

彼女はユウキに感心するばかりであった。


「うおおおお!」


 剣と剣が。太陽と月がぶつかり合う。

火花を散らしながら、ユウキとジュアンは

お互いに斬撃を繰り出し合い、また、防ぎ合う。


「はあ、はあ、しぶといな、日の巫女の力‼」


「そ……そっちこそ!」


「そろそろ、トドメだ‼」


「うわっ⁈」


 ジュアンの跳び斬りを、間一髪で防いだユウキ。


押される側となった太陽の少年は必死に防ぐも、

どんどんと押し込まれていく。


やはり、根本的な力の差が見え始める。


——く、くそぉ


——力比べで勝てないなら‼


「こっちだ‼」


 右方向へと逃げ、ジュアンを

引きつけながら後ろへ数歩下がる。


——よし、来た!


月の少年はユウキを追い、

勢いをつけた突き攻撃に出た。


しっかりと彼の行動を確認し、ユウキは攻撃を放つ。


カマイタチ戦で目覚めた、二つ目の攻撃手段である。


「サン・プロミネンス‼」


剣に太陽の力をまとわせたまま

空を斬ると、光が独立して前へ飛んでいく。


予想だにしなかった攻撃を、

彼は回避できなかった。


「なにっ⁈ ぐああああああ‼」


太陽の力に全身を包まれ、もがき苦しむジュアン。


——やるしか、無い‼


少し心が痛んだが、ここで追撃を

せねばと鬼になり、ジュアンに向かっていく。


「くらえ、サン・フラメン‼」


 あわよくば首にかかった月長石を破壊してやろうと、

ちょうど胸の高さに横斬りを見舞う。


炎を帯びた刃が彼に——月長石に迫る。


「さ、させるかあああ‼」


——えっ⁈


 この宝玉は壊させまいと、

彼は石の前に左腕を出した。


無論、刃に捉えられたその腕は落ちる。


「ぐあああああ! いってえ! くそ、くそ!」


「お前……なんでわざと腕を⁈」


「この月長石は、セレーネ様がボクにくれた大事な宝だ‼ 信頼の証だ! 愛の証だ! それを、太陽なんて穢れた力で触らせるわけねえだろ⁈」


——も、物凄い気迫だ


——ツヴァイさんから日長石を取り返そうとしてた僕も


——こんな風に必死だったのかもしれない


「くそ、くそくそ‼」


血の滴る左腕を気にしながら

ジュアンは剣をしまい、右手で指笛を吹いた。


「くそ、邪神め! 今回は不意を突かれたが——次は絶対に仕留めるからな‼」


「あ、ま、待て‼」


 指笛に呼応した月長石が徐々に光を強め、

やがて月の騎士を覆い隠した。


あまりの眩しさに、目前で

対峙していたユウキは目を瞑ってしまった。


「い、居ない……?」


 次に目を開けた時には、ジュアンの姿は無かった。

なんとか撃退できたようである。

 

 安心しきったユウキは、剣を納めてその場で座り込んだ。


「お疲れさま、ユウキ君」


そこへ、旅の相方である

アインズがやって来て、手を差し伸べた。


大きな戦闘を一つ終えたばかりだが、

主目的は鎖の破壊、ないし、守護者の討伐だ。


「ごめんね、ユウキ殿。温かさを感じて分かったよ。君が目指してるのは、醜い復讐なんかじゃない、ってね」


桜華も彼のもとへ駆けつけ、

己の考えが変化したことをユウキに告げる。


「桜華さん……」


こうしてまた、リオとユウキが織り成す力が、

他人の考えを変えるに至ったのである。


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